第19話 レストランの事件
僕とマーサがドミニクの家を目指して歩き始めてから、もう3時間ほど経ったらしい。
「あーあ、お腹すいたなー」
朝ごはんに軽くパンを食べた程度で、僕は何も食べていない。マーサはわかんないけど、何を食べてもおそらく今になったらお腹が空いているだろう。
「そうだね。私もそろそろお腹が空いてきたな。何か食べるかい?レンレイ君」
「うん、食べたい」
「それじゃ、あそこにあるレストラン『
「レストランか……初めて使うね」
「ああ、うん。みたところそこそこの値段のフランス料理店みたいだね。それに店名にノヴァクってあるのは味が信頼できる」
マーサは舌なめずりをしながらレストランに入る。中は思ったより質素だった。
「お客様は2名様ですね。指定の席に案内いたします」
緊張で安定しない足取りで席に向かう僕と、上品な淑女のように進むマーサ。まるでマーサが本物の女性で、それもかなり身分の高い人に見えた。
「こちらの席になります」
レストランの店員さんに指示された席に座る。するとマーサが机の端にある薄い紙状のものを取り出して僕に渡してきた。
触って手に取ってみると、紙より少し硬い気がする。そして半分におられていたので開いてみると、そこには文字と写真がびっしりと連なっていた。
「それはメニュー表だよ。その中から好きなのを選んでね。ちなみにちゃんとお金は持ってるから、好きなの食べていいからねー」
「うーん、どれにしようかな……」
マーサはすでにメニューを決めているようなので、僕も早めにメニューを選ぼうとする。結果、僕はチーズインハンバーグを食べることにした。
マーサはボタンを押すと、それに反応して店員さんがやってきた。
「ご注文お伺いしますね」
「すみません、チーズハンバーグのライスとオニオングラタンスープ付きセット、チョコレートパフェ、パンケーキを1つずつ」
マーサは流暢に捲し立てる。おそらく『チーズハンバーグのライスとオニオングラタンスープ付きセット』が僕で、『チョコレートパフェ、パンケーキ』がマーサなのだろう。すると、店員はこちらに微笑みかけてくる。
「かしこまりました」
奥の方に向かって店員が戻っていく。ああ、早く食べたい……なかなか待てないなぁ……。
獣だった時は、待たずとも狩った瞬間に美味しいものが食べられた。まぁ、今となっては過去のことだから単にあの頃は良かったと思うことしかできないんだけど。
「今の店員、なんで微笑みかけてたの?僕とマーサのことで何か面白いことでもあった?」
「いいや違う。でもレンレイ君の反応って本当に面白いなぁ。あれはレストランの店員が重要視する『接客態度』ってやつだよ。ああやって笑顔で接客業務に取り組むことがレストランでは必要とされるんだよ」
「ちなみに、なんで僕の方に勝手にライスとオニオングラタンスープを?」
「だって色々味わっておいた方がいいじゃん」
確かにそれはそうだ。
僕が獣だった時も、草食動物を襲った時はまず消化器官を食べていた。
消化器官を食べた時には、中に未消化状態の草が入っていて、僕ら肉食動物でも食べられるようになっていたからだ。
じゃないと栄養が偏って死んでしまうから、マーサの言っていることは理にかなっている。人間は色々なものを食べないと栄養が偏ってしまうのだろう。
まぁ、マーサがそれを言えるかどうかはおいておいて考えるべきだけど。
「お待たせしましたー」
僕とマーサの分が運ばれてきた。
白いのがライス、器に入ったのがオニオングラタンスープ。ハンバーグは前にも食べたから覚えている。
相変わらず人間の食べ物は美味しい。まずオニオングラタンスープから手をつけるが、濃厚な玉ねぎとチーズの味がし、熱い温度で提供されているのが食欲をそそる。そしてその次にハンバーグとライスを食べると、ハンバーグの肉汁がライスの味を引き立てる、とても相性の良い組み合わせを楽しめた。
マーサもマーサの方に出されたスイーツをじっくり味わっていた。僕の食べていた時間よりマーサの食べている時間のほうが長い。
「あぁ、甘いお菓子を食べてる時って幸せだなぁ」
マーサがそう思っていると、遠くから叫び声が聞こえた。
「うわぁ!咎人がてたぞ!誰かがここで自殺したんだ!」
何かがぐちゃぐちゃにされる音が続けて聞こえた。
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