電車と桜あやかし
京極道真
第1話 3月の朝電車
学期末。あと1週間で終わりだ。
4月からは3年かあ。大学受験だ。
長かったような短い高校。あと1年で終わり。
特に変わったこともなく。結局彼氏もできず。
私のJK時代があと1年で終わる。
満員の電車の中、脳内でこんなことを
考えながらため息。「はあー。」
つり革を握った手に力が入る。カバンは軽い。
「ガタン。」
横の人の足を踏んずける。
顔も見ずに「すいません。」
とっさに私の口から言葉が出る。
「大丈夫です。」
「?」聞き覚えのある声だ。
チラリ顔を見る。同じクラスの山田だ。
「なんだ山田か。」私は急にため口になる。
山田とは中学から同じ学校だ。
なんとなく気が合う。イケメンで面白い奴だが、なぜか恋愛対象外の男子だ。
「おい、菜々。なんだ山田はないだろう。
さっきは『すいません。』ってかわいい声出してたくせに。」
「そりゃ、他人には普通に優しいわよ。」
「まあ、いっか。それより菜々、あの2人見てみな。」
「えっ?どこ?」
「電車のドアの左奥。」
「あー、うちの学校の制服。
あっ、あの男子知ってる。私好きなのよね。
イケメンの中のイケメンって感じだよね。
サッカー部の相馬じゃないの?
横は学年1の美少女佐野さん?であの2人がどうしたの?
つきあってるの?相馬くん!
あーあ。でも仕方ないかあー。
イケメンカップルでお似合いよね。」
「そうだな。いい感じのカップルだ。
なあ菜々、今、お前相馬がタイプって言ったよな。」
「そうよ。言ったわよ。それがどうしたの?」
「ガタン。」また大きく電車が揺れる。
「菜々、彼氏ほしいか?」
「はあ?山田が私の彼氏?ありえない。
ムリ。ムリ。ムリ。」
「菜々、お前は昔っからそそっかしいな。
誰が俺って言ったんだ。
相馬がお前の彼氏だったらどうだ?って聞いたんだ。」
「もちろん、ちょー嬉しいに決まってるじゃん。」
「そっか。」
「ガタン。」また大きく電車が揺れる。
「着いたぞ。」
学校の一ツ橋駅に着いた。
「じゃあな。」山田は先に降りて改札に消えた。
駅から学校までは5分とかからない。校門前でミツミたちと会う。
「おっはー。」
「あと一週間で春休み。早く学校終わらないかなあー。」ミツミが軽いカバンを大きく振って見せる。
「だよね。授業もほとんどなし。いっそう休みでいいよね。」
「そうそう。」ケイもあいづち。
そしていつものように下駄箱へ。
「おはよう!菜々。」
「?」さっき電車で一緒だった、サッカー部イケメンの相馬が私を呼ぶ。
「えっ?何?何々?」
ミツミが「何?って菜々。菜々こそ何言ってるの?彼氏がおはようって言ってるじゃん。」
「えっ?相馬が私の彼氏?」
「だよー。うらやましい限り。」ケイも私の背中を押して、じゃあ、教室で。
そういって2人は先に教室へ行った。
相馬は当たり前のように「菜々。カバン持つよ。」
そういって私のカバンを相馬が持って歩き出した。
「?」何かがおかしい。これは冗談?
「ねえ、相馬。これって冗談?」
相馬が顔を近づけてくる。イケメン過ぎて見れない。「相馬、離れて。近い。近い。」
「菜々。どうした?今日は変だぞ。」
「変なのは相馬でしょう。彼女でもない私のカバンなんか持って。彼女の佐野さんが見たらきっと怒るよ。」
「佐野さんって誰?」
「誰って、学年1の美少女の佐野さんよ。」
「菜々。そんな子いないよ。大丈夫か?」
「えっ?」言葉のやり取りに驚きながらも廊下を歩いて教室に向かう。正面に鏡。
「?」顔が。私の顔が佐野さんの顔に?
鏡に山田の姿が映っていた。振り返り「山田。どういうこと?」
山田は私を無視して教室に入っていった。
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