第17話

ナツちゃんはオーナー夫婦の親戚かなにかなんだろう。

本人に聞いたことはないけれど、特別レッスンに来た時、

オーナーとナツちゃんの話す顔が身内にだけするあの顔になっていた。


営業職になってからそんなことばかり観察する癖が付いて嫌になる。

料理教室くらい、なんでもない僕になりたい。



ハルは「適当に作るごはん」が超絶技巧のレベルで上手だった。

冷蔵庫の中や保存食のラックを2回くらい眺めるだけで、

それはそれは旨い飯が作れる。

あの才能がなんなのかいまだに理解出来ない。

神様がいたら、襟にアイロンをかける才能を、

全部塩加減のセンスに変えてもらう取引をしたのではと思うほど。


僕はそのハルの作るごはんのプレッシャーから

家で作るのが嫌になっていた。

ハルは美味しいと本当は思っていないのではないかと感じるのである。


特に卵料理はずば抜けた上手さで、

ぷるぷるのホテルの朝食みたいな半熟玉子が

どうして家庭用キッチンでできるのか、

キッチンが宇宙に繋がっているのではと疑う事がある。

時空が違うではないか。

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