ー3

第3話

無機質な音が鳴り響く。


ゆっくりと音の正体を探し当て、ぼやけた画面は勝手に覚えた動きで音を消していく。

ウトウトとまた気持ち良い眠りにつこうとした瞬間、またもや無機質な音が鳴り響いた。

仕方なく、何度も鳴る携帯を手に取り設定を開けてやっとの思いで消すのに成功した。


「…ぃた」


動かした頭に鈍い痛みが重みとなりのしかかってきた。

もそもそとベッドから這い出し、テーブルに置かれた紙をじっと見つめた。


【博士。 おはようございます。

今日は早朝会議が入っております。

博士は遅刻なさらないとは思いますが、念の為アラームをセットさせて頂きました。

それでは、後程。 小野寺】


「毎回やってくれるわねぇ。ややこしいスヌーズ機能をつけたのはやっぱり小野寺ね!!」


達筆なメモを読みながら、何も考えずにお盆にかかったラップを剥がして、中のおにぎりに噛り付く。

バリバリバリバリ。

ズズッ。

キュウリの浅漬けや程良い温度のシジミの味噌汁にも手を出して言った。


「…ん、薬?」


お盆の上には小さな錠剤が1錠置いてあったのだ。


「あんな呑み方をしていれば、二日酔いにもなりますよ」


小野寺の声が聞こえた気がした。


「うっさいわね!?」


楓は一言文句を言って、コップに水をくむと鎮痛剤を口に入れた。

水が張って有る桶に、コップや皿やお椀を投げ入れた。

一ヶ月振りに物の無いシンクを見つめ、暫し考えた。


「…カイワレ1本位落としておけば、まだ可愛気もあるものの…カイワレだって友達よ友達!!…トモダチ…」


小野寺が、汚れた器を洗い片付け、楓が起きるのをみこした上で味噌汁を注ぎ、ゴミを持って出て行ったのは毎度の事なので楓は何も考えない事にしている。

小野寺はスペアキーをも渡している程に、信頼している部下であると楓は思っている。

中身完璧満載の助手に、言い掛かり上等の悪口を吐き捨てた。


その時、彼女の中で、何かが弾けた。


「…そうなのよねぇ…カイワレ…というか…生物以外だって友達よねぇ…」


ブツブツ口遊み、楓の頭の中では物凄い早さで考えが回っていた。


それは、振られたいつもの朝ではなかったのだ。

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