第8話
「君は……」
話を最後まで聞いてくれた彼が、優しい笑みで私を見ている。
「君もまた、彼女が大好きなんだよ。だから本当は謝りたくてそんな夢を見るのかもね」
そう言われてはっとした。
──そうだ。私は彼女が好きなんだ。彼女を大切に思ってるんだ。だから……
「彼女のところへ行っておいで。ちゃんと話をしておいで」
笑った彼は、私の背中を押してくれた。
私は財布を取り出した。だが彼はそれを制し、私に行くように言った。
「ありがとう」
彼にそう言うと、私は店を出た。
スマホを取り出して、彼女の
耳に聞こえる電話の音。それが落ち着かないものとなっている。
暫くして、「はい」と彼女の声が聞こえた。その声になんて言おうか迷ってると、彼女から『どうしたの?』と声がかかった。
「会おう!」
私はそう叫んでいた。
『え』
「今から!家にいるならそっちに行く!」
叫ぶと彼女はうふっと笑った。
『ほんと、どうしたのよ』
「謝りたいの!」
『何に?』
「いろんなこと!それと、高校の時のことも。話したいことがたくさんあるの!」
『もう、ほんとにどうしたの』
優しい声色で話す彼女が、どんな表情をしているのか想像出来た。
「そっち、行っていい?」
『うん』
私は電話を切って、彼女の元に走り出した。
本当はひとりじゃいられない。
本当はいてくれたことが嬉しかった。
それなのに、私は──……。
ちゃんと、言わなきゃ。
自分の気持ちを。
これからもずっと傍にいてと。
言わなきゃいけない──……。
彼女に聞いて欲しいことが……。
たくさんあるから。
end
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