第11話 逃避行

新聞を取り寄せて、AI《おれ》が書いた小説を通しで読む。

JKみゆきとの出来事が、まるで日記のように正確に記されている。

これは、俺がクラウドのネタ帳に書いた通りだ。


ところが、驚いたのはこの後だ。

出来事、先日のみゆきとの再会の模様が今週から始まった。

まるで、見てきたかのように。

これが、当時からの俺の希望的妄想だったとでもいうのか?






ホテルの部屋に呼び鈴が鳴る。

覗き窓を見ると、険しい顔のみゆきだ。

今日は約束があったわけではない。

ドアを開けると、いきなり帽子が剥ぎ取られた。


「何!?!?」


彼女の返事は、人差し指を口元に持ってきて、

唇を尖らせ、無言で、シィィーーー!


そして紙に書かれた命令文を見せられた。


『トイレに行ってスマホを置き忘れたふりをして』


!?!?意味がわからない。そんな顔で動作を一時停止していると、


『ほら!』『早く!』『行って!』

と言わんばかりに、三度、命令文の紙を振る。


訳がわからず、言われた通りにすると、

腕を引かれて廊下に出た。


「すぐ出発するから。貴重品だけ持ってきて。」


「スマホ、、、」と言いかけると、


「あのスマホはダメ。」


「スマホに新作の構想が入っているんだ。

まだクラウドにバックアップとって無いから。」


「大丈夫、こっちで把握しているから。」


「えっ!?!?」


「とにかく時間が無いの。私を信じて!」

みゆきは涙ぐんでいた。


「じゃあ、行こう。死人の俺に貴重品は何も無いよ。」








ホテルの地下駐車場に降りると、

そこには見慣れた車が。


「乗って!」


「これ、俺のランクルじゃん!?どうしてみゆきが?」


「説明は後!とにかく乗って!行くよ!」


「姫様ぁ、どこへ行くのじゃ!?」

昔見た冒険活劇を思い出した。思わず芝居がかったセリフが出た。


「あっ、、愛の逃避行よ!」


何だそれ!でも、気分が乗ってきた。

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