第63話 諸国遍歴編~「書物の神」セシャティーナ

源世種は神が作りし原初の人達だ。今に生きる俺達はその子孫という事になる。ヒューマンの祖であるエルダーヒューマン、エルフの祖であるエルダーエルフ、ドワーフの祖であるエルダードワーフ、獣人の祖であるエルダービーストなんかが有名だよね。



言語体系も今とは違うので、権威ある研究者によって少しずつ翻訳されているようだが、遅々として進まぬ様子からまだまだ先は長そうだ。

ではどのようにして俺達が読み解いたのか?



それは我が盟友であるモルモル(亜神モルベスト=ルミス)が繋いだ縁がきっかけとなった。ある時「書物の神」であるセシャティーナ様(以下セティ)が汚腐会に現れたのだ。

の女神は学問の神としても知られ、古今東西あらゆる書物、学術に通じている。


モルモルの数少ない話の合う神友しんゆうとして、本の貸し借りをする間柄だ。

ある時元の俺の世界の古典である「源氏物語」を貸したところ、すっかりハマってしまったそうだ。そのため日本に興味を持ったセティ様は俺に対する興味を募らせていたらしい。



汚腐会に現れたセティ様がナタリンと意気投合したのは自然の流れだ。

趣味を同じくする同好の士だからね。

ナタリンが育て上げた男版若紫わかむらさきを目の前にして鼻息を荒くしていたのはすぐにでも忘れたい思い出だ。

荒ぶる二人の女達にあやうくおつまみにされるところであった。

モルモルも見てないでマブダチを助けろってんだよ。



いたく俺達の事を気に入ってくれたようで、自分をまつる教会がある町では大いに頼ってくれと言ってくれた。そして、教会を預かる司祭さんに神託で君らの事を伝えておくからと有無を言わさず俺を使徒とした・・・。

重複しても大丈夫なのかとモルモルに確認したら、人数の制限はないから全然おっけ~との事。随分軽い返事だなと呆れた次第だ。

セティ様は上級神だし、学問の神でもあるため、教会の数も多いらしいのだ。慣れぬ土地を旅する者としてはメリットの方が大きいだろう。



新たに「書物の神」セシャティーナの使徒となった俺は以下の加護を授けられた。


「集書究学の徒」:自らに益する書物を引きつけ解明する力



この加護をもらった当初「役に立ちそうな加護をもらってラッキー」くらいにしか考えてなかったが、後に源世文字までなんとなく理解できる事がわかると、思わぬ拾いものだったと感謝した。

おかげで転換魔法体系原書をなんなく解読する事ができたのだ。



人脈こそ人生の宝だと思ってきたが、そこに神脈も付け加える事としよう。

さりげなく出したお茶菓子(甘いやつね)を大層気に入ってくれたので、セティ様の教会に立ち寄る際はせめてもの感謝の気持ちに忘れず奉納する事としよう。


だが、こうして汚腐会や訪問先で甘味を提供した事がやがて女神による「懇神会こんしんかい」へと発展する事になるとは・・・世の中何が幸いするかわからないもんだな。ただ、という俺の直観が間違っていなかった事が改めて証明されのだった。

俺を翻弄したあのクソ女神もいつか見つけ出せるかもしれない・・淡い期待を持つようになった。



これに関連してもう一つ話しておくことがある。

能力補正を行う神器マジックアイテムは元となる魔道具をドグマ氏が作り、モルモルに授けられた【夢想神の加護】 によって俺が神力を注ぎ込む。

だが、転換魔法体系原書の解読により略式の魔法式を刻むことで魔道具士単独で作れるようになったのだ。これによってどこにいても神器マジックアイテムの作成が可能となった。


これに合わせて「夢神むしんシリーズ」と銘打って生産量を増やし、信者になってくれる人々にどんどん手渡すことにした。

当然旅を共にする仲間たちは全員指輪やらブレスレッドやらを身に着けている。

もう少し仲良くなったらタナスさんや暁に眠るダイヤの皆さんにも話してみよう。



その後コンテナハウスで宿泊する俺達をうらやましそうに眺めるタナスさん一行を尻目に、俺達は快適な夜を過ごした。

が確定した以上は通用しないのだ。おねだりされるとついほだされそうになる俺は断固とした態度を取り続けよう。



翌朝コンテナハウスから外に出ると既に暁に眠るダイヤの皆さんは活動を開始していた。道具の手入れをしている人もあらば、体操をして体を温めている人もいた。

ほわほわぼんやりしている人もいたけど、衣装の後ろ前反対だと誰も指摘しないのだろうか?どうせ日常ありふれた光景なのだろうと高をくくり

「黙ってれば美人なのになぁ、黙ってれば」と呟く俺だった。


ただ、気付かずそのまま戦闘にでもなったら大変だからさすがにそろそろ教えてあげようよ・・・。



今朝は昨日の晩作りすぎた燻製肉で朝食を済ませ、いつもより早く出発する事とした。旅の道連れが増え、単純に戦力が二倍になったのだが、いかんせん戦闘は数でするものではない。それぞれの立ち回り方を擦り合わせるために、今日はいつもよりゆっくり進む予定だ。



ではいっちょ魔物どもを蹴散らしてやるか。

そうして俺の腕にしがみついていた希が巨大化した時、大きな悲鳴が響き渡ったのだ。あれ?希の事話してなかったっけ?



お~い、クラウさん逃げないで~。斥候だけあって危険察知能力が半端ない。

神に祈りをささげるのはやめてよ・・・タナスさん。命の危険は迫ってませんよ?

ほらアイファさん剣先を希に向けないの!冒険者としてはいい反応なんだけど、かわいい希に対して何て態度をとるんだ!

ブレイネさん、死んだふりしてもこの場合は不正解だよ?クじゃなくクだからね!

ロエルさんは・・・放っておこう。


連携云々うんぬんの前に希とその眷属けんぞく達を紹介するのが先だったようだ・・・。

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