第16話 食品ロス

 二条河原落書の一件以来、尊氏は民の声をより深く聞き、政治に反映させることを心がけていた。そんな中、尊氏は新たな問題に直面する。それは、都で深刻化していた食品ロスだった。

 戦乱の影響で、都には食糧不足に苦しむ人々が多くいた。一方で、富裕層は贅沢な食事を楽しみ、食べきれないほどの食糧を廃棄していた。

尊氏は、この現状を憂い、食品ロスを減らすための対策を講じることにした。

「民が飢えに苦しむ一方で、食糧が大量に廃棄されている。これは、あってはならぬことだ」

 尊氏は、まず、富裕層に対して、食糧の無駄遣いを戒める法令を出した。また、余った食糧を貧しい人々に分け与えるための仕組みを作った。

 さらに、尊氏は、民に対して、食糧を大切にする意識を高めるための啓蒙活動を行った。彼は、自ら民の中に混じり、食糧の大切さを説いた。

「一粒の米にも、多くの人の労力が込められている。無駄にせず、感謝して食べよう」

 尊氏の行動は、民の心を動かした。富裕層は、食糧の無駄遣いをやめ、余った食糧を貧しい人々に分け与えるようになった。また、民も、食糧を大切にするようになり、食品ロスは大幅に減少した。

 ある日、尊氏は、黒田義信と共に、都の市場を視察していた。市場には、新鮮な野菜や魚が並び、活気に満ちていた。しかし、その一方で、売れ残った食糧が大量に廃棄されている光景も目に付いた。

「黒田、見てくれ。これだけの食糧が、無駄になっている。何とかしなければ…」

 尊氏は、そう呟き、市場の店主たちに声をかけた。

「店主たちよ、売れ残った食糧を、廃棄するのではなく、有効活用する方法はないだろうか?」

 尊氏の問いかけに、店主たちは、様々なアイデアを出した。その中には、売れ残った野菜を煮込んでスープにする、魚を干物にするなど、保存食を作るというアイデアもあった。

 尊氏は、店主たちのアイデアに感心し、すぐに実行に移すことにした。彼は、市場の一角に、保存食を作るための場所を設け、店主たちに指導を行った。

 そして、完成した保存食は、貧しい人々に無料で配られた。保存食は、栄養価が高く、長期保存も可能だったため、多くの人々に喜ばれた。

 尊氏は、食品ロス対策を通じて、民の生活を向上させるだけでなく、新たな食文化を生み出すことにも成功した。

「食糧を大切にする心は、人を思いやる心にも繋がる。この心を、日本中に広めていきたい」

 尊氏は、そう心に誓い、民が笑顔で暮らせる世を作るために、歩み続けた。

 黒田義信は、そんな尊氏の姿を見て、静かに言った。

「足利殿、あなたは、常に民のことを考えている。その心が、この国を救うだろう」

 尊氏と義信は、互いに深く頷き合い、共に未来を見据えた。

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