第30話

それに笑顔で手を伸ばし摘まみ上げてきた事には、大役を成し遂げた感覚で緊張を緩めたというのに、


「【ただの】ソーダ味か、…残念」


「っ~~~」


私にしか聞こえない様な声音でボソリと言われた一言には見事被爆。


ボンっと音がしたんじゃなかろうかという程にタロ君に向ける顔は真っ赤であったと思う。


そんな私に向けられるのは『どうかした?』と言わんばかり、何事もなかったように儚げに微笑む彼の姿。


「タロ君のエッチっ!!」


「ええ~、僕飴舐めただけだよねえ?」


「おいおい、花、お前飴舐めてんの見て何妄想したんだよ」


「へぇ~、花ちゃんって案外エッチなの?」


「違うっ!!私は普通に普通の感覚だもん!!」


何で被害者的な私が逆にこんな風に言われているのか。


それもタロ君がスッとボケた感じに切り返すからぁ!!


と、色々な感情から顔を真っ赤に不満げな表情をタロ君に向けたのに。


「フフッ、花さんは可愛いね」


「っ~~」


この一言に流される。


絆される。


だって、どんな意地悪っぽい一面を追加されても、好きになった本質のタロ君は何にも変わってないから。


むしろ……どんどん好きになっちゃってる。


タロ君に意地悪されるのもいいな。


そんな事まで思っちゃってる私は……恋愛中毒に侵されているんじゃなかろうか。

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