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第20話

「葵、愛してる!」


バイオロイドの手を握るなり、楓は叫んだ。


「葵、好きよ。私、あなたがいなかったら生きていけない!」


瞳を潤ませ、熱弁すること、かれこれ数十分。

黙って拝聴していた割烹着姿の小野寺だが、とうとう耐えきれなくなった。


「博士……頭、どーにかなっちゃったんですか?」


声をかけるなり、楓はもの凄い形相で振り返った。


「なんてこと言うの! 名誉毀損で訴えるわよ!」


「いやいや……」


突飛なことを口にするのはいつものことだが、今は輪をかけておかしかった。

葵をベッドに寝かせ、熱烈告白を繰り返しているのだから。


「じゃー、説明してくださいよ。俺、さっぱりワケがわかんねッス」


「葵は、植物であり、人間でもあるってことよ」


「は?」


「考えてもみなさい。人間は食物を摂取することで、その代謝エネルギーを補充してるのよ。でも、葵は元を正せば植物だから、この身体を維持することは難しいはず。水と光合成だけじゃ、絶対に足らないわ」


しおれていく葵を見て、楓は即座に水を持ってこいと要求した。

小野寺がタオルを水に浸し、絞らずにバイオロイドの腕に当てると、枯れ枝のようだった肌が潤いを取り戻していく。


なるほど、と納得する。

植物人間だからこその難儀な体質によるものだったのか。


楓と小野寺の懸命な介抱のおかげか、葵は普段より青白い顔で眠っているものの、肌の張りや艶、髪の毛の色なども元に戻っている。


だが、結局、問題は最初に戻った。


「それで、どーして博士のトンチンカンなセリフ連発に繋がるんですか?」


「バカねぇ。心理学の実験にもあるでしょう? 生後間もなく母親と引き離された小ザルは、母乳を与えられても、温もりを与えても満足な発達はできなかったと言うわ。つまり、子育てにはスキンシップと愛情が必要なのよ!」


「はぁ……」


わかるようで、わからないような。

楓の論理に、ある可能性が頭をよぎったからだ。


(恋人っていうより、母親っぽい)


とは思ったが、確証はないので小野寺は黙っておくことにした。

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