第10話
雛の唇が触れる。
暗闇だからか、全ての意識が唇に集中してしまう。
身体に当たる柔らかさとは別に、ぬめりを帯びた唇は段々と口の中へと侵入してくる。どちらの唾液なのかもわからない。舌を絡ませながら交換される粘液。溢れ出る唾液は、くちゅくちゅと音を立てながら混ぜ合わされて口内を満たしていく。お互いから溢れ出た唾液は、口内に留まらず身体に垂れてくる。
「ん……」
どちらともなく、吐息が漏れる。
もしも渚に腕を固められてなければ、貪るように雛を求めていたかもしれない。ここへきて、渚がストッパーの役割をしているのかも。一人だったら理性が保てていないよ、たぶん……。
耳元で渚が囁いてくる。
「和也、だらしないよ……? 攻められるだけじゃなくて、もっと攻めないと……?」
「んー……」
動けない状態にされて、口まで塞がれてしまって。今の僕は、なにもできずにただされるがままだけれども。こんな状況で、どうしろというのか。僕はもはや、この二人の玩具になるしかないのかもしれないというのに。
ふいに、雛は唇を離す。
「妾、こんなことしたの、初めてじゃ……。もしかすると、もう満足してきているのかもしれぬ……」
そういうと、雛はゆっくりと僕に抱きついてくる。俯いてしまって表情は見えないのだが、少しだけ穏やかな声になっているのかもしれない。
僕の心臓だけが、うるさく鳴っている。
「まだよ。満足するには、まだ早いわっ! もっとやるのっ!」
いや……、本人が「満足してきてる」って言っているのだけれども……。
それでも、まだまだ満足させようとするなんて、渚が全ての現況な気がするぞ……。
「それじゃあ、交代ね。雛は、和也を抑えていて?」
「わかったのじゃ。妾も一回休憩して、興奮を抑えてみるのじゃ」
抱きついている雛の呼吸がわかる。ゆっくりと深呼吸をしたかと思うと、一度身体を離して僕の後ろへと回り込んでくる。そして、渚と位置を変えて雛が僕のことを羽交い絞めにする。
もちろん、漏れなく柔らかいふくらみがクッション代わりに背中にやってくる。
「私も和也とイチャイチャしたいからねっ!」
渚の声が前から聞こえる。
ゆっくりと抱きついてきたかと思うと、今度は渚の顔が目の前にやってきた。
「……あのね、和也。私ここに来る前にね、エナジードリンク飲んできちゃったの。そしたら、なんだか興奮しちゃってね? いま、ムラムラしてるの」
「……あれ? それって、順番間違えちゃったんですかね? 雛を満足させてからって言ってたのに」
「もう待てないのっ!」
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