ー12-
第12話
「行きたいところがあるんだ。ちょっとだけ付き合ってくれないかな」
次の日、アパートの正式な申込みを終えた後、おじさんに誘われて向かったところは、とある神社だった。
入口の鳥居の横に、看板があった。
「八大神社? 宮本武蔵って書いてある」
「そう。ここはね、剣道家にとっては、ちょっとした場所なんだよ」
おじさんは、鳥居をくぐり、参道を歩いていった。私もおじさんの後を追うようについていった。
階段を上ると、本殿が目の前にあった。
おじさんは、本殿に向かわず、左に曲がり、男の人らしき銅像の前に立った。
「ひょっとして、この人が宮本武蔵?」
「そう」
「もっとおじさんかと思ってた」
「一乗寺下り松でね、宮本武蔵は吉岡一門数十人と決闘するんだ。この神社は、武蔵が決闘前に参拝した神社って言われてる」
「へぇ」
「でも武蔵は、祈ることなく、そのまま戦いに向かったんだ」
「なんで?」
「神仏は信じるにしても、頼るものではない。そんな言葉を残してたと思う」
「ふーん」
「せっかく来たからね。僕らはお参りしていこう」
私とおじさんは、本殿に向かい、お参りをした。
おじさんは手を下ろすと、私にこう言った。
「璃子ちゃん。お母さんに伝えて欲しいんだ。次の日曜日の朝、手合わせをお願いしたいって」
「…」
「僕もね、ケジメをつけないといけないと思うんだ」
おじさんは真剣な顔をして、私にそう言った。
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