第3話 ペナルティ
一番年上である内藤の意見に従って各々が拠点となる家を決め始めた。今日は色々あって疲れているようだからと解散となり明日になったら今後の事についてまた話し合いがもたれる事になる。
女性達は2つに分かれて共同で住む事にしたそうで、1日に8,000ジニの家に決めたが、男達は個々に住む事を選んだので1日に3,000ジニの狭い家を選ぶ。
ジニとはこの世界の通貨の名称で1ジニが1円となっているそうだ。
俺は家の中にこのままいても仕方が無いので、この集落に唯一の店である商店を覗きに行くことにした。
コンビニの2倍ほどはありそうな商店は天井まで届くほどの高さがる棚が並んでいて商品はガラスケースの内側に入っている。カードを当てて購入しないとケースは開かないようになっているので買うかどうかは見て判断するしかないようだ。
1列ごとに商品の種類があるので順番に見ていると奥にアキトと東が一緒に商品を眺めながら話している姿が見えた。
こんな事でもなければ決して交わらない二人だよな、どう見ても火と油だよ。俺はアキトと関わらないようにしたいものだ。
ざっと見ていくと商品は食料や生活するうえで必要な物が揃っているし、魔物に対抗する為か武具まで売られていた。
武具の適正価格は知らないが決して安いとは思えない。
本物を見た事がないので武器を眺めているとそこに年齢が近い松原花音と菅野杏奈のペアがやって来る。
直ぐに松原花音が武器を見て興奮し始めたようだ。
「うわっ凄っ、槍とか売ってるんだ。買った方がいいのかな? 杏奈ちゃんはどう思う?」
「高すぎますよ、今はそんなお金はありませんし、それにそんなのを買ってどうすrんですか」
「どうするって、魔物の襲撃に備えなくちゃいけないじゃん。せめて何かを持ってないと危なくない」
「そもそも魔物が何なのか分からないんですけど」
2人の会話を聞いていると寒気を感じて来たのでせめて身を守る物を買おうか真剣に見る事にする。
そうは言っても手持ちは3万しかないな……木製バットが1万か、これなら……。
購入する為にカードをショーケースに翳そうとするとその手を突然現れた内藤が掴んできた。
「それを買うのは待った方が良いんじゃないかな」
「どうしてですか、だって襲撃されるんですよね、その対抗手段を持っておかないと不味く無いですか」
「君の頭にも入っているだろ、相手は人間じゃないんだ。だからせめてバールとかナイフにした方が良いんじゃないかと思ってね」
バールだと少し高いんだよな、どうしようかな?
悩んでいる俺の前で内藤はバールを購入する、するとショーケースの中は空になるはずなのに扉を閉めた途端にバールが出現する。
これには内藤も俺も驚いていると、違う場所からアキトの怒鳴り声が聞こえて来たのでその声の方に行ってみる。
「何渋ってるんだよ、こっちはお前を守るって言ってんだろうが」
「でも、そんなに払ったら僕は何を食べれば……」
「デブなんだから今日ぐらいは我慢しろ、いいか、お前みたいな奴が自分の身を守れるのかよ」
「でも、でも……」
そこではアキトが東の胸倉を掴んでいて、その奥に戸惑ってみている菅野と松原が見えた。
俺としてはリーダー気取りの内藤が直ぐに割って入るのかと思ったが、残念ながらバールを握りしめたままこの場から去ろうとしている。
おいおい、肝心な時に見て見ぬふりかよ、まぁ仕方が無いのかも知れないけどさ。俺もそれを見習おうかな……えっ、何でそんな目で俺を見ているんだ。
目が合ったのはどうにかしてくれと訴えている様な菅野と松原だった。年下の女性にその目で見られたら動かざる得ないので勇気を振り絞ってアキトに話しかける。
「あの、もうそこまでにしませんか」
「ああん? テメェには関係ないだろうが、いいか俺はな、こいつが魔物が怖いって言うから対価を貰って守ってやるんだ」
すると助けてくれると期待した東が俺に訴えて来た。
「この人は僕に1日に2万も払えって言うんだ。そんなのは無茶苦茶だって」
「余計な事を言うんじゃねぇよ」
激昂したアキトはいきなり東の顔を殴って倒すと、今度はその腹を蹴りまくる。
「何してんのよ」
「止めてあげて下さい」
松原達が叫んだので止めに入ろうと1歩踏み出したが、俺の目にアキトが持っているナイフを見て足がすくんでしまう。
流石に内藤も不味いと思ったのか戻って来ると俺達の目の前でアキトが浮かび始め、そのまま外に向かって移動していく。すると兎仮面の声が頭の中で聞こえてきた。
『皆さん聞こえてますよね、至急【何でも屋】の前に集合して下さい』
慌てて飛び出すとアキトは3m程高い所で浮かびながら叫んでいる。
「おいっ、何をするんだっ、俺も殺す気なのか」
アキトだけが叫んでいると、その周りに参加者の全員が集合してアキトを見上げている。そして再び声が聞こえてくる。
『ルールは頭の中に入ってますよね、いいですか参加者同士の暴力行為は今は禁止です。本来ならば退場して貰おうかと思いましたが見せしめとしてこの者にペナルティを与える事にしました。その内容は現在のお金を没収とこれから5日間の報酬も無しにします。そして皆さんはこの者に少しでも施しを与えたら同じペナルティを与えますので止めて下さいね。それでは素晴らしい異世界生活を送って下さい』
その無情なペナルティにアキトは懇願するように叫んだ。
「待ってくれ、5日も金が無いのなら俺はどうやって生きればいいんだ。頼むよ、今回だけは見逃してくれ」
『お断りします。この隔離場所の周りは森になっているのでそこで食料を調達して下さい。ではまた』
「おいっ、なぁ少しは聞いてくれてもいいだろ」
アキトの身体はゆっくりと地上に降りてきて直ぐに自分のカードを見て茫然と立ち尽くしている。
泣きつかれても迷惑だから離れないとな、それにしても誰も気にしていないのか、あの兎仮面は今はと言ったのに……。
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