あこがれのあの人と同じ道へ
砂坂よつば
Act(1).
小学校から帰ると
朝姫「『こ、ん“ん“(声の調整)……こ、この世に悪がある限り……ん“ん“(声の調整)わ、私はあなたを許さない!!』」
宇都宮はパチパチと拍手をする。朝姫は食い気味で執事兼教育係の
朝姫「ねえ、似てる?似てる?」
宇都宮「……正直に申し上げても宜しいでしょうか?」
自信たっぷりの朝姫は答えた。
朝姫「えぇ、いいわよ」
宇都宮「全然似ておりません」
宇都宮の発言で朝姫はハッと息を吸うと同時に口が開く。朝姫はショックを受けたようだ。その様子に気にも止めず宇都宮は続けて––––。
宇都宮「……それに
ショックを受けた様子から一変し、朝姫は機嫌悪くなり少し腹を立たせたような口調で返す。
朝姫「悪くない!ちょっと声を調整しないと上手く出せないだけよ!」
それを聞いた宇都宮は安堵する。急に風邪でも引いたのかと心配していたからだ。
この宇都宮尚道という人物は朝姫が生まれる前から清水家に仕える執事である。正確には宇都宮家自体が先祖代々清水家(武士)に仕える執事(家来)の家系であり、尚道が子供の頃から見習いとして自身の両親に教育を受けてきた。ただし同じ様に教育を受けた筈の尚道の兄だけは清水家を飛び出し違う職に就いたようだ。
現在高校3年生の尚道は通信制の学校に通いながらこの仕事を続けている。
宇都宮「お嬢様のお声はどちらかというと魔法少女の敵役の側近トイフェルヒェン(小悪魔)の方が近いと思われますので、そちらのモノマネを練習した方がよろしいかと……」
朝姫「いやよ。あたしは正義の魔法少女エンゲル(天使)が好きなの!気高く、大人びた艶の声だけど力強いそんな声が出したいのよ」
宇都宮「真逆じゃないですか!?お嬢様のお声はロ……ぁっ!?し、失礼致しました」
朝姫の肩が小刻みに震え耳が赤くなり、涙目になっていく。あ、やばい完全に怒らせた挙句泣きそうになっている。これは執事として在るまじき行為ではないと悟り詫びた。宇都宮は朝姫が興味を持ちそうな話題にすり替えた。
宇都宮「お嬢様、ご存知ですか?先ほどお嬢様がモノマネを披露された方は同じ作品内で別の兼ね役も演じられていることを」
朝姫「え?!なにそれ?エンゲル自身が喋っているんじゃないの?」
宇都宮「違いますよ。“声優“という声だけで様々なキャラクターを演じている役者さんがキャラクターの口の動きに合わせて話されているのです。アニメのエンドロールに“声の出演“と画面に表記されている箇所がありますよね。キャラクターの隣に表記されているお名前が役者さんなのですよ」
宇都宮に説明を受け興味を示した朝姫。さっきまで怒り泣きそうなった姿はもうどこにもなかった。この時はじめて声優という職業を知った朝姫は、声優さん達の様々な声色と顔をインターネットや雑誌を駆使して調べ出すのだった。
Act(1).完 続く
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