康平君へ愛をこめて

@tone120414_ycm21

第1話

2019年 


パパ、

死んじゃったの?


奥さんの泣き崩れる声も、脈拍が0のまま鳴り響くモニターの音もぼんやりとしか聞こえていなかったのに

父親の腕をゆすりながらそう言った少女の声だけが異様に響いてきた。


奥さんの泣き崩れる背中に手を当てながら冷たく、動かなくなった、患者さんを目に焼き付けた。


しばらくご家族だけの時間をとってからいつものように患者さんの体をきれいにして亡くなられた方専用の浴衣を着せ終えると

葬儀屋さんがお迎えに来た。


「奥さん、幸ちゃん一緒にお見送りしましょう。」

そう伝え霊安室へ移動後、霊柩の乗せる。「パタン」霊柩車のドアが閉まる音がこれが患者さんとの最後なのだと再認識させる。

そして奥さんはまた涙を流していた。

パーーっという盛大な音を出して患者さんが去っていく。

私はその姿が見えなくなるまで深く深くお辞儀をした。「お疲れさまでした。ゆっくりとお休みください。」と言い小さくつぶやいた。


ナースステーションに戻ると

先輩からから「お疲れ様、大変だったね。奥さんと娘さん大丈夫だった?」

「泣き崩れていました。」

「そうよね。でも今日は島崎さんがだったっから良かったと思うよ。」

「そうですかね。色々ありがとうございます。お疲れ様です。」作り笑顔でそう返し業務に戻った。


いったい何を根拠にそんなことを言ってくるのか分からないが、看取るというのは私にとってそう簡単なことではない。

いつも心の中のどこかをごっそりと持っていかれる感じがする。そして突っついたらすぐに破けてしまうだろうその最後の場所まで

もう少しというところでいつもとどまっている。その場所に触れてはいけないのか、守っているのかは分からない。

ただそのにずっとあった。

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