第8話 白い短剣の持ち主
ソライは気になっていた事をニイルの両親に問いかけた。
「ニイルを連れ帰ったら、この短剣の持ち主に会わせてください。」
ハッとした様な表情をしたニイルの両親は、ためらいがちに告げる。
「この白い短剣の持ち主は、実は・・・ニイルなのです。」
あまりの事にソライはびっくりして両親に問いかけた。
「え ニイルが?・・・でもニイルは白い短剣なんて知らないって。」
「あの子は短剣の存在すら知りません。」
「この短剣は・・・。ニイルが抱いて一緒に生まれてきました。
あまりの事に私たちは驚きした。
そんな奇怪な話が広まったら何が起きるか不安で・・・
白い短剣は安全の為に地中深く埋めました。」
一旦言葉を区切り、覚悟を決めた様に続けた。
「それ以来、私達は白い短剣の事を口にした事はありません。
娘は全く知らないのです。」
それだけ言うと父トーイは身を縮める様に口を閉ざした。
トーイに代わり、母ナーキが話を続けた。
「今になって誰も掘り返していないのに
なぜ地面からでてきたのか、私達にもわかりません。」
ソライは両親の話に驚いたが、ニイルが”対の女子”だとわかり、
晴れやかな気持ちになった。
突然一陣の風が吹くとソライの前に“風の精霊”が現れる。
「ソライよくがんばったね、あと少しだよ。」
そう言うとソライの頭をぐしゃっとなで、両親に向き直る。
「ニイルの白い短剣は生まれてからずっと土の中から彼女を見守っていた。
しかし今回連れ去られた事でニイルの危機を察知して
土からひっぱり出されたのだよ。」
風の精霊はちらっとソライを見た後、
「“ソライと盾”の関係と同じ様に“ニイルと剣”は
一定以上離れない様に出来ているからね。」
「トーイ、ナーギ」
風の精霊はニイルの両親に声をかける。
「精霊様 お会いできて光栄です。」
トーイとナーギは精霊に礼を尽くす。
風の精霊はその気持ちににっこりと微笑み、話を続けた。
「剣は一生、ニイルを守る。娘に剣を渡していたら
連れ去られる事もなかったと思うよ。
ただ西の精霊が何もしなかった所を見ると必然と考えていいだろうね。」
改めて両親ににっこり微笑む。
「もっともニイルも半精霊の魂を持つから、
剣が手元になくても大方の事から守られている。あまり心配しない様に。」
心配する両親に優しく付け加える。
「精霊様 私たち夫婦は過ちをおかしました。どうかお許しください。」
うなだれるニイルの両親を前に風の精霊は春のそよ風を送り、
「トーイ、ナーギ 娘を守ろうとしたこと。大丈夫だよ。」
両親に微笑み、慰めの言葉を口にする。
風の精霊はソライの方に向き直ると
「白い剣が”対の女子”の許に連れて行ってくれる。
今こそ力をみせる時だよ。
あと少し自力でがんばりなさい。」
風の精霊の激励に対し、ソライは力強くうなづき
気持ちを引き締め、決意を口にした。
「ニイルのお父さんとお母さん、心配せずここで待っていてください。
俺がニイルを連れ戻します。」
その言葉を待っていた様に風の精霊はソライに頷き、
腕を一振りして強風を起こし、ニイルの捕まった場所へと送り届けた。
そして葉が舞い踊る程の小さな竜巻とともに消え去った。
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