第17話学内交流戦6(勝利の先のもの)
「これは失礼。僕はカルネシア魔法学園3年生、セシル・アノワード・ソラティアと言えば分かるはずさ!!」
この男は決めポーズを取り偉そうに言い放つ。それに対してリンの方は本当に驚いているようだった。
「え、まさかそんな」
「は、はぁ」
こんなテンションでこられて俺は拍子抜けした気分だった。先ほどのような異様な雰囲気はもう一切感じられない。というか、今のテンションに全てかき消されたのだ。
「あ、あれ?君は思った反応と違うな。僕だよ僕、セシル・アノワード・ソラティアだよ?」
「いやもう聞いたしそもそもお前のことこっちは知らないんだけど」
そう俺が答えると急にその男は顔面蒼白になり、膝から崩れ落ちた。
「嘘だ…この学園で僕が知られていないなんて…」
慌てたようにリンが俺に対して言い放つ。
「ちょ、ちょっと刹那なんてこというのよ!」
「え?」
そしてリンが衝撃の一言を口にする。
「この人は学園では無権の天使と呼ばれてて前回の交流戦の優勝者で、この国の王子なのよ!」
「な、なんだって!?」
俺が遅れて驚いているのを無視して、さっきの試合ばりの素早い動きと凄まじい力で俺の頭を地面に叩きつけるように落とした。
「申し訳ありませんセシル殿下。こいつはまだ学園に来たばかりでまだほとんど何も知らないようなものでして」
そうリンが謝罪を行うとさっきまで崩れ落ちていたセシル・アノワード・ソラティアがようやく正気を取り戻し始めて立ち上がった。
「い、良いのですよ。これから僕の名前だけでも今回知ってくれたのならそれで…」
そんなところにリンは質問を投げかける。
「それで殿下はなぜ私たちの後をつけていたのですか?」
すると目的を思い出したのか。さっきのようなテンションに戻った。
「おっと、そうだったね。まずはリーン・カルネシオンくん前回不戦敗から急にあのアッシュホールに勝ってしまうとは恐れ入ったよ」
それに対してリンは深くお辞儀をする。
「あ、ありがとうございます!!」
そしてセシルは次に俺の方を見やり、続けた。
「君が刹那くんだよね」
「お、おうそうだ…ですけど」
王子と知って話し方がぎこちなくなる俺を見てセシルは軽く笑っていた。
「そんなにかしこまらなくていいよ。ここじゃ王子なんてただの肩書にすぎないんだし君は僕をただの先輩だと思うだけでいいよ」
「そうか、分かったよ先輩」
そしてセシル先輩が「それよりも」と続ける。
「さっきの君の魔力量はとてつもなかったね。1年生であの出力をコントロールできるなんて、将来が有望だよ」
そう言いながらどんどん俺の至近距離まで迫ってくる。良く見ると目が星野ように輝いていた。そしてセシル先輩は俺が下がってもその足を止めない。
「しかも相手も魔法を純粋な魔力で弾くどころか掻き消すなんて、相当の魔力量の差がないとそうそうできるもんじゃない。しかもアッシュ君は魔力量なら1年生の中でもトップクラスであの戦法で上級生にも勝てるほどの実力者なのにその戦法を真正面から攻略するなんて、しかも君の秘めているものはおそらくそれとは比べものにならないほど強大に見える君は天才だよ!!」
「あ、ありがとうな」
もう早口が過ぎてもう聞く気にすらなれないんだがこいつどうやって止めよう。
そんなことに頭を使っているとそこにリンが割って入った。
「セシル殿下、その事をわざわざ言うために来たのですか?それとも他に何かもっと大事なことが?」
リンがその問いを投げかけるとセシル先輩はさっきまでとは違う真剣な表情と声色でその言葉を放った。
「では話そう。刹那くん、僕と組まないか?」
セシル先輩はそんな事を言い放った。
「んなッ!?」
その言葉にリンは抗議の意思を示す。
「な、なんで殿下のような肩がこんなただの平民なんかと組むんですか殿下ならもっとふさわしい人がいるはずです!」
それにセシル先輩は即答で答える。
「僕は彼の魔力に惹かれたんだよ。僕と組めば刹那くん、君は誰よりも輝ける。神にすら手が届くかもしれない。魔法を使うことができない現在の彼女より僕の方が君の役に立つと思うんだ」
そう熱弁したかと思えばセシル先輩は俺に手を差し出してきた。その雰囲気は俺のすべてを受け入れようというような友好でかつそこに何か手であるように見えた。俺はその勧誘にはっきりと答える。
「それは無理な相談だ」
「それは何故かな?」
「俺はリンを守ると決めた。だから俺はリンのためだけに戦う。それは死ぬまで絶対に変える気はない」
俺がそう言い放つとセシル先輩一瞬顔を歪めた。が、またすぐにそれは戻った。
「そうか、リーン・カルネシオンくん、君はいいパートナーを手に入れたようだね」
そう言ってセシル先輩は闘技場の方へ歩き始める。それを見て俺とリンも帰路につこうとしたとき最後にセシル先輩は言った。
「刹那くん、君には必ず僕が必要になる。必ずね」
その言葉に俺は反射的にセシル先輩の方に目を向けたがもうすでにその影は消えていた。
(一体なんだったんだあいつ)
翌日、各会場で試合が始まる前は生徒は皆教室でHRをすることとなっているらしい。そのため俺とリンはいつもの教室に足を踏み入れた。
「うぉなんだ!?」
「えちょっと何!?」
クラスの全員が待ち構えていたかのように一斉に俺とリンが入ってきた場所に押し寄せてきた。そして先頭にいた女子生徒と男子生徒が話し出した。
「カルネシオンさん天童寺さん昨日はほんとにすごかったよ!」
「まさかあのアッシュホールに勝つなんて、2人はうちのクラスの誇りだ!次の試合も絶対勝ってくれよ!」
そう、俺とリンに押し寄せたのはクラス全員からの賛辞だったのだ。
「天童寺くんもすごかったけどカルネシオンさんの剣術とてもかっこよかった」
「え?私?」
自分にそんな言葉が書けられるとは思わなかったのか、少し声が裏がえりながら聞き返す。
「そうだよ。あの大量の召喚獣を何でもないような顔で淡々と倒していくんだもんかっこよすぎるよほんとに」
俺たちが思っていた以上にあの一戦は皆に大きく影響を与えたらしい。そして大絶賛されれている相棒を見るとその瞳は潤んでいた。
「えっおいリン大丈夫か!?」
「へ?」
そう言ってリンは俺の方に振り向くとやはりその右頬には滴が流れていた。リンはそれを慌てて拭おうとしていた。
「い、いやこれはその、ちがくて」
だがその滴はリンの頬を濡らし続ける。だがこれは当然と言う他ないだろう。これらの賛辞は、学園の恥と言われ周囲から蔑視の目を向け続けられたリンにとっては初めて、多くの他者に認められ、受け入れられた瞬間なのだから。
短い間だが、俺は見てきた。今までのリーン・カルネシオンという少女を。だからこそこいつの苦しみを、こいつの夢を俺は知ってる。だから俺はリンにはこれだけで十分だと思ったから、この言葉を告げる。
「リン」
「ぅんどうしたのよ?」
「お前はあの日までのお前に証明したんだよ。お前は、独りじゃないってな」
「っ!?」
ここがおそらく俺たちの新たなスタートなんだ。だって俺とリンには、これだけの支えがあることを今知ることができたんだから。
俺がそう言うとリンは俯き、俺の胸へと頭を埋める。
「お、おい大丈夫か」
リンは頷くだけしかしなかった。いやそれしか今はできなかったのだろう。
そして落ち着いたのか顔を上げ、皆の方へ向き直って言った。
「皆、刹那、ありがとう!」
そう言いながら溢れ出した笑顔が俺には、初めて会ったあの日の何倍も強く、そして何倍も美しく感じた―――――
あとがき
どうもこんにちは今回もリバース・ワールズ・アカデミーを読んでくださりありがとうございます!今回はようやくリンが皆に認められることができました。今後は関わってくれる人が増えてくれるでしょう!今回の話が面白いと感じてくれましたらフォローやレビューをお願いします。ではまた次の話お会いしましょう。
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