第8話
ほんの数分、並んで歩いただけだった。
映画館の入り口で、頭を下げられた。
「ありがとうございました」
映画館から温かい風が流れてきて、
少しだけそいつの頬に赤みが走った。
「これからどうするんだ?」
もう帰ってしまえばいいのに、
一体何を聞いてるんだろうか。
「券を買ってしまっているので、勿体ないので、見て行きます」
「…そうか」
オレはそのまま踵《きびす》を返せば
「あのっ!!」
そいつに呼び止められた。
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