第13話 ご褒美を待ち侘びて

 マッサージ事件を終えて、私達は寝室に戻って来た。


 あのイケメン食いに申し訳ないことをしたな。まさか私にまだ痙攣する余裕が残っていたとは……やっぱりフレディーのエッチな声はずるいよ、痙攣しちゃうって。

 デザートは別腹だもん。


『エリンさん、ゼロまで耐えたご褒美くださいよ。納得するものが貰えるまでねだり続けますからね』


 寝室で寝転がる私の顔を、ふわふわ空中浮遊しながら覗き見るフレディー。頬を膨らませて怒るフレディーは子供っぽさがあって愛らしいね、もっとイジリたくなっちゃうじゃないか。


「もう一度カウントダウンするかい?」

『断固拒否です』


 ふふ、またいつかカウントダウンさせてみせるよ。楽しみにしておくんだね。


 浮かぶフレディーに手を伸ばし、フレディーに手を透かせながら言う。


「もちろんご褒美はするよ。だからまた憑依をお願いしても?」

『それはエリンさんのご褒美では?』

「いいから、あとエリンって呼んでよ」


 疑いの目笑向けるフレディーの後ろ側。寝室のドアがノックされる。


「あ、きたきた。お待ちかねのやつだよフレディー」


 私はぴょいんと立ち上がり、ドアの小窓から外側にいる人物を確認してから開ける。


 お待ちかねのやつとは。


「お待たせしました~。こちら、ディナーになります」


 そう、夕飯!

 ベルギーのディナーメニューは、牛肉煮込みのカルボナード、お決まりフレンチフライ、ムール貝、魚スープ、そしてワッフルだ!


 もうお手本のようなベルギーディナーだな。

 肉、野菜、魚介、デザートとフルコースじゃないか。フレンチフライは野菜だ、いいな?


 ちなみにムール貝は特製ビールと一緒に嗜むべきなのだが、明日フレディーと会うのに酔い散らかしたらいけないので断念した。まあ、ムール貝とフレンチポテトも合うらしいし良いでしょう。


 私はルンルンになってワンプレートのディナーをテーブルに運ぶ。


『エリンさんだけズルいですよ、む~何がご褒美なんですか』


 不貞腐れるフレディーは、生霊らしくうらめしやな感じで近づいて来た。


 私は少し膨らむフレディーの頬を、指でツンと押して空気抜きしながら。


「言っただろう? 憑依してくれと。私にフレディーが憑依することで、味覚を共有するのさ」


 フレディーは分かりやすく手の平にぽんと手を置き、満面の笑みになる。


『わ~なるほどです! 疑ってすみません! さ、憑依憑依~』


 私以上にルンルンになったフレディーは早速憑依。寒気が身体全身を襲うが、つまみ食いフレンチフライで身体を温めなんとか耐える。ウマウマ。ぴょい。


『あ、まだ完全に味覚共有出来てないのに……食べちゃダメですよ』

「へへ」


 椅子にしっかり座り、さあディナータイムの始まりだ!

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