『知りたくなかった』
第2章1話『柔らかな風が頬を撫でる』
「聞いた話によるとそろそろね、
大きな赤いリボンをつけた長い茶髪の女は、1人で夜の村内を歩いていた。
「はぁ………
「陽菜ちゃん………好き。ちゅっ。」
旅館の部屋に戻るまでの道中。陽菜と歌恋は手を繋いで歩いていた。
「ひゃぅ………」
「可愛い反応してくれちゃって。」
「っひぅん!はぁんッ………///」
誰もいないところで
「陽菜ちゃんって、ムッツリすぎるよねぇ………」
「やん♡そんなっ………」
「イクの?」
陽菜の鼻を思いっきり吸って舐め回す歌恋。
(んぶぶっ!こ、この匂いしゅき………)
陽菜は完全に堕ちたメスの顔。
陽菜は腋と鼻を同時に犯されている。
「んんんん〜っ///っ!イク!イクッ!!!」
腋を犯されているという事実に興奮し、絶頂した。
「ねえ陽菜ちゃん。ペ・ニ・バ・ン♡買ったから使おうね♡」
「えっ!」
赤面する陽菜。
「………ぅん。」
頷く。
「ただいま〜っ!」
旅館の部屋に戻った陽菜。
「おかえり、どこ行ってたの?」
「ああ美結。陰陽師がいる建物とかに行っててた。」
「何してたの?」
「藤吉さんが依頼を受けるところを見てたんだ。」
陽菜は、次村を出る時に誰か村人を殺していないと死んでしまう。芭那が見る限り綾を祓った後も呪いが継続していることから、永続または解呪までにかなりの時間がかかるとされ、時間経過以外の解呪方法を探すこととなった。
「あんまり無関係の人に喋るのはよくないって言ってたからさ。」
「なんでよ〜。あの化け物のこと説明しに来てたじゃんか。」
萌果が少し不思議がる。
「それは、口止めの必要含めて説明しないと『こういうことがあったんだ』って言いふらしちゃうでしょ?言いふらしちゃうとそれが噂になり、その噂が恐怖を生んでさらにその負の感情から怨霊が生まれやすくなる。だから遭遇した人には説明責任がある。そういうことだと思うよ。」
「理解早すぎでしょ………」
「へへ、まあ漫画とかよく読………いわゆるオタクだし。」
得意げな表情の陽菜。
「もうすぐ夏祭りあるんだけどさ、来る?」
陽菜は萌果と美結を夏祭りに誘う。
「あーいいね、行こ行こ!」
「わたしも行く!」
萌果と美結は乗り気だ。
「えへへ………もふもふ。もふもふもふもふ。」
ぬいぐるみでもふもふするのが至福のひとときだ。
「あ、陽菜。ちょっと触らせてよ。」
美結はぬいぐるみに意識が向いていた。陽菜は美結にぬいぐるみを触らせた。
「陽菜。ぬいぐるみはいいけど、ぬいぐるみばっか抱っこしてて歌恋にヤキモチ妬かれたりしない?」
疑問が出る美結。
「わたしはぬいぐるみにヤキモチは妬かないよ。むしろそういう陽菜ちゃんが可愛いなって。陽菜ちゃんはほぼ誰とでも仲良くしたがるから、ヤキモチ妬きは陽菜ちゃんとは相性悪いと思う。陽菜ちゃんから見て相性悪い人は殆どいなさそうだけど。」
「仲良いんだね。」
納得する美結。
「ん、着信───げ。母さんは無視でいいや。」
即座に着信を切る陽菜。
陽菜も、母親にだけは苦手意識があった。
陽菜は、自分に対しての犯罪は自分の力で殆ど退けることができるため苦手意識は存在しない。犯罪にもよるが、むかつき加減が少々変わる程度。しかし母親に対してだけは苦手意識があった。
「祭りってさ、どんなことするの?」
美結が聞いた。
「だいたい皆が想像してるような祭りだよ。金魚すくい、射的、ストラックアウト………あ。こんどは藤吉さんからメッセだ。」
陽菜はLINEのトークルームを開く。
《陰陽省に来てくれ。歌恋ちゃんくらいなら連れてきても構わん。》
「………だってさ。というわけだから藤吉さんのいるとこに行ってくるね。ちょっと色々と訳ありで。」
「そっかー、いてら。一緒に行きたいから祭りまでには戻ってきてね〜!」
「いってら。」
陽菜たちの間には信頼関係がある。陽菜が訳ありと言うと萌果と美結は深入りはしないでおこうと考える。友達の間でも隠したいことはあるものだと理解しているからだ。
「来ましたよ藤吉さん。」
戸を開けて中に入る。
「おお、来てくれたか。陽菜ちゃん。まあ座って。」
芭那に促されるまま座る2人。
「なんでわたしを呼んだんですか?」
「わたしが傍にいないと、きみが親に捕まるかもしれないだろ。それは見てられない………というのは私情で、本当は霊媒体質の陽菜ちゃんを放っておくと危険だからだ。もし陽菜ちゃんが怨霊に取り憑かれると、陽菜ちゃん自身が周りに危害を加えかねない。いくら陽菜ちゃんでもそれに対抗する術は無い。だからそういう被害を防ぐため、できるだけわたしが見てあげることにしたんだ。」
「ありがとうございます………藤吉さんってすごいですね………」
「まあな。陰陽師最強って言われてる。けど、わたしは
(悲しそうな表情………)
陽菜は、芭那の言葉に隠れた悲しみを読み取っていた。
「藤吉さんって勝てない怨霊とかいるんですか?まあ、いたら今頃生きてないのかもしれませんけど………」
陽菜は芭那の陰陽師としての実力が気になっているようだ。
「わたしは強いから大抵の怨霊なら屁でもない。けど、もし………
芭那は一呼吸おき、
「メサイアの使者が現れし時、最強の陰陽師と最強の依代でそれに対抗せよ、と伝わっている予言でな。大怨霊の力を陰陽師が依代の肉体に憑依させて、メサイアの使者と戦う準備をしろと伝えられている。まぁこれは陽菜ちゃんは気にしなくていいことだから忘れてくれ。」
「はーい。」
「わたしは陽菜ちゃんが気に入った。もし、もしも………手に届くのに陽菜ちゃんを失うと後悔しそうだと思ったんだ。」
「あ、ありがとうございます。」
陽菜は礼を言った。
「陽菜ちゃん、すごいね。殆ど会ったばかりなのに気に入られるなんて。」
8月9日、祭りの時間。
たくさんの人で賑わっている。現在は差別も殆ど無いため、村人だけでなく近隣住民も来ることがある。
陽菜、歌恋、萌果、美結、芭那は一緒に回っている。
「守ってくださいね………」
陽菜は他4人に囲まれるように歩いている。まるで他4人がSPのようだ。
「お、陽菜ちゃんか。射的やるのかい?」
屋台のおじさんが陽菜に声をかけた。
「やります!」
金を渡し、陽菜は銃を構えた。他4人は陽菜の周りに立っている。
「ッスゥ───」
呼吸をし、集中する陽菜。
ポスン───ポトッ
陽菜は一撃で景品を落とした。
「っし!モフモフくまさんゲット!」
陽菜は景品をもらった。
「みんなやる?」
陽菜の言葉に他4人も順に射的をやり始めたが、景品は落とせなかった。
「おばちゃん!またいつものように金魚すくいやらせてよ!」
次に陽菜が来たのは金魚すくいの屋台。
陽菜の手捌きで、次々とすくわれていく金魚たち。
「おばちゃん!新しい器!」
「陽菜ちゃんすごいな………」
芭那は驚いていた。
「え?なにかすごいやつがいるぞ!」
「すご………」
「この量をすくったの?」
徐々に注目を集めてしまう陽菜。
「この子にはあまり注目しないであげてくれ。今はちょっと目立つのを嫌っているのでな。」
芭那がそれを制止した。
「やった!34匹取れたよ!じゃあ、はい。」
陽菜はゆっくりと金魚たちを水槽に返した。
「要らないのか?」
芭那が聞いた。
「だって、居なくなった時に寂しいですから………金魚さんカワイイもん………」
陽菜が小さい頃。
「きんぎょさんカワイイ〜!」
水槽を見つめ、目をキラキラさせる陽菜。
「陽菜、いっぱいすくったね!」
「すごいな!」
「本当にねえ。」
陽葵、照彦、恵子が順に陽菜を褒める。
「カワイイきんぎょさん〜!いっぱい可愛がるもんっ!」
純粋な心だった。
「今日もみんなかわいがるの!えさのじかんだよ〜!」
水槽に餌を入れる。
「はわわ…かーわい〜っ!!!」
側面に指で触れると、その指に何匹か金魚が寄ってきた。
そんなある時。
生きている以上、いつかはこうなる。
「あれ………きんぎょさん元気ないね?えさパクパクたべてくれないの?」
「陽菜。金魚さんはもう………」
「ね、姉さん。えさあげたらパクパク食べてくれるよね?ね………」
しかし、金魚が動き出すことは無かった。
「やだ…やだよ………パクパクしてよぉ………うぅっ………………うわぁぁぁぁん!やだ!やだ〜!!!」
可愛がっていた金魚がみんな死んだ。悲しかった。
陽菜には、1度気に入ったものを失うのは悲しすぎた。
「ぬいぐるみはいいよ。情が移っても死なないもん。ずうっと傍にいてくれる大切な家族なんだ。」
「そうか………陽葵から聞いていた通りだな。」
「次はストラックアウトやる〜!」
陽菜は、技術が絡む射的も金魚すくいもストラックアウトも得意種目だ。
「ほっ───」
ボゴン!ガラガラガラ………
1球で5枚落とした。
「すごい!」
歌恋が褒める。
結果、3球で9枚すべて落とした。
陽菜たちは思う存分祭りを楽しんだ。
「楽しー!っあっ、すいません!」
男にぶつかり、軽くお辞儀をして謝る陽菜。
「あぁすみませ…芭那?」
男が芭那の名前を呼んだ。
「久しぶり。元気してた?」
「
「久しぶりだな、これ食うか?」
涼が差し出したのはりんご飴。
「………いらない。わたしに気を遣わなくていいって何度も言ってるだろ。」
「………まだ気にしてんのか?」
「涼さんもあと60年くらい待てば………」
「おい!」
「っ………」
芭那は途中で涼を無視し、どこかに行ってしまった。
「あっ藤吉さ〜ん!ちょっと待ってくださいよ〜!」
慌てて追いかける陽菜たち。
「藤吉さん、どうしたんですか?」
「………祭りが始まる前、念の為近辺を巡回した陰陽師がいるんだけど特に異常は無かったそうだ。綾ちゃんのこともあったし他に何かあるんじゃないかと見回りを頼んでおいたんだが………………………」
芭那は遠くを見つめている。
「そ、そろそろ旅館に戻りましょう!晩ご飯も」
芭那の様子を見かねて陽菜が提案した。5人で戻ろうとしたその時。
「あ、あの………」
創介が芭那に声をかけた。
「ちょっと余ったんで、これどうぞ………」
何やら慌てた様子で走り去る創介。
「わぁ〜!食事用意されてっる〜!」
陽菜は料理に目を輝かせた。
「「「「「いただきま〜す!!!」」」」」
料理を食べ始める。
「ふわぁ………今日祭り行ったから疲れたのかなぁ………」
美結があくびをした。
「おーい………ふわ。こんなところで寝るんじゃないぞ………」
芭那もあくび。
(そういえば、眠い………ん………………何か、変………みんな、眠そう………)
陽菜を襲う眠気。
(な、なにか。やば………………………)
眠気に耐えきれず机に突っ伏した陽菜。
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