第6話

「清水梨帆です。今日からお世話になります。どうぞよろしくお願いします」


 入ってきた女の子は噂通り物凄い美人さんだった。髪は澄んだ青色で後ろでまとめたポニーテール。胸は高校生にしては大きいな、思えるくらいのサイズで、身長も170くらいありそうである。


 それに気のせいかもしれないがどこかで見たことがある気がする。特徴的な髪の色をしているし一度見たら忘れなさそうなくらい美しい見た目をしているけど…スタイル抜群だしどこかでモデルとかやってるのかもしれないな。


 なにかの雑誌でちらっと見たことがあるのだろう。俺は推し以外の知らない女性には興味を持たないから覚えていなかったじゃなかろうか。

 うん、そうに違いない。


「おお!噂通り可愛いじゃないか明翔。やっぱいきなり告白した方がいいかな?」


 まず冷静に考えてあれだけの美人さんが俺たちみたいな陰キャに顔向けしてくれるとは思えない。 

 さっき桃井さんも言っていた通り、今いきなり告白なんてしたら引くに引かれてまだ1パーセントくらいあった可能性が限りなく0に近づく未来が見える。


「やめておいた方がいいな。まずは校内の案内でも買って出たらどうだ?」


 ああいう真面目そうな美人さんはガードが堅いと聞く。それならまずはどんな理由であれ関わってみるのが一番だよな。

 何枚板になっているか定かではないが、いつかガードを崩して甘々になってくれるに違いない…ラノベの読みすぎだろうか。


「なるほどな。お前が言うんだからそうしてみるぜ」


「ああ、頑張れよっ」


 …つーことで彼女は一体どこに座るのだろう。クラス内を見たところ浜田の隣が一つ空いているしそこに座る感じか?

 よかったな浜田。お前に神が味方してるぞ。


「それで清水さんの席は…」


 先生がちょうどいいタイミングで彼女の席に位置を考え出す。今がチャンスだぞ浜田。我先にと飛び出すんだ。ここで行けば彼女の印象に残る可能性もある


「先生おr…「桜井くんの隣を希望します」


 よくぞ言った浜田…って、え?今俺の名前を呼んだか?桜井ってこのクラスじゃ俺だけだよな?え、嘘だろ?


 クラス全員の視線が俺に集中しているのが顔を上げなくても伝わってくる。男子は嫉妬の視線。中には殺気っぽいのも混ざっている気がする。

 女子からは奇異の視線。女子ってそういう話題が大好物だからな。きっと変な妄想でもしているんだろう。残念ながら俺は陰キャであり、彼女のことも知らないのだがね。


 そして多くの視線の中で特に強い圧を感じる視線が二つ。まず一つは隣の席に座る浜田からの視線だ。どういうことだ、って思ってるんだろうな。俺も知らないんだけど。


 あともう一つが前の席からの視線。すなわち桃井さんからの視線である。彼女の視線だけ明らかに圧のレベルが違う。何を考えているのか俺でも分からない。

 今まで周りの視線を気にしながら生活してきたせいか、視線だけで何を考えているかわかるようになった俺でも彼女の今の気持ちだけは理解できない。


 …怒っているような雰囲気だ。俺が女子にモテるのが許せないのか?…あ、別にモテてるって思ってるわけじゃないからな。

 何もしてないと思うんだが。


「要望を聞いてあげたいのだけど、桜井さんの隣は空いていませんからね。浜田くんが隣の席にずれてくれるのなら可能でしょうけど」


 そうだよな、まるで彼女の要望通りの席になるみたいな感じになっているが世の中そんなに甘くない。

 浜田もそんな要望容認するほど心は広くない。


 ん、なんだ突然清水さんがこちらに向かって歩き出したぞ。


「お願いします。どうかこの席を譲ってもらうことはできないでしょうか?」


 清水さんは浜田の手を取ると上目遣いで浜田に懇願する。


 うん、あざといな。思ったよりも罪な女の子なのかもしれない。こんなのされたら童貞の俺たちは瞬殺されてしまう。浜田はもう気絶寸前といった感じだ。


 ターゲットが俺じゃなくて浜田で良かった。もし俺だったらすでに尊死しているに違いない。


「ふぁ、ふぁい(はい)。じぇひ~(ぜひー)」

 

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