第8話 お勉強
咎人を倒して家に帰った僕は、必死に算数の勉強をしていた。
「ここにキャンディーが5つあるとするね。そこから私が3つリンゴを食べると、何個になると思う?」
そう言いながら、マーサは5つあるキャンディーに見立てた赤くて四角いもの(ブロックと言うらしい)を3つ取り除いていく。
「2つ」
「正解!それじゃあ次はちょっと難しくするよ。オレンジのキャンディーが4つ、ブドウのキャンディーが6つあったら、合わせてキャンディーはいくつ?」
「10個」
「そうだね。まさかレンレイ君がそこまでよく理解できるとはね」
具体的にキャンディーの数がどうとかが生存にどうやって絡んでくるのかはわからないけど、マーサが言うんだから信頼はできる。
マーサから人間は「嘘」と言うものをつくことがあると聞いたけれど、マーサが僕と言う存在をパートナーにするにおいて僕に嘘をつくわけがない。よりによってこの僕に向けて生存に関わるなどと言うならば尚更だ。
一応確認のために聞いてみる。
「マーサ、これって生存のために必要なんだよね?」
「ああ、そうだとも。数がわかるようになればお金が上手く使えるようになる。安心して、僕はこんな状況に置かれても君を嘘で陥れることを優先するほど馬鹿でも邪悪でもないからね」
そう言いながらマーサは僕のことを撫でてくれた。
————
そうして算数の勉強を終わらせると、マーサは「ごほうび」と称して、買ってきた人肉で料理を作ってくれた。
料理というのは、火などを使って食べ物をもっと美味しく作り変えることを言うらしい。
それは匂いから肉だと言うことはわかるけれども、茶色い。丸い形をしている。横にはナイフとフォークがさらに置かれている。
「……何、これ。いや食べ物なのはわかるけど」
「それはハンバーグっていう料理だよ。お肉を一旦バラバラにしてから、形を整えるために捏ねて、火に当てて焼いた食べ物だ」
「へー。マーサは食べないの?」
「あくまでレンレイ君のご褒美だからね。ちなみに私が食べるときはたくさんのパイナップルっていうフルーツを添えて食べているよ」
「そうなの?まあとりあえず、いただきます」
僕はケーキと同じようにそれを切って口に運ぶ。中にとびきりの熱さと、とても上質な肉の味が広がって、とても美味しい。熱いものを食べたのは初めてだけど、割といける気がする。
そのあまりの美味しさと僕にとっての新しさにより、気づけばすぐに食べ切ってしまっていた。
「ごちそうさまでした」
ご飯を食べた直後、僕はマーサに別の勉強を教えるように言った。
「あの、マーサ。また別の勉強教えてくれない?」
「もちろん。というか、私もレンレイ君にそれを教えようとしてたよ。とりあえず、ゲヘナ・ハイヴの咎狩りについて教えるね」
「まず、私はこのゲヘナ・ハイヴで8番目に強い咎狩り。階級はS級で、階級だけ見れば一番上の咎狩りなんだよ」
「ここで重要なのが、私たち咎狩りは正義の味方なんかじゃなくて、ただ咎人を狩ってるだけなんだ。前にも言ったけど、ヒーローじゃないんだよ、私たちは」
「わかってるよ。ヒーローってあれだよね?無関係な人を守るためとか抜かして自分の命を投げ捨てる間抜けな連中のこと」
「そう。人はそれを応援し続けるけれど、私からすればそんな名誉なんて1ミリも興味がないから、咎狩りにヒーロー意識なんて必要ないと思ってるんだ。ヒーローは弱者を守るために活動している。でもハンターは敵や獲物を殺せればそれでいいんだ。故にハンターに正義感なんて必要ないのさ」
「まぁ確かにわかるよ。ただの獣として長い間生きてきた僕だけど、『正義』なんて大きなものを持ってる動物は森にはいなかったな。森の世界では動物は生きたいから生きて、善も悪も考えずに目の前の餌に食らいついて、目の前の敵から逃げ回って、目の前の異性と交尾して。たったそれだけのことしかしなかったから、よくわかるよ」
「ものわかりがいいねレンレイ君。その証拠に、ちょっと今からゲヘナ・ハイヴにいる咎狩りの最高峰である『大罪王』7人の名前と、文字にしたときにどうやって書くのかを覚えるようにしよっか」
そうマーサが言うと、7人の大罪王の名前が読み上げられながら、出された紙に書かれていった。
その名前は、以下の通り。
”傲慢王” ルシア・デクスター。
"憤怒王" アリマ・ユウ。
”嫉妬王” アペプ・ベルトーニ。
”強欲王” マーラス・シノガ。
”怠惰王” チェル・ノーグ。
”色欲王” ティアマ・トロン。
”暴食王” ロキ・ノヴァク。
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