YES、MY better half
風鈴
第1話
『国籍なんて関係ない、帰国した時に必要だから日本のパスポートを作っただけで、生まれた場所もアメリカそれで良いじゃない、就職先ももうアメリカだと決めているのに、日本に行く意味はないでしょう』
私は、大声で怒鳴った。
『そうだよ、僕は、アメリカで生まれた。1歳から6歳迄日本に住んでいた。何があったのかはわからないけど、あの日急に雨の中、ママは僕を連れて、パパと暮らしていた家を出たんだ。パパにひとことの挨拶もせずに、殆ど荷物も持たずに、その理由を聞かせてくれたら日本には行かない』
リックは、今日は引かなかった。いつもなら、私に花を持たしてくれる息子なのに、そう思うと悲しくてたまらなかった。
『パパの事は愛していた。パパもそうだと言っていたのにママを裏切ったのよだから別れた』
そう言って、私は、泣き顔を見せたくなくて、リックの部屋のドアを思いっきり音を立てて閉めた。
それから、気が付いたら飛行機に乗っていた。ニューヨークに着いたら雨が降っていた。
ラガーディア空港のタクシー乗り場は、雨で長蛇の列、私は少しウンザリしながら、マンハッタン行きのバス乗り場まで歩いていた。
「おーぃ、ケイト」
誰かが叫んでいる。一瞬、自分じゃないと思っていたが、知っている声のする方に目を向けると、自分の働いている支配人のカーク・リシャールが手を振っていた。
「カーク、どうして?」
「リックが、ケイトが、帰ったから迎えを出せないかと言ってきた。俺は、もう仕事が区切りがついて家に帰る予定だったから、お迎えに来た訳さ」
「そうなの、雨が降っていたから助かった。ありがとう。あの子とは、アパートメントで別れたのに、どの飛行機に乗るだろうと読まれたって言うのも癪だな」
「リックは、我が社の有望なコンシェルジュになるんだから、それぐらいの知識はあるだろう」
「そうね、だけど今揺れているみたいだわ」
「えっ、そうなのか」
「ジョージ・ダグラスって友人達とツアー会社を立ち上げたのは知っているでしょう」
「あぁ、体験型ツアー会社?だったかなぁ」
「そう、学生のノリで作った会社、ジョージは、あれを本格的に稼働しようと思っているらしい」
「ケイト、自宅?ホテル?」
「ホテル、仕事を少しして帰る」
「了解、まぁ、卒業までは後半年あるんだろう。リックは、結構計算高いから良く考えるんじゃないか」
「それは良いだけど…」
「まだ問題があるのか?」
「まぁね、もう少し私も考えてから相談するかも」
「いつでもお気軽に、声かけてくれることを待っている」
そうこう言っているうちに仕事場であるホテルに着いた。
「今日は、ありがとう。明日は、ゆっくり休んでね」
「あぁ、ありがとうまた月曜日にバァイ」
「バァイ」
ホテルの自室に入ると秘書のリリアが、まだ部屋で仕事をしていた。
「ただいま、リリア」
「おかえりなさい、ケイト、今夜は帰らないと思っていました」
「うん、リックとやっちゃったから」
「あぁ、今度は何で?」
リリアもシングルマザーなのでよく色々と子供たちの事で愚痴を言って、食事をする仲間で、今日も彼女に聞いてもらいたいと思って自宅に戻らず仕事場に帰ってきたのだ。
「リックが、急に日本に行くってそして、父親の住んでいる近くに行くから会えるか会うかはわからないけどって言ってた」
「すこし、慌てたんじゃない」
「慌てたのかなぁ?そうじゃないと思うけど、急に凄く怒りが湧いてきて、怒って帰ってきたの」
「ふーん」
「だって、私でさえ日本に帰っていないのよ。それを先に行くなんて」
「やっぱり、日本にいる健作さんの事好きなんでしょ」
「違う」
「違わないでしょ。ケイト、いつも言うけどあなたってすごく仕事もできるし、気配りもできる。私が、秘書になってもう10年近くなるけど本当にもてていると思うわ。それでもいろんな理由をつけて断ってきたのを見ているとそう思う方が自然なのよ」
「違う、今までの人は本気になれなかっただけよ。だけど、今回は伯父の推薦もあるし、リックもなついているからカークの事は真剣に考えているの。そんな時にリックが日本に行くなんて言うから…」
「揺れてくるわね。いっそうの事一度ケイトも日本に行くっていうのはどうよ」
「それは嫌、絶対に嫌なの」
「まぁ、あなたに甘いリックの事だから父親には会わないと思うわ。彼ってあなたの事を一番に思っている子供だから、我が息子とは違う」
「そうっか、それでこそ私の息子だよね」
「そう思う」
私は、少し気分が上向きになってきた。そうさせてくれるリリアが、好きだ。歳は彼女の方が下だが、ある意味お姉さんのようだった。多分リックの次に私に甘い秘書だと思った。
「それじゃ、夕飯でも食べに行かない。デート?」
「違うは、彼今日は夜勤だからレストランの奥にリザーブしてくれているはずだから一緒に行きましょ。ひとりだと忙しい彼が、気にするからケイトと一緒だと聞くと安心するから」
「良いの?お邪魔じゃない?」
「大丈夫、彼は、厨房で忙しいはずよ。今日は、パーティーが、二件も入っているから食事の間は来ないわ」
「それなら、一緒に行くわ」
ふたりで仕事を一通り済ませてからレストランに行って、2人の息子への愚痴をお互いに話して夕食を楽しんだ。
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