第2話:報われない努力の先に

時間だけが過ぎていった。


デビューして一年以上が経ったが、美咲の立ち位置は変わらなかった。どれだけ努力しても、スポットライトが当たるのはいつも決まったメンバーだった。


「今日のセンターは〇〇ちゃんね。美咲は後列で。」


それが当たり前だった。


美咲は、必死に努力した。早朝の自主練、深夜まで続くレッスン。家に帰れば鏡の前で何度も振り付けを確認し、動画を見返して表情の作り方まで研究した。それでも、結果は変わらなかった。


SNSを開くのが怖かった。「美咲」という名前が出てこないことに慣れてしまった自分が、何よりも怖かった。


ファンのツイートで同期のメンバーの話題が盛り上がっている。「〇〇ちゃん、やっぱり可愛い!」「この前のパフォーマンス最高だった!」


スクロールしても、どこにも自分の名前はなかった。


それでも、美咲は足を止めなかった。


「いつか絶対に——。」


そんな時、全国大会の大舞台への出場が決まる。美咲は「これがチャンスだ」と思い、さらに努力を重ねた。今度こそ、結果を出す。今度こそ、自分の存在を証明する。そんな思いで、体が悲鳴を上げるまで練習した。


しかし、リハーサル中にアクシデントが起こる。


足が、変な角度で曲がった。


「——あれ?」


次の瞬間、鋭い痛みが脳を突き抜けた。床が歪んで見えた。必死に立とうとするが、足が動かない。


「大丈夫?」


スタッフの声が遠く聞こえた。いや、大丈夫じゃない。でも、ここで崩れるわけにはいかない。


「……大丈夫です。」


痛みをこらえ、笑顔を作った。


本番当日。


舞台袖で深呼吸をする。痛み止めを飲んだとはいえ、足の感覚は鈍い。踊れるのか——。


「大丈夫、私はできる。」


そう自分に言い聞かせ、スポットライトの下に立った。


イントロが流れる。曲に合わせて動き出す。


だが、違和感はすぐに襲ってきた。


思い通りに足が動かない。バランスを崩す。何とか耐えようとするが、ミスは隠せなかった。


観客の視線が冷たい。


曲が終わった瞬間、静寂が降りた。


終演後、スマホの電源を入れる。


「下手すぎる」「全国大会に出るレベルじゃない」「引退した方がいい」


目の前の文字がにじんだ。指が震えた。


「私、もうダメなんだ……。」


何のために努力してきたのか。


どれだけ頑張っても、ファンの心を掴めなければ、存在しないのと同じ。


楽屋の扉を閉めた瞬間、美咲は崩れるように座り込んだ。


足の痛みよりも、胸の奥がずっと苦しかった。


涙が流れる音すら、静かだった。


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