第2話 婚姻

「……どういうことにございますか?」

「もう君は、僕がこのたびリンフォンどのを妻に迎えることを知っているな?」

「は、おそれながらうかがいました」

「後顧の憂いは徹底的に断ちたい。それが、リド家と僕の考えだ」

「は……」


 つまり、自分と言う男妻はさっぱりどこかにやりたい。ついでに、絶対にハオランが王政に返り咲けないように、羽をもぎとっておきたい。そういうことだな。


「なるほど」


 理解はしたが、こうも右に左にやられては、さすがに「男」としての矜持が傷つく。そうはいっても自分に許される答えは、承知しましたしかないのであるが……ため息を胸の奥ですりつぶした。

 念願かなって軍に入れると思ったのに、また男妻か。かなり落胆した。オウエンは、頷いたユーシェンに、「すまないな」と言った。


「しかし、君にとっても悪い話ではない。君のことだから、軍に行くつもりだったろう?」

「ご明察にございます」

「軍の男どもは気が荒い。君は格好の餌になると思う」


 まあ、そうなのかもしれないですけどね、さすがにそう言われると俺も男だから傷つきますよ。まして殿下って俺より二つも年下ですし。

 心の中で、愚痴り倒しながら、ユーシェンは頭を下げた。


「ご厚情いたみいります。お話、謹んでお受けいたします」

「ありがとう!」


 オウエンは顔を明るくした。心より安堵したという顔に、やはり好ましい気持ちがわいた。ずっと一緒にいたのだ。この方が嬉しいと自分も嬉しい。


「ユーシェン、十年もの間、僕に仕えてくれてありがとう。互いに、意に添わぬ婚姻だったにかかわらず、楽しく過ごせたのは君のおかげだ」


 オウエンは手を握った。剣と筆のタコだらけの手は、およそ王族らしからぬ。この手が好きで、報われさせてやりたいと思ってきたのも、事実だった。


「君は無二の友だ。それだけは忘れないでくれ」

「もったいなきお言葉にございます」


 王子にここまで言われて嬉しくない臣下は、まあいない。いないのだけど、僭越ながら少し切なかった。だって、友を邪魔で邪魔で仕方ない、呪われた兄上のところに送る人って、いますかね?

 まあいいけど。王命ですし。諦めて、ユーシェンは話を受け入れたのだった。


 

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