『ファレスト君を鍛え、ゲームの始まりへ』
「僕は君の復讐を手伝いに来たんだよ!」
困惑するファレスト君。さぁて、掴みは十分かな?では、どうやって唆すか。
「ますは……お前が何者なのかを説明してくれ」
「僕は魔剣使いさ、怠惰のね」
「魔剣……ね」
「君はどうして強くなりたいのかい?」
ファレスト君は、強い意志を持っているようで 「復讐のためだ」 と、直ぐに答えた。
「どうやって復讐するんだい?」
「それは……王国をぶっ飛ばして…」
ノンノン、それじぁダメだよ。大切なのは、目的をはっきりさせることだ。ここいらで、ちょいと意識を明確にさせておこう。
「王国をぶっ飛ばたら、また君の姉のような事態が起こるよ。弱いものを強いものが搾取する。君が変えるべきなのは、その社会構造なのさ」
そう言われて驚いた様子の彼だったが、その言葉を飲み込もうとする。理解しようとする、それが現状を把握しようとしての事ではないのが残念だが、成長ではあるのだろう。
「俺は……差別の無い世界を作りたいんだ。魔神の親族だからって、それこそ、聖剣使いだからって特別じゃなくて、なんていうかなぁ。まぁ、つまり平等な国を作りたいんだ」
「平等……ね。君は新しい国を作って支配しようと言うのかい?」
新世界の神に……なんつって。
「いや、違うよ。支配したら平等じゃない。そうだな……俺が、俺が理不尽な不平等を作る奴等に正義を執行する」
「フフ、ハッハハハ。面白い。君は悪の執行人になろうということかい?」
「悪の…執行人……そう、だな。なんていうか、言い得て妙って奴だ。いつだって、悪党を倒すのは悪党だ」
人間はルールの上で生きている。そのルールと違うルールで生きる奴等を犯罪者と呼ぶのだ。そんな奴等を倒すのは、同じくルールの違う者だけだ。戦隊ヒーローだって、暴力を振るう怪人に暴力で対抗するのだから。
「それに成る為には、当然……」
そんな僕の言葉を遮るように、ファレスト君は言う。
「力が必要だ」
その瞳は、僕を真っ直ぐ見つめ、強い意志を僕に伝えてきた。いい目だなぁ。
「僕は歴代最強の魔剣使いだ、着いてこられるかな?」
「当然。平等な世界を作るためには、お前も殺す必要があるんだからな」
* * * * * *
前言撤回
あいつの訓練厳し過ぎる。なんだこれ、俺の特訓をハードワークなんて言ってたくせに、こっちのがハードワークだろ。
今日であいつが……レーリがやって来てから一年が経過した。基礎の鍛練を終えて、現在は実践を行っている。相手は勿論レーリだ。
「ハイ!また死んだ。こんなもんなの?」
こいつは木刀で、俺は真剣。最初は切り殺してしまうとか心配していたが、寧ろ逆だ。俺が木刀で切り殺される。これで手加減してるとか、マジかよ。
レーリを殺すとか、無理だろ。
だが、レーリは歴代最強と言っていた。つまり、レーリに勝てれば後は敵無しだ。それだけが唯一の救い。まぁ、あと何年かかるか分からないけど……
「まだ、まだだぁ」
そういうと、レーリはにやり、と笑い、こういうんだ。
「それでいい」
てね。
そんな一日の修行が終わり、やっと飯の時間になったが、吐きまくったせいで正直、食欲は沸かなかった。そんななか、突然レーリが話し出す。
「そろそろ、かな」
「なにがだ?」
「君の訓練だよ」
「?お、俺はまだ、お前に一勝も出来てないんだぞ?」
まだ全然追い付けていない、俺にはおまえが必要なのに──── 「で?」
「え?」
「これから成長すればいいだけだ。基礎はもう教えた、あとは勝手に育つだけだ」
そうだ。俺は何を甘ったれているんだ?悪の執行人になるのに、レーリの補助がずっと必要なんてたまったもんじゃない。
「わかった。復讐は必ず成し遂げる」
「そうだね。僕は王都育成研究学園に入学するよ。聖剣使いがもうすぐ入学するからね、情報収集と運命を削りにいってくるよ」
「ああ、頼んだ」
「それじゃあ、また君が会いたいときに」
レーリはそう言ったきり、居なくなった。
「最後まで掴めない奴だったな」
* * * sideレーリ * * *
ファレスト君思ったより才能ありまくりで、ちょうど受験に間に合う件について。
そんな僕は、王都育成研究学園の敷居を跨いだ。周囲には『スゴイ』や『カッコイイ』と漏らしている声が聞こえてきた。見上げて正面に堂々と立ちふさがる校舎、その校舎の左側に体育館があり、右側には校庭があった。
校門は漆黒の装飾が施してあり、どこを見ても塗装の剥がれが無い所から、お金の掛り具合が伺える。
試験会場の校舎3階に到着し、勉学のテストが行われる。最難関であり、全国各地から受験生が訪れるこの試験はなかなかにハードルが高い。
だが、あの施設のテストの方が何倍も難しかったのだけは確かだ。これなら百点は間違いないだろう。回答を終え、カンニングを疑われない程度に周りを見てみると、難しさに嗚咽を漏らしている者や物見遊山なのか、既に寝ている奴もいた。
テストが終了し、僕達は体育館に集まった。
自動採点によって、今すぐに結果を閲覧できるらしく、合格点に達している生徒はこれから校庭に移り、実技試験を受けるらしい。
僕も点数を確認する。あぁ、良かった。しっかり百点だ。これであとは実技でも良い成績を残せば聖剣使いを除いて首席は確定だろう。
何故首席になろうとしているのか。それを説明しよう。聖剣使いがこの学園に入学するのは、いつか来る魔神の厄災に備え、知識を蓄えるのと、頼れる仲間を探すことにあった。
そのため、必然的に最も優秀なものが集まるSクラスに入学する。僕の目的は聖剣使いを掻き乱すこと、だから聖剣使いと親密な関係になる為、Sクラスにはいるのだ。
それも、首席で、ね。
聖剣使いは王国の顔だ。そのため、首席はどんなにテストの点数が悪くても聖剣使いになるだろう。それだから、聖剣使いを除いてなのだ。
* * * * *
「今年は聖剣使いが入学するからか、良い感じの受験生かおおいなぁ」
「とくにこのテストを満点でクリアしたレーリって子はやばそうだね」
ここはこの学園の先生が集まる部屋であった。先生といっても、研究者でもある彼らは相当な実力者であった。
「確かに、魔力に一切の揺らぎがなかった。肉体も、年齢と見た目にそぐわず洗練されている」
「さぁ、どんな結果を見せてくれるのかな?期待の新人君はね」
* * * * * *
実技試験は一対一のトーナメント形式で行った。序盤で負けた子達は、敗者同士で競い合って序列を決めるらしい。
試合はどんどん進んでいき、とうとう僕の番がやって来た。試合を観ていると僕と今戦えそうなのは一人だ。それは⋯⋯聖剣使いだけだ。
闘技場⋯⋯まるでコロシアムのような所に足を踏み入れた、僕は生まれて初めて大観衆の目の中で戦うこととなった。
大観衆というのは、この学園ではよく試合形式の試験や格付けが行われており、それは人々にとって、大変面白い娯楽になるのだそうだ。それ以外にも、学園の在校生が今年の1年生はどんなものかと確認へと来ているというのもある。
僕を観察なんて、おこがましいとも思うが⋯⋯ちょっと、度肝抜いてやろうか。
対戦相手は僕の見た目を見て侮っている様子だった。
「嬢ちゃんここは遊び場じゃあ無いんだぜ。勉強だけできても意味はねぇんだよ」
審判は露骨に嫌な顔をするが、そのまま開始の合図を始める。
「よーい、スタート!」
始まりの合図が、戦い終わりになるとは知らずに。
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