第50話 奴隷解放編~男前なご令嬢
翌朝昨日の残りと支給された携行食で朝食を済ませると、朝のミーティングを始めた。目の下にクマがある俺の顔を見てエマお嬢は
実習二日目は二手に分かれての行動となった。何故ならTP10を攻略する上でカギとなる宝の地図には、TP3とTP2の中間辺りに宝の在りかが示されていたからだ。
そこで、その宝を回収するために別動隊を出し、それ以外は当初の予定通りTP8へと向かう事にしたのだ。ちなみにTP10のお題は以下の通りだ。
【探している宝は見つかりましたか?ヒントはもう与えたはずです。さあここに提出してください。】
昨日のクッキーの件で仲良くなった別のパーティと情報交換した結果、宝の在りかは手にした地図によって異なるようだ。この実習では終始役割分担が重要みたいだね。
別動隊にはアリッサとコッコの新コンビが選ばれた。どうも影が薄い一人と一羽の間に密かな友情が芽生えたようで・・・強烈な個性を持つ令嬢の陰にかすんでいる感は
開始の合図とともに他の参加者たちとは真反対に動き出す。
巨大化した希を見てまだ怖がる人もいたが、多くは慣れたようだ。
希ちゃ~んまたね~なんて黄色い声に混じって野太い声も聞こえたなぁ。
希にとって崖を登るよりも崖を降りる方が遥かに簡単だ。
丈夫な糸を垂らせばあっという間に崖下まで下りられる。
一度に全員は無理だけど器用に糸を上り下りすれば全員下ろすのに大した時間はかからなかった。
TP8の課題は次の通り
【この湖に生息する魚を捕えなさい。糸、針は用意しました。それ以外は何を利用しようとも許しましょう。】
当然準備は万端だ。釣り竿代わりの手ごろな木の棒と、餌になりそうなウネウネ
した虫も用意してある。糸は希がビューっと出してくれたしね。女性陣には触れないだろうからオイラがサクっと中型サイズを釣り上げて任務完了。
希の糸網を使えば秒で終わったんだろうけど、味気ない事この上ないからね。
では次のTP9だ。
【目の前に並べられた桶の中を水で満たしなさい。満たされた桶は運び去られ、その度に残りの桶は少なくなる。ただでさえ、少なかったのに。】
この課題はこれと言って難しいところはない。敢えて挙げるなら、桶の数が参加パーティー数より1割ほど少ないという事だけだ。
手つかずの大量の桶のうち、どれに水を注ごうかな?先着の優越感を味わいつつこのお題も無事にクリアだ。
早い物勝ちの課題を終えたところで、もう急ぐ必要は
後はTP10の前でアリッサと落ち合うだけだ。
最後のタスクポイントに進む途中で先頭集団らしきパーティーが視界に現れた。
5人組のパーティー編成に付き添いの上級生と従者を合わせて15名からなる大所帯。
お互い顔の見える距離に近づいた頃突然笑い声が上がった。
その理由は一人前に出てこちらに話しかけてきた小娘の姿を見て理解した。
「あら、あなたたち何故そちらから現れたの?私たちが全参加者の先陣を切ってやってきたというのにおかしなこともあったものね。何か不正でもしてたんじゃなくて?」
「変ないいがかりは止めてもらえる?私たちはあなた達と逆を進んできただけだわ。こちらは崖を降りられますからね」
「フン、その汚らわしい蜘蛛の化け物ね。こんな魔物を連れてくるなんで頭がおかしいのかしら?この件はお父様に言って参加者を危険に
「そこのあなた、大人しく聞いておりましたら私の希の事を化け物呼ばわりなさるとは聞き捨てなりませんわね。お父様に何を仰いますって?」
「えっレイチェル様。何故このような場所に・・・。あなた様のような方が下級生の行事に参加されるなんて聞いておりませんでしたが」
「そんな事はどうでもよろしくてよ。どんな告げ口をなさろうとしているのかをお聞きしております」
「そ、それは、その化け・・・蜘蛛の魔物は危険かと・・そう思ったものですから・・・。」
「こんなに愛らしい希が危険だなんてあなたの目は節穴ですの?もしあなたがそのような事で騒ぐと仰いますのなら、私もお父様にお話ししなければなりませんわね」
「いえ、そんなつもりは・・。レイチェル様がご一緒とは知らなかったものですから、悪意はなかったのです。」
「あなたさきほどと随分口調が変わりますのね。エマに話しかけた時の
そうこうしているうちに後続のパーティー達が続々と集まって来た。
昨日情報交換をした人たちの顔も見える。
さっきまでニヤニヤして感じの悪かったいじめグループの連中も落ち着きがなくたってきてるぞ。
「レイチェル様お答してもいいのですが、公衆の面前で話すようなことではございません」
「ほう、人前では話せないような内容という事なのですね?」
「はいそうです」
俺の返答を聞き、顎に手を当てながらしばし考え込むご令嬢。
「では聞き方を変えます。通常5人で参加する本実習にたった3人で参加していた事と、今いいがかりをつけているその女生徒には何か関りがございますの?」
「はい。」
その返事を聞いたレイチェル様の表情がサッと変わった。
「そこのあなた、エマやウルマ、そして今はここにおりませんが、アリッサを含めた3人は私の大切な友人とだという事を肝に命じなさい。もし彼女たちが今後困るようなことがあったら、私が承知いたしません」
やばっレイチェル様かっけぇ~。ただの食いしん坊我がまま令嬢などと思っていたオイラがごめんなさいだよ。
こうしてアルマ・トルマ兄弟、それとナターシャさんや会頭まで巻き込んでやってきたオイラ達の一か月に渡る努力は、ご令嬢の一言に到底かなわない事を思い知ったのだ。もちろん無駄な事をしたなどとは思わないが、思わぬところから助け船が入ることになるなんて普通想像もつかないよね。
こうしてウルマっちをきっかけとしたいじめ問題は解決した。
膝から崩れ落ちた小娘を今や取り巻きですら慰めようとしない。
TP10では既にアリッサが俺達の到着を待っていた。
見事宝を見つけ出したアリッサと共にお宝を提出。無事最後の課題をクリアしたのだ。当然全参加者中トップ、しかも最少人数、全課題・最短クリアのおまけつき。
「ずるいよ~。私も見たかった」
ご令嬢による痛快解決シーンを見逃したアリッサから不満の声が上がったが、
不運だったねと諦めてもらった。
ただ最後にみんなで肩を抱き合って涙を流していたな。
危うくオイラまでもらい泣きするところだったぜ。
お宝探しではこっこも大活躍だったようなので、希も含めてたっぷりご褒美をあげないとね。こうして課外実習は大団円を迎えたのだった。
「ラング、またお目にかかりましょう。あなた達3人もね!」
そう告げて去っていったご令嬢の背中に向けて俺はお辞儀した。
お嬢達を助けてくれてありがとうございました。心のうちでそう呟くのだった
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