第39話 前哨戦
ある日
俺とベッカーがエラントデリアの街を歩いていると
「マリー!マリーじゃないか?」と呼ぶ声がした。
振り返ると、そこにいたのは。
「しばらくだな。元気だったか?」
複数の騎士を連れたナタリーがそこに立っていた。
「ナタリーさん!ひさしぶりですね。どうしてここに?」
「お前たちこそ、なぜここに居るのだ?」
エラントデリアの街に来た理由を話すと
「そう言う事だったのか?実は私たちもこの街から国王陛下へ直訴があった
その訴状を確認するためにこの街へ来たのだ。
騎士団分遣隊に行ってみたのだが、特段代わったところはないと感じたが」
彼女たちはこの街の実態をまだ見ていないようだ。
「ナタリーさん?どのくらいこの街には滞在する予定ですか?」
「1週間くらいの予定だが」
俺たちがこの街に来てからの出来事をナタリーに言うと、
「それは良くないことだな。だがお前たちだけで対応しきれないのではないか?
騎士団分遣隊に依頼してはどうだろう?」
俺は
「ナタリーさん、今日お時間ありますか?あなたとお話ししたいのですが」
彼女は騎士たちを見ながら、
「いいだろう。今夜ここへ来なさい」
と渡されたメモを見て「解りました。夜伺います」
その夜
俺はカトリーヌといっしょにナタリーが宿泊している宿へ向かった。
その途中、十字路の真ん中で薄汚い衣類を身にまとう乞食の様な男が座っている。
「おい!貴様!そこで何をしている?」
全身黒の鎧を着用した、あの例の女騎士だ。
「・・・・」
「何をしていると聞いている!聞こえないのか?」もう一人の女騎士が問う。
(あの男は何者だろう?なんか怪しい)
さらにもう一人の女騎士が連れて行こうと手をかけると男はいきなり
シャッ!
バサッ!
うっ・・・「何をする!」
男は隠し持っていた刃物でその女騎士を斬りつけた。
その素早い動きは単なる乞食とは思えないのだが、次の瞬間黒い鎧の女騎士が
グサッ・・・
その剣で男を突いた
ぐはっ
「殺しはせん。急所は外している。この男を連行しろ!」
二人の女騎士命じて男を連れて行った。
「カトリーヌ、見た?あの黒い鎧の女騎士」
「うん、見たわ。表情も変えず人を刺すなんて・・・怖いわ」
騒ぎを聞きつけた住民たちも、暗い表情のままその騒ぎを見ていた。
(レッドガーディアンズに歯向かうなんて無謀だな)
「こんばんは」
「おおマリー、カトリーヌも来たか。座れ」
部屋の椅子に腰を掛け、
「で、話と言うのはなんだ?」
「王国騎士団分遣隊へ行かれましたよね?おかしな様子はなかったですか?」
「無かったぞ。マリーたちは何を疑っているのだ?」
王国騎士団分遣隊が地元の悪徳商会と組んで住民を虐げていること
エルフたちを無理やり追い出して、その土地をリゾート地に変えていること
「その悪徳商会とはどこなのだ?」
「ギャレット商会です。街の中心部に大きな屋敷があったでしょう?」
「あ、ああ、あったな。あそこか?」
「ええ、そうです。それにこんなこともありました」
エラントデリアの郊外、アンピエル村であった浮浪者狩りのことだ。
「そんなことが許されているのか?この街では。
そのギャレット商会が騎士団分遣隊とつるんでいる?そういうことかマリー」
「そうです」
「王国騎士は国を守り、民を守るために存在するのだ。
一部の勢力と結託して私利私欲に走ることなど、言語道断。
王都騎士本部に報告せねばなるまい。この街の分遣隊はいずれ征伐対象だ!」
ナタリーはそういうと、手紙を書き始めた。
「私はこれから王国騎士団分遣隊で隊長に会ってくる」
「しかし今更あったところで・・・」
そこへ
「こちらにおられましたか?ナタリー・シェレルさま」
「おおそなたはシャルル殿では?」
「覚えて頂いていましたか!シャルル・クレマンにございます。
この街にお出でになるという噂を聞きまして、探しておりました」
「マリー、カトリーヌ。このシャルル殿は、この街の騎士団分遣隊の方だ」
そう聞いて、俺とカトリーヌはしょっとばかり緊張した。
「安心して下さい。私はあのギャレット商会とのつながりは有りませんから」
シャルルによれば、分遣隊の中にもギャレット商会のやり方に反感を持つ騎士が
複数いて、どうにかしてギャレット商会を潰すことを考えているのだという。
「だから私を信じてください。
あなたがたもギルドのお仕事としてこの街に来たんですよね?
であれば、私たちといっしょにギャレット商会を潰しましょう」
とシャルルは言うのだが・・・
「でもレッドガーディアンズといずれは対決しなければなりません。
勝ち目はありますか?あの連中を倒さないとギャレット商会は潰せませんよ」
「解っています。だからこそナタリーさまにお力を借りたいのです」
「承知した。
そのレッドガーディアンズとやらに会ってみようではないか。
戦わなければそれでよし。もし戦うことになっても我らが負けることは断じて
有り得ないのだから」
エラントデリアに滞在しているナタリーとその部下たちと
レッドガーディアンズとの対決が、偶発的に始まってしまったのだった。
第39話 完
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