第13話 琉球への使者
尊氏が楠木正儀との戦いを終え、国内がようやく落ち着きを取り戻し始めた頃、新たな問題が持ち上がった。それは、遠く離れた琉球との関係だった。
当時、琉球は三つの王国、北山、中山、南山に分かれ、それぞれが独自の文化と交易を築いていた。しかし、その一方で、互いに争いを繰り返しており、不安定な状況が続いていた。
尊氏は、琉球との交易を通じて、新たな文化を取り入れ、国内の経済を活性化させたいと考えていた。しかし、そのためには、琉球の安定が必要不可欠だった。
そこで、尊氏は、黒田義信に琉球への使者として派遣することを命じた。
「黒田、琉球へ行き、三つの王国と交渉してくれ。彼らの争いを鎮め、交易の道を開くのだ」
義信は、尊氏の命を受け、琉球へと旅立った。琉球に到着した義信は、まず中山王の元を訪れた。中山王は、義信を歓迎し、交易に関心を示した。
しかし、北山王と南山王は、義信の申し出を拒否し、戦いを続ける姿勢を示した。義信は、三つの王国を何度も訪れ、粘り強く交渉を続けた。
そして、ついに、義信は三つの王国を一つのテーブルにつけることに成功した。義信は、彼らの前で、争いの無意味さと交易の重要性を説いた。
「あなた方の争いは、互いを疲弊させるだけです。しかし、交易を通じて、互いに利益を得ることができれば、新たな繁栄を築くことができるでしょう」
義信の言葉は、三つの王の心を動かした。彼らは、ついに和解を決意し、交易の道を開くことを約束した。
義信は、琉球での交渉を終え、京都へと戻った。尊氏は、義信の報告に深く感謝し、言った。
「黒田、よくやった。お前のおかげで、琉球との交易が始まる。これにより、我が国は、新たな文化と経済を手に入れることができるだろう」
義信は、尊氏の言葉に安堵しながらも、言った。
「足利殿、琉球の地で、私は新たな発見をしました。彼らは、私たちとは異なる文化を持ちながらも、互いに尊重し合い、平和を願っている。その姿を見て、私は、真の平和とは何かを考えさせられました」
尊氏は、義信の言葉に深く頷き、言った。
「黒田、お前は、旅を通じて、多くのことを学んだようだ。その経験は、必ずや、我が国をより良い方向へ導くだろう」
尊氏と義信は、琉球との交易を始め、新たな文化と経済を取り入れた。そして、その影響は、日本全体に広がり、新たな時代の幕開けを告げるものとなった。
琉球との交易が始まり、国内に新たな活気が生まれ始めた頃、尊氏は新たな問題に直面していた。それは、幕府内の権力闘争だった。
尊氏は、戦乱の世を終わらせ、民が笑顔で暮らせる世を作るために、全国各地を巡り、様々な人々と出会ってきた。しかし、その一方で、幕府内では、尊氏の留守を預かる者たちが、それぞれの思惑で権力を握り始めていた。
特に、尊氏の側近である内管領たちは、その権力を背景に、私腹を肥やし、民を苦しめていた。
尊氏は、内管領たちの横暴を黙って見過ごすことはできなかった。彼は、内管領たちの不正を暴き、彼らを粛清することを決意した。
しかし、内管領たちは、長年かけて築き上げた権力と財力で、尊氏に対抗した。彼らは、各地の武士たちを買収し、尊氏を孤立させようとした。
尊氏は、再び、苦境に立たされた。しかし、彼は、これまで出会ってきた人々、そして、黒田義信をはじめとする信頼できる家臣たちの力を信じ、立ち上がった。
尊氏は、内管領たちの不正の証拠を集め、それを公にした。そして、彼は、民に訴えかけた。
「私は、民が笑顔で暮らせる世を作るために、戦ってきました。しかし、今、私の側近たちが、その理想を裏切っています。私は、彼らを許すことはできません。共に、彼らの不正を暴き、真の平和な世を作りましょう」
尊氏の言葉は、民の心を動かした。民は、尊氏を支持し、内管領たちの不正を告発した。
内管領たちは、民の怒りに恐れをなし、逃亡した。しかし、尊氏は、彼らを追い詰め、捕らえた。そして、彼は、彼らの罪を明らかにし、厳罰に処した。
内管領たちの粛清により、幕府内は浄化され、尊氏の権威は再び高まった。しかし、尊氏は、この事件を通じて、権力の恐ろしさを改めて痛感した。
「権力は、人を狂わせる。私は、二度と、このようなことが起こらないように、民の声に耳を傾け、常に謙虚な姿勢で政治を行わなければならない」
尊氏は、そう心に誓い、新たな決意で、民が笑顔で暮らせる世を作るために、歩み続けた。
そして、黒田義信もまた、内管領の粛清を通して、足利尊氏という人間をより深く理解していくのだった。
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