贖罪は異世界で~能力を手にした者達のサバイバルゲーム~
なごみ豆腐
第1話 事の始まり
「えっ? ここは何処だ?」
昔ながらの映画館中でスクリーンの方を向いて俺は立っているが、どうしてこの場にいるのか全く思い出せない。
「うっうううう」
頭が締め付けられるように痛くなったので思わず頭を抱えてしまう。
この記憶は……何に参加するんだ……って言うかそもそも俺は誰なんだ?
そうだっ俺の名は沢目雄二、年齢は28で良いんだよな……仕事は……。
徐々に思い出してくる記憶を辿ると身体が震えて来る。その記憶は会議室の中で専務と部長が鬼の形相で俺の前に立ち、土下座をしている俺に対して怒鳴り声を上げている。そしてその周りいる同僚達は決して同情している様には見えないし、それどころか嘲笑しているように見えた。
「何で……俺は何をしたんだ? だめだ全く思い出せない」
その記憶が現実だとは思えずに頭の中から振り払おうとすると正面にスポットライトが当り、それはスクリーンの前にあるテーブルを照らしていた。
そこに引き寄せられるように近寄って行くとその手前に看板が目に入る。
『これは最終通告です。本当に参加をするのであればテーブルの上にあるカードを1枚持って右の扉の中にお入り下さい。参加しないのであれば何も取らずに左の扉からお帰り下さい。カードに触れた時点で参加確定となりますので不用意に触らないようにお願いします』
だから何の参加だよ……やり直せる? 大金? 何だこのキーワードは。頭には浮かんだが肝心の内容が思い出せない。
だがこんなおかしな状況だと言うのに混乱はしていても恐怖は微塵も感じてはいない。そして引き寄せられるようにテーブルに近づく。
見ると名刺サイズのそのカードは円を描く様に2つに分かれていて、左側は【月】【火】【水】【木】【金】とそれぞれのカードに一文字ずつ書かれているがどうやら2枚はもう取られてしまったのかスペースが空いている。
ほぼ確定だとは思うがそのカードに書かれていたのは【土】と【日】だろう。
そして右側のカードには【目】【口】【鼻】【耳】【足】【手】と書かれていてこちらは1枚分のスペースが空いていた。
こっちはパーツか、さて、俺はどれを選ぼうかな…………おいっ、何を考えているんだ俺は、こんな意味が分からない事に関わるなよ、さぁ左の扉から出て会社に向かわないと。
そのテーブルから離れて扉の取っ手に手を掛けようとしたがいきなり全身が震えて額から汗が流れ始める。
どうしたんだ。俺の身体は帰る事を拒否しているか?
振り返ってテーブルに視線を送ると何故かカードを手に取った方が良いように思えて来た。
あ~もう何だよ、どうしたって言うんだ。どう考えたって怪しい……チャンスなのか?
もう一度テーブルの前に戻りカードを見ていると心なしか笑みが浮かんでくる。
よしっ決めた。カードを選べばいいんだろ。
カードを見ながらどれを選択すれば正解のなのか考えたが。そもそも何をするのかも分からないので自分の名前の中に入っている漢字の【目】のカードを手に取って右の扉の中に入って行く。
その中は薄暗いがらんどうの空間になっていて、予想通りカードを手にしている3人の者達がいた。
1人は太ったオタクのような男で、もう1人の若い男はこんな場所だと言うのにスクワットをしている。そして3人目は同い年ぐらいの女性で背が低くかなり可愛らしい。
その女性は優しそうなので話し掛けようと考えたが、思いとどまってただ壁に背を付けて何かが始まるのを待つことにした。
そして次々とカードを手にした者達がこの部屋の中に入って来るが誰も話す事はせずにただ周りの様子を窺っている。
11人目となる見るからに派手な男が中に入って来ると部屋の中が明るくなりその中央に黒いスーツを着て兎の仮面を被った男らしき人物がいきなり現れた。
俺は知っているぞ、俺に手を差し伸べた奴だ。
緊張してきたので生唾を飲み込むとその人物は落ち着いた口調で話し出す。
「私の話を聞き逃さないように近くに寄って下さい」
誰もがゆっくりと動き出したが最後に入って来た男だけは勢いよく走り出し、兎仮面の男をいきなり殴りつけて倒した後で馬乗りになって更に殴りつけようとしている。
止めようかどうしようか躊躇していたが、次に瞬間にその男は宙を浮き始める。
「おいっ、テメェ、何をしやがったんだ、えっちょっと……」
空中でバタついていたが自らの意思ではないかのように身体を伸ばし始めている。
そして俺を含めた周りの者達はこの状況が理解出来ずにただ見る事しか出来ていない。
すると兎仮面の男は飛び跳ねて立ち上がり、スーツの上を脱いで軽く埃を払うと再び袖に手を通しながら何事も無かったかのように話し始める。
「3人の不参加が出たので今回は11人かと思いましたがどうやら今回の参加者は10人になるようですね。まぁ想定通りと言う事でしょうか」
すると浮かんでいる男は怒りをにじませながら怒鳴り始めた。
「テメェいい加減にしろよな、ふざけた事に巻き込みやがって」
「もうあなたは参加する権利は無いのですよ、元の場所に戻してあげますからそれでいいではありませんか」
兎仮面の男は顔の前で指を鳴らすと、浮かんでいる男は目を大きく見開きながら涙を流し始めたそして最後の言葉を残して消えてしまう。
「嘘だろ……こんな……いやだ、止めろ、いや止めて下さい。大人しく参加しますから戻すのだけは……」
えっ消えたの? これはマジックだよな。
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