第4話

気付いたら会社の自席にいた。

移動中、たしかに車窓から

なにか綺麗な風景なんかをみていたハズなのに

何ひとつ覚えていない。


付箋がいくつかモニタに貼ってある。

昨日は終日クライアントの会社にいたので、

この席に座ることがなかった。

誰かからのいくつかのメモに目を通しながら

背広のポケットからスマートフォンを出しデスクに置いた。

画面は黒いまま。


パソコンでたまったメールの処理、

エクセルで見積もり、同僚と昨日のクライアントでの対応報告。

中堅の広告代理店の仕事は忙しい。

広告を作っている時間より、

広告に関わる人間の調整の方が何倍も労力がいる。


人間を調整する仕事。

本当はなんの商品もサービスも宣伝していないことに、

自分が一番気付いていた。

気付いていたけれど、

その疑問を持つ気持ちは去年あたりに置いてきてしまい、

今は立派に会社に馴染もうとする2年目の若手を演じてる。


演じているのかこれが自分なのか、もはやわからない。

分からないくらい考えたくない。


気付けば時計を見ると遅めの午後だった。

今日は天気も良いし、コンビニでパンを買って

公園でぼーっとしたかった。


やっとスマートフォンを確認する気持ちになった。

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