人魚の指笛

小林 きゅうり

序章 ヒビ

1 後悔

 太陽の光がチラチラと輝いている海の中。

 眠っている人魚が一匹、

白にやや黄色味がある腰ぐらいの長い髪と一緒にふわふわと漂っている。

下半身は濃い青をしていて、尾鰭が扇のように大きく広がっている。不規則に赤が混じっているのが美しい。

やはり人魚という名の通り、上半身は人間の様な形をしているが、肌は青白く、所々鱗がある。

耳もヒレを小さくしたようだ。

胴体は天女の羽衣に似た素材のフリルを纏っていた。

 気持ち良さそうに寝ていたが目の前に大きな岩があり、ぶつかったことで起きた。

痛そうに頭に手を置き、ヒレで岩を叩いている。

 

最悪の目覚めだが、今日はタツノオトシゴのたつと一緒に冒険するんだと胸がドキドキしている。

たつは15センチと少し小さいけど優しい。

久しぶりに会うので楽しみすぎて先に家に行ったけど、たつはまだ寝ていた。


 何故か前にたつが教えてくれた、宝物の場所を思い出した。

(ちょっとイタズラしちゃお。)

とたつが起きる前に急いでその場所に向かった。

 そこを初めて見た時は驚いた、ずっと昔からあるようでボロボロでとても大きい船があるのだ。

船はおとぎ話かと思っていたけど本当にあったんだ。と毎回見るたびに思う。

 感動してる暇はないとたつの宝箱を違う場所に隠した。


 たつの所にいくともうすでにたつは起きてて、

遅いよという顔している。隠したことも忘れて、今日の冒険に夢中になった。冒険といっても近くの場所を訪れるだけ、それだけで楽しいんだ。


 たつがなにかを見つけてにやけていた。

たつを覗くと水色の石がある。キラキラ光を反射して引き込まれる。

「茜、これを宝箱にいれる!」

宝箱のことを思い出してドキッとした。その反面どんな表情をするか楽しみだった。


 船にいき、たつは宝箱を探したがないと言って泣きそうになっていた。

これはやばいと、すぐに宝箱を探した。でもそこには、宝箱は開いていて、中身はなにもない。

近くにサメの歯が落ちていた。


 宝箱を手にもち、たつに事情を話した。

たつは絶望した表情。

そこから一週間、たつとは話してない。

でも、私の宝はたつだから、

(一生そばにいれないやだ)

たつに会いに行き、謝り探そうと思う。


「たつ!本当にごめん……」

「謝って許されるものじゃないよ」

「分かってる、これからたつの宝物を探しに旅にでる」

周りがぼやけて良く見えない、泣きたいのはたつの方だろうに

「僕も探しにいくよ、茜。宝物は僕にしか分からないからね。覚えておいて、仲直りするわけじゃない。一生許さないから。」

「うん……」

それでもたつが好きだし、少しでも一緒にいられることが嬉しかった。そんなたつの宝物を隠すなんてイタズラやらなければ良かったと後悔しかない。


 次の日から宝物を探しにいく。

今日の夜はたつと眠った。なにも喋らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る