5-8
はじめ何の反応も見せなかった虎ちゃんが…フッと乾いた笑みを漏らした。
「……俺を助ける?」
――――刹那。
ゴンッ!!!!と鈍い音がして顔面を横切った虎ちゃんの拳に「ひっ…!!」と男が小さく悲鳴を上げた。
「ざけんじゃねぇよ」
……さっきなんかとは比べものにならない殺気。
言葉一つ一つは静かなのに。その中に確かな憤怒を感じる。
………恐い……。
思わず後退りしたアタシに虎ちゃんはジリジリと詰めてくる。
「誰のせいでこうなったと思ってんの?」
「―――え?」
誰のせい、って……。
近付いて来る足を止めずに虎ちゃんは続ける。
「ママゴトばっか言いやがって。どうせ捨てんだろ?」
「捨てる……?」
「てめえもアイツらみたく俺を捨てんだろ?」
虎ちゃんの口から出た"アイツら"。それが誰を指しているのかは分かった。
でもどうして、虎ちゃんを捨てた虎ちゃんの親とアタシが重なっているの――――?
迫って来る虎ちゃんは憎しみを込めた表情でアタシを睨み付けてくる。
「消えるくらいなら最初から現れんじゃねぇよ」
「と…らちゃん…」
「もう二度と俺の前に姿見せんな」
「っ!」
「もし次現れたら――」
ここで言葉を止めた虎ちゃんがアタシの胸倉を掴んで発したのは
「女関係なくブッ殺す」
アタシを傷付けるはずの言葉。
――確かに、虎ちゃんの口はそう言ったのに。
その瞳を間近で見たとき、その言葉は悲鳴にしか聞こえなかった。
虎ちゃんの透き通った瞳が………寂しそうに揺らいでいたから。
本当に傷付けているのは―――――誰?
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