第11話

下着姿の美紀が見えたのだ!…肌が白くてスタイルがよい。少林寺拳法部で鍛えた腹筋はうっすらとではあるが、4つに割れている。

秀雄はさっきの考え事のうち、とりあえず最後を取り消した。


「秀雄、どうしたの?私のことジッと見つめて…照れるじゃない。さては私の事、すごく好きなんでしょ!」

美紀は再びビシッと秀雄を指差す。


「え…あ、うん。」

当たらずしも遠からず、とはこのことだ。秀雄はうっかりまばたきをしてしまった。まばたきをすると、見えていた未来が途端に見えなくなってしまうのだ。秀雄は後悔したが、人間なかなか目を開けたままでいられるものではない。

「や~っぱりね。私だって秀雄の事…」

秀雄は我に返った。この話は聞いていなければならない。


「やっぱり何でもない!さ、ケーキ食べよ。」


「うん。」秀雄は大好きなチーズケーキに手を伸ばした。


「で、他にどんな未来が見えたの?」

秀雄は喉を詰まらせた。さっきの映像が衝撃的過ぎて、他のを忘れてしまったのだ。


「え、えーとね…ハエが叩かれるとか…猫がケンカして傷だらけになる場面もあったなぁ。」

よくもまあデタラメを並べたものだ、と秀雄は自分で自分に感心していた。

美紀はウソに敏感なので、秀雄は話題を変える。


「今日はとても天気良いね。」


美紀とは目を合わせないようにして、窓から外を眺める。


「……!」


帽子を目深に被った男が辺りをうかがいながら…手にはライターと新聞紙。そしてゴミステーションのゴミに火を点けようとしているのだ…。


「……放火…!」


「ね、ね、ねぇ。あの男の人…。」

こういう時にはなかなか言葉が出てこない。


「え?どこ?誰もいないよ。」


「あの、ゴミステーションの所…。」


「誰もいないって…。」


「あ!」2人の声が重なった。


「秀雄、何が見えたの?」


「放火しようとしている人が…ゴミに火を点けようとしてた…。」


「えーっ!いつ?」


「分からないよ…。」


「家のすぐそばなんだよ!ラーメン屋の張り紙みたいに、何か手掛かりはなかったの?」


「ちょ、ちょっと待ってよ。」

秀雄は窓際で頭を抱え込む。意外と大きかった美紀の胸のことなど思い出している場合ではなかった。

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