第28話 黄金の咎人
僕とマーサはしばらくの間、大体30分くらい咎人を探してあちらこちらを歩いていた。
「なかなか咎人が見つからないね、マーサ」
「まあ探してる時に見つかるものでもないし、それに本来咎人なんていない方がいいからね。この都市では生きるのが辛くなって自殺する人は多いけど、日に同じ市で咎人が5人も10人も見つかるほどじゃない」
そう思うと確かにそれはそうだ。そうなった場合マーサがどうやって生きていくのかは謎だけど、とりあえず今はそこは気にしないことにした。
「ねぇマーサ、自分の住んでるところで咎人が見つからなかった場合はどうするの?」
「そういう時は他の市まで出向くことがあるからね。私たち咎狩りの仕事なんてそんなものさ。平和な時には私たちはどれだけ優秀でもひもじい思いをすることになる。まぁ、そんな時はゲヘナ・ハイヴにないから心配する必要はないんだけど」
しばらくすると、マーサのスマホから音がする。それを手に取ったマーサの反応から、この近くで咎人が確認されたらしい。
「ねぇマーサ、もしかして……」
「ああそうだよ、レンレイ君。この近くで咎人が現れた。だから急ごう?」
「うん、そうだね」
そのまま僕はマーサに連れられるがままに移動した。
————
「見て。あれがおそらく咎人だ」
マーサに指をさされたので、そこにいた咎人を一瞥する。周りの人を無差別に襲っているので、マーサは隠れて観察するように指示した。
その咎人は光沢のある黄色の人型で、バランスが良く美しいフォルムをしている。しかし、顔がない。
「金色のマネキンみたいな咎人だね……名付けて『黄金の咎人』といったところか。さて、どんな能力を使ってくるか……」
「黄金?」
「土から取れる黄色くてキラキラした不思議なもののことだよ。とっても綺麗で、よく伸びるし、鉄とかと違って錆びつかない。だから大昔はお金に使われたこともあったんだ」
「ふーん……まぁ、確かに綺麗だけど」
「なんか反応薄いね、レンレイ君。まぁ、確かに生きるだけなら必要のないものではあるんだけどさ」
いや、そりゃそうでしょ。あんなキラキラしてるだけのものになんの価値があるんだろう?
こういうところで人間の考えていることはあまりよくわからない。人間はただ綺麗だったり、楽しかったりするだけでそのものを異常に欲したりする習性がある。
カラスみたいにキラキラ光るものを集めてるのかな?と考えれば半分くらいは理解できるけど、だとしてもやはりよくわからない。
しばらくして、黄金の咎人が追いかけていた一般人に触れる。すると、その人が叫び声を上げながら、咎人と同じ物質に変わっていく。
「よし、今はあの咎人も気を取られてるみたいだ。だから奇襲を仕掛けよう。それに、今日はレンレイ君がトドメの一撃を下せばいいことにしてあげる」
「いいね。狩りの基本は奇襲だから。でも僕がトドメの一撃をするってどうやって?」
僕が聞くと、マーサは触手を2本取り出し、そのうちの片方でもう片方を切った。そして、その触手を僕に切って与えた。
「もしかしてこれを食べろってこと?」
「その通り。それを食べれば多分君も能力が使えるようになる。今からじゃなくて言いから食べてみてよ」
「わかった」
そういうとマーサは遠くにいる咎人を触手で一刺しする。体をよじってなんとか抜け出た咎人は、そのまま思ったよりも速い速度でマーサに近づいてくる。
当然ながらマーサはその様子を見るなり咎人を拘束する。そうして頭部以外が触手で覆われた咎人は無防備な状態で脱出しようとするが、どうにも体が動かないようだ。
ここで僕はマーサに言われた通りに触手のカケラを食べる。すると、マーサと同じ触手が僕の背中を突き破って生える。
とりあえずそれを動かして咎人の首を刎ねてみると、咎人はとても呆気なく死んでしまった。
「よくやったよ、レンレイ君。これでとりあえず君の手柄だって報告できる。最初の給料は3000ロンくらいになるかな」
「3000ロンもあれば、人肉が何パック買えるかなー」
「あはは、レンレイ君はそういうところにしか目が行かないんだね」
そのまま笑いながら僕とマーサは家に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます