第3話・美怜の改変力が保健医の女性先生の胸を豊胸させる

 悪の組織と怪獣が現れて美怜に退治された翌日──オレのクラスに男女の転入生が来た。

「悪の組織の男性幹部です、後ろで騒いでいるのはオプションの戦闘員です……気にしないでください」


 顔の上半分を仮面で隠して、西洋貴族のような格好をしてマントをひるがえした、昨日校庭に現れた男性がオレたちに向って頭を下げる。

「今日からこのクラスに転入しました……一緒に学び世界征服をしましょう」


 もう一人の転入生は、ヘソ出しミニスカートの会社事務員のような制服を着た女性だった。

「昨日出現した、怪獣を操っていた宇宙人です……今は人間の姿に化けています、この星を侵略するために来ました」

 人間に化けた宇宙人が指差した窓の外には、空飛ぶ円盤やタコ型の宇宙人たちがフワフワと空中に浮かんでいた。


 教室の誰も、悪の美形幹部と人間に化けた宇宙人の転入生に疑問や、突っ込みも入れずに。

 自分の席の椅子に座っている美怜も、横を向いて、外を飛んでいる空飛ぶ物体を眺めている。

(なんなんだ……この状況は?)

 

  ◆◆◆◆◆◆


 昼食時間──オレは同年齢らしい、悪の幹部と人間の女性に変身した宇宙人から昼食を誘われた。

「君が、螢沢 秋斗くんだね……どうかな、日当たりがいい屋上で、一緒にお昼ご飯を食べるというのは」

「あたし、宇宙的なお弁当作ってきたから……秋斗くんも一緒に食べよう」


 いつの間にか、巨大化した怪人が窓から教室を覗いていて……オレが昼食の誘いを断れないように威圧していた。

 オレはしかたなく、二人の誘いに乗っていつの間にか解錠されていた、屋上で昼メシを食べるコトにした。


 普段は施錠されている屋上には、多くの生徒たちがワイワイと昼メシを楽しんでいた。

(この屋上……生徒同士の淫らな行為が行われているのが問題になって、ずっと立ち入り禁止だったんじゃ?)


 シートが敷かれた上に、重箱に入った豪勢なお弁当が並べられた。

 人間に化けた宇宙人が言った。

「朝早く起きて宇宙船の中で作ってきたの、秋斗くん食べて」

 どう見ても、得体の知れない食材が調理された弁当。


 悪の幹部の方は屋上にガスコンロを持ち込んで、焼肉をはじめていた。

「さあ、焼けたぞ秋斗も食べた食べた……世界征服するには、体力も必要だからな……うん、美味い」

 戦闘員たちには、栄養素入りのカプセルが幹部の手で支給される。

「戦闘員の食事はこれで十分……ところで秋斗、聞きたいコトがあるのだが」


 空を円盤が飛び、周囲にタコ型の宇宙人が浮かび、翼竜みたいな生物が生徒から、お弁当を分け与えられて食べている奇妙な世界。


 悪の幹部と人間に化けた宇宙人の口調と、表情が険しい表情に変わる。

「説明してくれないか……この世界を作った原因は、秋斗か? 我々はどうしてこの世界に存在している?」

「あたしも、気づいたら……この世界で怪獣を操っていた、なんなのあたしたちって?」


 オレが返答に困っていると。

 食事の終わった男子生徒の一人の体が膨れて服が破れて、ゴブリンとかオークのような怪物の姿に変わった。

 緑色の怪物が暴れまわる。

 もう、ワケがわからない。

(なんなんだ、コレは?)

 オレが困惑していると、どこからか歩いてきた美怜が手の平に拳を打ちつけて言った。

「あたしの出番のようね」


 美怜の姿が腰の剣帯にファンタジー世界の剣を下げて、片腕に円形の金属盾を装着した──異世界モノに登場するような、女戦士か女勇者の姿に変わった。

 美怜は、短いスカートの中に手を突っ込むと穿いていた下着を脱いで、生脱ぎしたパンツの匂いをスースーと嗅ぐ。


(なんで、脱いだパンツの匂いを嗅いで……今の美怜ってノーパン? それって意味ある?)

 嗅いだ下着を捨てた異世界美怜は、怪物に変貌した男子生徒に向って腕の重金属の円形盾を投げつける。

 投げられた盾は、怪物に跳ね返されて自動で美怜の腕に戻ってきた。


 叫び声をあげて、怪物に突撃した美怜は、拳の連打を怪物に浴びせる。

「どらららららら! おわったぁぁぁ!」


 美怜の上半身の衣服が千切れ飛んで、ブラジャーが露出すると男子生徒が変身した怪物の体が、内側から膨れて弾けて……光りの粒子になって消滅した。


 どんな原理で、光りになって消滅? 剣を使わずに拳で倒した?

 オレの頭は思考を半分失っていた。

 美怜の姿が制服姿のヤンデレ美少女の姿に戻ると、美怜は脱ぎ捨てたパンツを拾い上げて……オレの方を睨むと。

「フンッ」と鼻を鳴らして屋上から去っていった。


 明らかにこの世界が変貌した原因は自分が、美怜に掛けた催眠だと気づきはじめたオレが、焼きそばパンをかじりながら困惑していると。

 重箱弁当を食べ終わった人間に化けている宇宙人が、両手を合わせてヘソの穴からタコの吸盤きゅうばん触手を出しながら言った。

「ごちそうさま……秋斗くん、悩みや相談事なら保健室の美人先生に相談するのが、お約束のパターンだよ」


  ◆◆◆◆◆◆


 オレは保健室の美人先生『百々目鬼どどめき先生』に、美怜に催眠を掛けて世界がおかしくなってしまったと、話してどうしたらいいのか相談した。


 百々目鬼先生は、オレの話しを黙って最後まで聞いてくれた。

 話しを聞き終わった百々目鬼先生が、コーヒーを飲みながら言った。

「そっか……薄々あたしも、なんか世界が変だなって感じてはいたけれど」

 コーヒーカップを持っている百々目鬼先生の腕に、連なった目が現れる。

 百々目鬼先生本人も、自分の体の変化には気づいていないようだった。


 百々目鬼先生が言った。

「たぶん……秋斗くんの催眠が、逢坂 美怜に影響を与えて〝世界を変革する力〟が生じてしまったんだと思う……このままだと大変なコトになるわよ」

「ど、どんな風に?」


「場合によっては世界の破滅ルートに行くかも知れない……そうなったら、世界は終わり」

「どうすればいいんですか?」

「そうねぇ」


 百々目鬼先生の組んだストッキング足にも、目が連なり現れる……百々目鬼先生は、自分が妖怪化しているコトに気づいていない。

「悪役令嬢&悪役令息が破滅ルート回避するように、螢沢 秋斗と逢坂 美怜が〝恋愛ルート〟へ向かうしか方法が無いんじゃない……催眠キーワードを作ったって言ったわよね、どんなキーワード?」


 オレは恥ずかしさに、小声で百々目鬼先生に耳打ちして伝えた。

 オレのキーワードを聞いた百々目鬼先生が頭を抱える。

「なんで、そんな恥ずかしいキーワードを……あなたは、そんな恥ずかしいキーワードを言えるの?」

「言えません」

「じゃあ、恋愛ルートへは自力で持っていきなさいよ……世界を救う為に、この先どんな具合に、逢坂 美怜が世界改変するかわからないんだから」


 その時──保健室のドアが勢い良く開いて、もの凄い怒りの形相の美怜がオレと百々目鬼先生に向って怒鳴った。

「この、浮気者! そんな巨乳の保健室の先生と二人っきりで何をするつもりよ!」

 美怜の世界改変力の波動が、百々目鬼先生の肉体に及び。

 百々目鬼先生の小さかった胸が、風船のようにプクゥゥと膨らんで豊胸巨乳化して、性格にも色気が加わった。


 艶っぽい目つきに変わった百々目鬼先生が、肢体をくねらせてオレを誘惑する。

「うふふふ……秋斗く~ん、いつでも保健室に相談に来なさい……先生が手取り足取り、相談に乗ってあ・げ・る」


「うわぁぁ、百々目鬼先生しっかりしてください!」

 事態がさらに悪化して、困っているオレを指差して美怜は。

「変態! 変態! 変態!」

 そう連呼して保健室を飛び出していった。


(本当にこの先……どうなるんだ)

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