5-5

取り囲む野次馬らに一言そう吐いて道を開ける虎ちゃん。


「虎っ……待て!!!!」


その背中を追いかけようとした翼を誰かの手が止める。


「…夕微…!?」


今まで黙って様子を見ていた夕微が翼の腕を掴んでいた。


「龍は?」

「屋上……だと思う。さっき呼びに行かせたけど…」

「…そうか」

「それより虎を……っなんで早く止めねえんだよ!!」


翼の訴えに教室を出て行く虎ちゃんの背中をただ黙って見る夕微。そしてそのまま視線を……無言で立ち尽くしたままの、いるかいないかも分からないアタシへと移す。


「歩。お前が行け」

「………え?」


言い間違いでも冗談でもなく本気で言ってる夕微の表情。どうして…って顔を浮かべるアタシと翼を見下ろしながら夕微は続ける。


「俺も龍もあいつを止めることは出来る。けどそれは気絶させるしかねえ」

「……………」

「それじゃあ何の解決にもなんねえことは…わかんだろ?」

「……………」

「この前みたく虎自身が自力で止めなきゃ意味がねえ」

「……………」

「その手助けがしてやれるのは……お前だけだろ。歩」

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