5.

「ねぇ、京香きょうかから見た私ってどんな人?」


 食後に頼んだチョコレートパフェが届いたタイミングで、冴島さえじまさんに会ったら聞いてみたかった質問をすると、一番上のアイスに意気揚々いきようようとスプーンを刺した冴島さんが驚いたように固まった。ハンバーグセットと山盛りのポテトをたいらげた後、デザートを頼むというのを止めた時よりも驚いている。


「何? やっぱりまだおかしい? 自分がわかんなくなった?」


「そうじゃないって。ただ……ほら、自分をもう一度見つめ直すのも大事だと思って」


「私が言って素直に認めるかなぁ。まぁ、一番大きい特徴はやっぱアレよね、良くも悪くも器用な人かな」


「あぁ、昔も言われたよね。器用仮面だっけ?」


 このあだ名は、尾畑おばたさんの情報からインプット済みだ。


「あはは、われながら上手い事言ったねぇ。そうそう。器用なフリして、影で自分を犠牲にして、表で格好つけて損してる人」


「何それ」


「ディスってるわけじゃないから、誤解しないでよ。あんた昔からそうじゃん。秘密主義というか、人知れず努力するというか。面倒な役目押し付けられてもこじれないように引き受けて、何事も無かったようにニコニコしててさ」


 そこまで言うと、冴島さんは視線を私かららし、アイスをほじくりながら何かをモゴモゴと言った。


「何て?」


「だからー。そういう所が最高にかっこいいって言ったんだよ」


「き……気持ち悪っ! 何、急に真顔で褒めてんの。鳥肌たっちゃった」


 尾畑さんの事なのに、私まで恥ずかしくなって、照れ隠しで両腕をさする。


「失礼しちゃう。またからに閉じこもられて、能面のうめんみたいな顔されたら嫌だから特別サービスで答えてあげたのに。言っとくけど、悪い所の方があるんだから。実は口が悪いでしょ、心配性でしょ、妄想癖あるでしょ、急に卑屈ひくつになるでしょ、人に頼るのも甘えるのも壊滅的かいめつてきに下手でしょ」


 指折りしながら悪い所をペラペラと話し始めた冴島さんを「もういい、お腹一杯です」とさえぎった。


「だから、真弓は弱い所とか格好悪い所を見せられる相手じゃなきゃダメだと思うんだよね。時間をかけた方が良いと思うの」


「ありがとう、答えてくれて。ねぇ、ついでに聞くけど、私ってどういう人を好きになってたっけ?」


「あんた、ヤバくない? 記憶喪失?」


「いや、ほら、自分の事って都合悪い記憶は消そうとするでしょ。京香の方が冷静に覚えてるかなと思って」


「あぁ、確かに。言われてみたら自分の事より、真弓の恋愛の方が覚えてるかも」


「でしょ? 京香から見て、私が付き合っていた相手ってどんな人だった?」


「うーん。あんたはまず顔で選ぶでしょ。ってか若い頃は皆そうだったけどさ。でも、真弓は昔から『私は中身でパートナー選びます』的な空気出してたけど、めっちゃ好みがハッキリしてたね。私の好みじゃない彫り深めな感じの人」


「そっかそっか。で、相手の中身はどんな印象?」


 先程から「何でそんな事を聞くの?」と尾畑さんが動揺しているが、これは完全に私の興味でもあった。

 基本的な情報は縁糸えにしいとを通じて得られるはずなのに、不思議とその中から今までの恋愛については読み取れない。尾畑さんをより深く知るには必要な気がするのに、どうしてもわからないのは尾畑さんが拒否しているからかもしれない。ならば、一番詳しそうな人に聞くまでだ。


「中身かぁ。とにかくよく喋る人が多かったかな。その方が楽だって言ってなかった?」


「あぁ、うん、そうそう。そうかもしれない」


 尾畑さんの好みを聞いて、ふんふんと頷いていると「あ~! でもさぁ」と何かを思い出したように言った冴島さんが、お腹を抱えて笑い始めた。


「え、どうしたの?」


「色々言っちゃったけど、よく考えたら真弓が誰かと付き合い始めるキッカケって身体の関係先行が断然多かったじゃん。最近、男日照りが続いてたから忘れてた。何が時間かけてだよ、おっかしい! 涙出てきた」


「なっ……」


 声を失い息を呑む私に「あぁ~! 聞かないで! 若かりし頃の事だから~」と尾畑さんの叫び声が届く。


「そんなキッカケでも遊ばれずにちゃんと付き合ってたんだからたいしたもんだよ。いいや、前言撤回! 今度良さそうな人がいたら、とりあえず寝てみれば? うん、そうしよう」


 笑いすぎて泣いている冴島さんに返す言葉が見つからなくて、得意の苦笑いを浮かべた。

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