第16話 ミシェルの意外な秘密

レオポルド・ガウターというS級騎士から

レナ・ローゼンタールさま16歳の護衛任務を依頼された俺たち。


「ミシェルという子がいるね?」

「はい。ただ今日は・・・」

「うん、まぁ今日のところはいいのだが・・・

 じゃあ、護衛任務の詳細を説明しておくね。エドワード頼むよ」

とガウターの横に立っていた若い執事が説明を始めた。

「私はガウターさまの執事、エドワード・リードと申します。

 ではこちらの資料をご覧ください」と渡されたシートに書かれた文字は

俺にとってはなにやら象形文字のようにしか見えない。

だが隣に座っているカトリーヌをはじめ、異世界の人たちはもちろん、

その文字が何を現しているかはわかっている。当然ちゃあ当然。


「レナ・ローゼンタールさまは音楽学校に通っていると聞きましたが

 この資料では騎士学校となっています。これは?」

「ええ、音楽学校には昨年まで通っておりまして、卒業されたのち、

 騎士学校へ進みたいというので、進学されております」

説明するエドワードのとなりでガウターは柔和な笑顔で俺たち二人を見ている。


「なるほど分りました。

 では私たちは、お屋敷から学校までの往復と学内での護衛を行えば

 よろしいですね」

「はい。その通りですが、学校内では基本的には衛兵がおります故、

 お嬢様が授業を受けている時間は待機していただきます」

待機?ずっと?それはヒマだなぁ・・・


「もちろん学校外へ出て頂いても構いませんが衛兵と校門での手続きが

 必要です。食事は学校内の生徒食堂でとっていただけます」

基本的には行きかえりの保護を行うことのみらしい。

まぁそれでそこそこの報酬がもらえるのなら、なかなかにオイシイ仕事かな?


「では私は一週間後に出発する予定なので、その前に全員で顔合わせをしましょう

 それでいいですかな?エドワード、顔合わせの準備を頼むよ」

「かしこまりました。ガウターさま」

そしてレオポルド・ガウターと執事のエドワード・リードは去っていった。


「ではマリーさん、カトリーヌさん、執事の方から改めて連絡がありますから

 それまでにミシェルさんを。お願いしますね」

と言ってキャロラインは受付事務に戻っていった。


「どうしよう?ねぇマリー」

どうしようと言ったって、どうするか・・・


それからもミシェルは来なかった。



数日後、受付嬢のテレジアから

「では明日、この間ガウターさまとお会いした会議室に来てください」と言われた。


そしてその日の朝。

俺はいつも通りギルド事務所へ向かって大通りを横切ろうとしたときに

「マリー」

声をかけてきたのはミシェルだった。


「ミシェル!」

「ごめんねマリー。あんなことを言って。

 あれから頭冷やして考えたの。やっぱりあたしが悪かった。許してくれる?」

「そんなこと、もういいよ。私は何とも思っていないよ。今まで通り一緒に!ねっ!」

「ありがとう・・・マリー」

「いいよいいよ。それより事務所行くでしょ?一緒に行こう」

「うん」



「あら!ミシェル!どう?もう機嫌治った?」

「うん、カトリーヌにも心配かけてごめんね」

「もうあんなこと言っちゃダメだよ。あたしたちはずっと仲間なんだからね」


「みなさん、ではお時間ですのでこちらへ?」

「どういうこと?マリー」

「あの護衛任務のことで今日ガウターさんと最終打ち合わせがあるのよ」

顔合わせの事はまだ言っていなかったからミシェルは不安げな様子。


テレジアに連れられて会議室へ。

そこにはS級騎士のガウターと執事のエドワード。


そして・・・

「あら?ミシェルお姉さまではありませんか?お久しゅうございますねぇ」

「レナ・・・」

「私より剣術や槍術で劣る、お姉さまが冒険者ですか?何かの冗談でしょうか?

 ふふふふ」


「ミシェル。どういうこと?」

「・・・・」

「ミシェル?何かあったのか?」

さすがに俺も気になって少し強い口調で聞いてみた。

彼女の話は初めて聞くことばかり、以前からコンビを組んでいたカトリーヌでさえ

知らないことだという。

ミシェルの本名は、ミシェル・ローゼンタールであり、レナとは異母姉妹だ。

「そうよ。ミシェルお姉さまのお母さまは、お父様の下級メイドだったのよ」

シュテファン・ローゼンタール伯爵を父に持つミシェルとレナ。

でもミシェルは若き伯爵が”若気の至り”で関係を持った時に出来た子であり、

レナは今の伯爵の正妻であるクラウディアの子。だから幼少期から二人の間には

微妙な差が出来ていて、レナはなんでもやらせてもらっていたが、ミシェルは

そうではなかった。

二人とも、子供のころから伯爵の考えで騎士としての剣術を教えられたけれど

「あたしはレナに敵わなかった・・・彼女はそのころから剣術では同じ年齢の子

 男子であっても容赦なく倒すことが出来るほどの腕前だったから・・・」


それ以降二人の差はますます開き、18歳になったミシェルは伯爵家を出て行った。

「ママもすでにこの世になかったしね。あたしは一人ぽっち。伯爵さまも

 クラウディアさまも、あたしを相手にしてくれなくなったんだ」


そしてミシェルはカトリーヌと出会い、俺と行動を共にすることになったのだ。



「ミシェルお姉さまに守っていただけるなんて、光栄なことですわ!

 わたくしをしっかり守ってくださいませね。無能なお姉さま!」

「・・・・」

ミシェルはうつむき、レナお嬢さまの言葉に耐えているように俺には見えた。



第16話 完







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