第12話 黄昏の市
リュウケイアの城門をくぐった瞬間、異国の喧騒と熱気が三人を包み込んだ。市場では様々な言語が飛び交い、香辛料の芳香と焼かれた肉の匂いが入り混じる。大通りには商人や旅人、傭兵たちが肩をぶつけ合いながら行き交い、路地裏には物乞いや怪しげな取引をする男たちの姿があった。
「まさに混沌の街って感じだな」
ガウデリウスが笑いながら腕を組む。
「ここがリュウケイアか……」
イザベルは慎重に周囲を見渡しながら呟いた。
「さて、お前たちをどこへ案内するか……まずは宿か?」
「その前に、“黄昏の市”とやらを見ておきたい」
ガウデリウスはハサンから受け取った地図を開いた。そこには、リュウケイアの地下市場の位置が記されている。
「黄昏の市、ね……まあ、案内してやるよ。だが、あそこは慎重に動け。余所者が無防備に踏み込む場所じゃない」
バジルはそう言うと、二人を連れて大通りを抜け、奥まった路地へと進んでいった。
◆
リュウケイアの裏道は迷路のように入り組んでいた。瓦礫の積まれた狭い路地、石畳に染み付いた血の跡、壁に落書きされた謎の印。
「この先だ」
バジルが古びた井戸の前で立ち止まる。彼はその井戸の縁に手をかけると、ゆっくりと押し下げた。すると、地面が軋む音とともに、隠された石扉が開いた。
「こっから地下へ降りるんだ」
ガウデリウスとイザベルは互いに頷き、慎重に中へと足を踏み入れた。
◆
地下へと続く階段を降りると、そこには異様な光景が広がっていた。
無数の商人が並ぶ露店。違法な武具、魔導の秘薬、王国で禁じられた異端の書物が堂々と取引されている。奥には奴隷市場があり、檻の中で身を縮める人々がいた。
「これが……黄昏の市か」
「ここじゃ、金さえ払えば手に入らないものはないさ」
バジルが肩をすくめる。
「だが、王国の密偵もここに潜んでる。気をつけろ」
ガウデリウスとイザベルは慎重に歩きながら情報を探った。
しかし——
「よう、あんたら。旅の者か?」
突然、背後から低い声がかかった。振り向くと、黒い頭巾を被った男が立っていた。その目は油断なく二人を観察している。
「黄昏の市じゃ、余所者が長居すると目立つぜ。何か探し物か?」
「……さあな」
ガウデリウスは警戒しながら答えた。
すると、男は薄笑いを浮かべ、ポケットから古びた銀のメダルを取り出した。
「王国の策謀を追うなら……これを持つ資格はあるか?」
その言葉に、ガウデリウスの瞳が鋭く光った。
「どういう意味だ?」
「詳しく知りたければ、今夜“灰王の楼閣”へ来い」
男はそれだけ言い残し、群衆の中へと姿を消した。
「……どうする?」
イザベルが小声で尋ねる。
「行くしかないわ」
ガウデリウスはメダルを見つめながら、決意を固めた。
そして、夜が訪れる——。
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