第31話 街をキレイに!
ブラントは言った。
「この街は腐っています。一部の商人が市政を牛耳っています。
多くの住民はその連中の為に虐げられ、あるいは重税をかけられ、
払えなければ、家財道具を売り飛ばす、若い女子がいれば見境なく娼婦として
売り飛ばし、男の子の場合は自分たちの奴隷として強制的に働かせる、
酷い場合はその一家を斬殺することまでしています」
だが・・・
「この街には王国騎士団が駐屯しているのでは?」
「はい。確かに王国騎士団エラントデリア分遣隊がいます。
けれど分隊長はその商人に篭絡され、一般住民のためには働かず、
部下の騎士の一部には商人たちと結託して住民を迫害する事さえしています」
もう一人が
「だからこの街には正義と言うものが存在していません」
レナが言う。
「それなら国王陛下へ直訴できるのでは?
一般国民には国王、または地方総督への直訴の権利が認められているはず」
「それをしたいのですが、あの商人たちは騎士団に住民の監視を依頼しています
だから直訴しに王都へ向かう事も出来ず・・・」
ブラントは
「今回皆さんに来て頂いたことは大変ありがたいことです
ギルドへの依頼も、やっと監視の目をくぐって王都にある冒険者ギルド本部に
依頼をしてできたことなのです」
「今までにもいくつかの冒険者パーティやクランの方々が来られた事はあります
ですが仕事の依頼内容を聞いて、お断りされるばかりで」
「あなたも仕事の依頼内容を聞いて断られるのではと思っていますが
それならそれでも仕方ないと思います。ですがこの街の住民の様子を見てほしい
あなた方の目で実際見て、どう思われたか。お断りされるのであれば、
それも仕方ないのです。我々は頼むだけ、依頼を受ける受けないはあなた方の
判断にお任せします」
「解りました。一晩考えさせてください」
「そうですか。では今夜はこの上にある宿をお使いください。食事はこの食堂で
街の共同浴場を使って下さい。では良いご返事をお待ちしています」
俺たちはブラントの部下であるエリザベスに連れられて
「この南側の部屋を使って下さい。一部屋に二人泊まれますよ。では」
「カトリーヌはセシリアと、ケトラーはベッカーと、レナは私でよい?」
「OK!」
「荷物を置いたら食堂へ行こう」
夕食を取りながら
「みんなはどうする?」と聞く前にレナが意気込んで
「私は街の人たちの為にこの仕事を受けたい。ねぇそうでしょ?
一部の連中によって何の罪もない人たちがひどい目に遭っているのに
黙っている訳にもいかない。だからさ、ね!やろうよ!」
「みんなどう?レナがやるならあたしも」
全員今回の仕事を引き受けることに賛同した。
「じゃあ、明日からブラントや仲間の人たちの話を聞いて
街の様子を見てみよう。長い仕事になるかもしれないけど、いいね」
うなずくメンバー
夜
「マリー。寝た?」
「いや、どうしたの?」
「あたし、この街の人が可哀そうで可哀そうで仕方がないの」
「そうだね」
「いままで私、パパやママ、執事やメイド、使用人たちにチヤホヤされて
育ってきたの。ローゼンタール伯爵家の宝石とか言われて」
「・・・」
「正直、それに慣れてしまって、自分でもそう思うようになってたから
私のわがままで結局、ミシェルお姉さまをあんな形で喪うことに・・・」
「・・・」
「だから私ね、いままでのお姉さまにしてきたことや、それまでの生き方を
変えなきゃと思うようになったんだ」
「・・・で」
「周りの人たちに感謝する事なんてなかった。
感謝されることもなかった。だから・・・うーん何て言えばいいのかな
他人に親切に、自分でやれることは全て周りの人たちに少しでも恩返しを
したい。そう思って、マリーやみんなと行動することにしたの」
「そう」
おれは寝たふりをしながらレナの話を聞いていた。
「この街の人たちはあまりに可哀そう。あたしに出来ることがあれば
ぜひやってあげたい。そう思ってるんだけど、間違ってるかな?」
「いや。レナの考えは間違ってない。虐げられた人たちをすくうことも
私たち冒険者の仕事の一つだと、思ってる」
「それを聞いて安心したわ。明日から忙しくなりそうね!じゃあおやすみ」
翌朝。
朝食を取り、昨日の会議室へ入ると
「ああ、おはようございます。まもなくブラントさんたちが来ますよ」
エリザベスが会議室を片付けながら柔和な笑顔を見せている。
しばらくすると外で馬車が動き出す音が聞こえてくる。
そして各地へ移動する旅人や行商人たちが集まり、ざわめく待合室。
「やあ!おはようみなさん。よく眠れましたかな?」
ブラントが仲間と連れ立って入ってきた。
「ブラントさん、私たちの力でどこまでできるか分かりませんが、
お仕事、お受けします」
「そうですか!ありがとうございます。
その言葉を今か今かと待ちわびていました。本当にありがとう」
「ではその前に、この街の現状をもう一度、お話しいただけませんか?」
「解りました。ではサンティス。資料を皆さんにお見せして」
「かしこまりました」サンティスというのはこの馬車待合所の使用人らしい。
「こちらです」
俺たちの前に広げられたエラントデリアの街の地図。
「ここにあるのが、ギャレット商会の本部ともいうべき屋敷です」
中央広場にある教会の隣に広大な敷地を持つ屋敷が書かれているのだが
それがブラントいわく、この街の「がん細胞」だという。
「ここに居るギャレット商会のメンバーは20名ほどですが、
やつらは騎士分遣隊を顎で使っているし、街のチンピラを雇っているので
総勢100人を超える大所帯なのです」
100人!
もう少し少ないかと思っていた・・・
「チンピラたちは金で雇われているだけなので、ギャレット商会を潰せば
この連中は手を斬ると思われますが厄介なのは騎士分遣隊の方です」
まぁ現世でもチンピラなんていうのは金の切れ目が縁の切れ目。
そんな存在でも軽視はできない。
「ただ騎士たちの中にも、表には出さないけれど反感を持っている者も
いる様です。この人たちを上手く使えないかと考えています」
騎士とはいえ、そんな連中の片棒を担ぐようなやつは騎士とは言えないのだが。
「あすから私たちも街の様子を見て回りたいと思います」
「そうですね。では私たちの仲間もいっしょに回ったほうがいいかと思いますが」
あまり大人数では目につきやすい。
「それは私たちが対応しますから、心配はご無用です」
「解りました。ではくれぐれも気を付けて」
いったん部屋へ戻り、俺はメンバーを集めて打ち合わせを行うことにした。
第31話 完
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