第6話怒られない人間をみーつけたぁ

ここは異世界。


エルフが基本的に頂点の世界。


わりとエルフがなにもかも出る杭を打つので平和だ。


その中でも一際変人の立ち位置かもしれないリリシヤは、今現在。


「でね。そこの子達がひらひらしていた服を着ていたから、なんだか綺麗でつい触りに行ったの」


エルフの一人から一方的に話しかけられて、強制的に人間可愛いエピソードを聴かせられている最中。


逃げても特に、差異はないと知っているので、いつも本を片手に右から左に聞き流すのを、常にしている。


知りたかったら、会話をログで見れば済むので真剣に聞く気はない。


「とっても怒られたんだけど、初めて爪でシャーッてされたのよ。これって、レアよね?私最高にラッキーなエルフじゃない?」


「シャーッて?」


そんな人間、いつの間に地球にいたんだろうか?


首を傾げて流石に内容に不穏を感じて、恐る恐る聞く。


「羨ましいから、やっと聞いてくれたのね。もうっ」


ふっくら頬を膨らませるのはいいから、さっさと話せ。


「長いものをぶつけてきたり、投げるものをぶつけてきたり。こんな経験は私だけよきっと。もーーう可愛かったんだからぁ」


語尾にハートを乱舞させて嬉しそうに話すエルフは、このエルフに限らずリリシヤ以外のエルフに、属性付与みたいに存在している感性。


わけがわからないし、知りたくもないけど、どうやらエルフ的に人間は尊くて、可愛くて。尊いから可愛いらしい。


意味が重複していても、分かっていても言いたくなるくらいデロンデロンに溺愛しているのだ。


恐らく、殺意マックスで来られても悶えて軽く小指でぴーんと弾いて、触れた部分に、大喜びしてしまう奴らなのである。


同じエルフと思われたくないと常々思う。


距離を取っていれば普通だから、こちらはいつもみたいに対応している。


人間に悶えないのは、リリシヤが地球生まれの元人間で現在、彼らと同じエルフだから。


(長い?飛ぶ?)


なんのことか。


警察官や刑事たちの武器だろうか。


「どうやらその地域のボスちゃんたちだったらしくてえ……おめえ、てめぇ、〇〇さらせやぁとか言われて!きゃっ!特別な呼び方されちゃったって感じ!?ねぇ、どう思う?」


「……警察官はそういう呼び方も、言い方もしないような」


無断で建物に入ったらしいので、怒られているのはなんとなく分かる。


「持ってたの、どんなのだった」


説明を聞くと、バールらしきものを示したり、長細いものと解説されて、もしやと頭が痛くなった。


「警察とは正反対の組織じゃん。アウトロー界隈に、ナチュラルに首どころか本体突撃させてるじゃん」


京都でまったり、政治家などの茶会の会場とか候補があったけど、全然関係なかった!


そんな経緯があってもけろっとここにいるエルフ。


一旦全ての攻撃を無効化して、エルフ達を呼び寄せて全員で人間達を撫でまわし、説明を詰めたりしたらしい。


猫の集会を見つけた人間が、そこへ忍び寄る光景が思い起こされる。


どうやら、やばいところへ集まる人たちだったらしい。


倉庫っぽいらしいので、多分かなり人数がいたのだろう。


「無知って最強……」


しかも、今までと違って撫でまわしたあとに、誰からも怒られることがなかったと言っていたので、さらに違う勘違いを引き起こしていた。


「あそこはぜっったいに!人間を集めた人間シェルターよ!あんなにいるのに制服をきた人間に全くなにも言われなかったし、怒った顔もされなかったの。そういうことよね?」


棒で襲ってきたということは、多分不良と呼ばれる個体の、溜まり場かなにかだったのだろう。


否定も肯定もできない。


なぜなら、人間がたくさんいるのに触りたい放題の理由を、説明するのが面倒だから。


耳にあるピアスについても聞きたかったのだと、嬉しそうに語るエルフ。


最終的に、人間達はあまりの美形の溺愛の仕方に震え上がっていたとさ。


映像ログを見たら、確かに使われていない倉庫に結構いた。


男の子、および青年らは一日中居座ったり、何度も会いにくるエルフ達に震えていた。


それに対して、遠慮なく頭を撫でたり持参した毛布をかけたり、ジュースを飲ませようとしたりしていた。


過去のログを現在に寄せていくと、少し様子が変化していく。


人数は減ったものの、そこにいる彼らはエルフが用意した暖かななにかに当たりながら、頷いたりしていた。


離れたもの達は、ガチめなもの達ということだったのだろう。


しかし、彼らの末路はわかっている。


警察に怒られない人間をエルフ達は人っ子一人逃すわけがないのだ。


程度が違おうが、なにをしていようが、魔の手とも言えるくらい過剰な愛を、その身にストレートアタックされる未来しか、用意されてない。


画面を別のところに動かすと、家から飛び出すように背中から倒れ込む人間がいたので、無言で引っ張る。


「うわあああ」


「しゃああああ!!にんげええええん!」


共にいたエルフが、荒ぶった様子でその子を連れていく。


なにも言わずに見送る。


「もうすぐ雪が降るみたい」


リリシヤは天気予報を知るために、杖を静かに振った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る