いつか、誰もが恐れる最恐の悪党に!~ゲームに登場しないモブに転生して~
花風英孤。
『転生したみたい』
あぁ、痛い、苦しい。どうして僕ばっかり。辛い辛い辛い!なんで……
なーんて
本当は分かってるんだろう?全部僕のせいだって。悪いのはいつだって僕!仕方ない、仕方ないって、そうやって妥協して、僕が一体何をした!
もういやだ!いわれの無い罪で責め立てられるのも、馬鹿にされるのも、もう散々だ!
────じゃあ、いっそのこと……本当に悪になってなろうか?
もし…もし来世があるなら。皆が言うような存在に。周囲を悲壮な顔をさせる最低最悪の悪党に!
皆、みーんな。僕が『曇らせ』てやる。そしたら、それでお仕舞いだ。
成ってやるさ!最低最悪の悪党ってやつに。
* * * * *
ヌメヌメした液体で、僕は目を覚ました。ポットの様なもののなかにいるのだろうか?意識が覚醒していくと同時に、体に違和感を覚える……体が小さい?そもそも、自殺したというのに目を覚ました、というのが可笑しいのだ。
つまりは……転生?いや、そうしか考えられない。てか、液体の中で息をすることができている。それも可笑しいが、今は転生のほうが不思議だ。
死ぬ直前、来世では、最低最悪の悪党になるって、そう誓った。まさか本当に機会がやってくるとは思わなかったが、チャンスがあるなら、それはもう……なるしかないだろ?
『最低最悪の悪党』ってやつに、ね。
ガチャン と音が鳴る。そんな事を考えている時に、真っ白の服によく分からないマスクの様なものを着けた職員がポットを開けたのだ。まぶしい、そう感じながら僕はポットの周りを少しだけ見渡す。首が動かしずらいな。
なっ!……これは!
沢山のポットがそこにはあった。僕のような赤子が他にも居るようで、職員?がポットにかかれた番号を読んでいた。数はざっと百近い。
「一番魔力総量C 失敗 二番魔力総量B 失敗 三番魔力総量A 成功 四番……………」
といった感じでだ。失敗と呼ばれた赤子は別の場所に運ばれていく。かなり待つと、とうとう、僕の番がやって来た。
「七十七番──これは!魔力総量はS ?!成功作だ!」
よかった。これで失敗とか言われたら、始まったばかりの異世界ライフが終わるところだった。その後も番号は呼ばれ続けたがSは僕だけのようだった。てか、俺は七十七番なのか。
「百番魔力総量A 成功。これで実験は終わりだ!成功を移動させろ!」
職員がそう言うと、対照的な真っ黒の衣装を身に纏った人たちが颯爽と現れ、僕たち成功と呼ばれた者を運んで行く。振動はほとんどなく、快適であった。
さて、次なる部屋に着いた僕たちに行われたのは、薬品の投与だった。紫色の変な液体を体に注入されたりするのは、さすがに忌避感があったが我慢するしかなかった。
真っ白の内装に、ベビー用品はどう見ても不釣り合いで、不恰好だったから少し面白かった。
それからというもの、僕たちはロボットによって育てられた。無味乾燥の液体を毎日のように食べさせられ、謎の薬を飲ませられる日々。その過程で百人いた赤子のうち三人が死んだ。
病気だったのか、ストレスだったのかは分からない、がその中に僕が居なくて良かったとは言っておこうと思う。
かなりの年月が経ち、僕たちは幼稚園に入園する程度の年齢になった。謎の薬の影響か、健康で体の強い子供が多く僕もその一人だった。
名前は番号で呼ばれており、僕は七十七番だった。
初めて自分の姿を見たのは水に映る姿だった。真っ白の髪の毛は部屋と同化し、紫色の瞳は宝石のようだ。顔立ちは信じられないくらい美しく、天女のような見た目だった。僕は男なのに……
その後、白い部屋から初めて外へと連れ出され、晴天の下走らされ筋トレの様なものをされられた。この体は身体的に恵まれて居るようで、みるみる力がついてきた。勉強も平行して行われ、魔法の勉強も行った。
勉強では数学や文字、地理や歴史、そして科学分野などを学んだ。その中で、異質な物があった。それは……宗教だ。
この世界には慈愛神を信仰する正教会と、邪神を信仰する邪教があること。この施設は邪教の施設で、正教会は悪者で、邪教は素晴らしいものだと教えられた。
他にも魔剣と聖剣についても学んだが……それはあとでにしよう。
前世では魔法の無い世界だったため気づかなかったが、僕には天才とも言える魔法を操る能力があった。赤子の時に測られたのは魔法の量の事で、僕は魔力の総量は最大のSだった。その為、こと魔法に関しては僕が最も優秀で、職員たちに褒め称えられ続けた。
魔法でも、運動でも着いていけない子供は切り捨てられ、百人いた子供は中学一年になる頃には気づけば、たったの十一人にまで減っていた。
その頃には、十一人にそれぞれ名前が与えられ、僕の名前はレーリになった。前世の名前と似ているから僕は気に入っている。
この時期になると、普段からテストと表して狩猟をし、殺し合い、血で血を洗う日々。テストで悪い結果を残すと問答無用で殺害され、その恐怖はいつだって拭えない。
そんなある日の事だった。職員はいつにもまして厳粛な顔を保ち、言った。
「最終テストを行う。最後に残った一番以外は切り捨てる」
僕を除く十人の顔が絶望に染まり、みなが僕の方を見る。
「どうしたの?そんな顔して、みんなにチャンスはあるんだよ?」
その皮肉げな言葉が、室内にこだました。
僕は予測していた。いずれは、最終的に最も優秀な一人だけを残すのではないか、と。
テスト当日、緊張した面持ち、厳粛な雰囲気。悲痛の声が聞こえて来るかと思いきや意外にもヤル気満々といった感じだった。
まずは紙のテスト。これはなかなかに難易度が高かったが、恐らく皆満点を取るだろう。
次こそが正念場だ、それこそが実践形式のテスト。そのまんま、殺しあいだ。庭には森林魔法で木々を生い茂らせ、いつでもスタート出来るよう準備を行う。
「スタート!」
突然の開始合図だったが、慌てる者はおらず散り散りに去っていった。期間は三日間でそれ以上経つと職員が乱入する。職員は今の僕なら勝てるかも知れないかどうかの強さで、本当に強い。
僕も森の中に入って行く。取り敢えず最初の一日は様子見といこう。
* * * * * *
そもそも、この施設は何なのか。それを答えるにはまず、この世界について説明する必要がある。
この世界は────ゲームなのだ。
この世界が僕の知っているゲームだと、そう気づいたのはかなり早い段階だった。
ゲームの名前は『聖剣の探求』といって、聖剣を手にした主人公が仲間とともに、世界を支配しようとする魔神の手下の魔剣使い達と闘う。そんな王道RPG。魔剣だとか、聖剣だとか、王国の名前だとか、どう考えても既視感しかない世界。気づくのは当然だった。
僕が何故このゲームを知っているのかというと。それは……僕を裏切った奴が大好きだったゲームだったからだ。そいつは、良くそのゲームの話題を僕に振って来た。僕も一緒にプレイさせられて、何回も感想を聞かれたっけ。
僕がこの世界をぐちゃぐちゃにしてやりたいのはきっと、みんなの言う『最低最悪の悪党』になってやろうという意趣返しだけじゃなくて、裏切った奴の好きだった世界を壊して、少し意地悪をしたい。只、それだけなのかもしれなかった。
そして……僕の生まれた場所は、魔剣に適合できる人間を育成するための施設だった。
今のところ、この施設では四十二人の教育を完了したらしく、魔剣に挑戦した。そして、適合したのはたった三人。ほかの人は皆死んだらしい。僕たちはそんなもののために……いや。なんでもない。
同じ釜の飯を食べた仲間……いや、違う。あいつらは。仲間なんかじゃない。違う違う違う。チガウチガウチガウ。チガウ。あいつらは。敵なんだ。そうじゃないと。僕は、なんであいつらを────殺したんだ?
『敵』を殺し尽くした後、僕は優秀な殺戮兵器になった。無感情に敵を殺して、正確に、いつだって迷わずに、僕は殺人を犯してきた。もう、後戻りは出来ない所迄来ている。
僕は絶対『最低最悪の悪党』になるんだ。
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