あの時の憧れは
月影澪央
第1話
私はあるアイドルに救われた。
今のアイドルと言えば男女ともに韓国系が増えた中、王道なかわいさをアピールするアイドルも逆に人気になってきた。
そんな中で後者の方で人気になったのがこのAstraea。
それを見て、それに救われた私は、Astraeaと同じアイドルになりたいと思い、そうなるために、Astraeaの所属する事務所・
オーディションを受けるまで、私は全くの未経験だった。それでもなんとかオーディションには合格し、練習生にはなった。そこからこの数か月後にデビューできるのはわずかな人数だと言われた。
私はどうにかデビューメンバーに入りたかった。練習生としての期間を過ごすことには耐えられないような気がしていた。一緒にレッスンをした人たちがデビューして活躍していく中で、練習生として日の目を浴びないままそれを見ることはできないと思った。だから人一倍レッスンをこなし、精いっぱいの努力をした。
その結果、なんとかデビューメンバーに入った。
が、他のメンバーが誰なのかは知らされていない。その発表から動画を撮影し、コンテンツにするのだろうとすぐに分かった。
顔合わせの日が知らされて、その日を心待ちにしていた。
その日が来て、予定時刻の少し前に事務所に到着すると、早速マネージャーさんがカメラを回して話しかけてきた。
「おはようございます」
どうせカメラが回ってるんだろうと思って、しっかりと挨拶をしておいた。
「どうですか、今日を迎えた感想は」
「そうですね……今めっちゃ体調悪くて」
「大丈夫?」
「多分緊張してるのかなって」
不安そうな表情をしてそう言った。
「そんな緊張しなくても大丈夫だよ」
「いやぁ……ほんとに、私人見知りで、やっていけるかなって。っていうか、もう他のメンバーが知り合いで関係ができてたらって思ったら……」
「心配しすぎだよ。みんな仲良くしてくれるから」
「そうだといいんですけど」
そんな話をしながら、すぐに顔合わせの会場となっている会議室に到着した。
「じゃあ、開けてください」
そう言われて、思いっきり会議室の扉を開ける。
扉を開けると中からわーっという声が聞こえ、まず廊下と部屋の照明の明るさに目をこする。
しっかりと見てみると、中にはもう見覚えのある女の子が六人いて、コの字になった机に配置されている椅子に座っていた。
「じゃあ、
マネージャーさんがそう言って指したのは、唯一空いていた真ん中の椅子だった。
「では、えー、みなさんが、新グループのメンバーです!」
コの字の前に立っていたプロデューサーの人が、私が席に着いた途端にそう言った。
それからこのグループについての説明が始まる。メンバーは七人で、Astraeaと似たような可愛い系のアイドルにしたいらしい。
説明が終わると、そのまま全員の自己紹介をする動画を撮ることになった。SNSに載せる用の短い動画だ。その流れは元々聞いていたので、戸惑いもなくスムーズに進んだ。
「じゃあ動画行きまーす」
3・2・1 とカウントダウンの後、順番に喋ることになっている。
まずはグループ名を名乗る。そのための流れ、第一声は私だ。
「みなさん初めまして、私たち……」
『
さっきグループになったばかりと思えないほど揃っていて、自分自身もカメラに可愛い感じにアピールもできた。
ここからは順番に自己紹介していく。と言っても載せられる動画の長さが短いので、自分の名前くらいしか言えない。あとは一番覚えられやすいメンバーカラー。
メンバーカラーは事前に教えられていて、それっぽい色のアイテムを身に着けてくることという指示は貰っていた。私は紫だと言われていて、気持ちばかりにリボンをつけてみたけど、もし何も無ければどうしていただろうか。
そもそも、私の名前が
一応その理由も聞いてみて、言われたのはAstraeaの
そして各メンバーの自己紹介だ。
「ピンク担当の
恋ちゃんはグループの最年少で、明るくて可愛い。これほどピンク担当のイメージに合う人はいないというくらいだ。仕草の一つ一つが可愛い、練習生の時からの末っ子キャラだ。
「黄色担当、
最後にウインクしてカメラにアピールした叶莉ちゃんは、自撮りが可愛すぎると話題になったことがあるくらい、とにかく顔がいい。この一瞬だけでも顔の良さが出ているだろう。
「白色担当、
ピースをしながらそう言った結萌ちゃんは、とにかく元気なのが特徴。また、ダンスがすごく得意で、初めからさすが経験者という動きをしていた。
「黒担当の
三人からは印象が変わって落ち着いた印象の光空ちゃんは、その印象の通り大人っぽくて練習生の中でもお姉さん的存在だった。きっとグループでもそうなるだろう。
「赤色担当、
緋里ちゃんは私の中ではクールなイメージがあったけど、今は逆に明るい元気な子という印象がある。赤色のイメージに合わせたのだろうか。でも私としても本当にどんな人なのかは詳しく知らないので、なんとも言えない。
「青担当の
碧ちゃんはおっとりしているような感じだけど、頭が良さそうな雰囲気もある。お嬢様、と言ったらわかるだろうか。そんな印象だ。
そして最後、私の番だ。
「紫担当、
私の言うことはこれで終わりじゃない。
「私たち、この七人で頑張っていくので、応援よろしくお願いします!」
そう言って最後に手を振って動画にカットがかかった。
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