第23話

それは流石に相手に失礼だろ、と言われ、それもそうだな、と思った。


それに直人はそんなことができるほど、器用でもなければ自分本意な性格でもない。





「付き合えば、好きになれるかなって」


「でも結局 真央じゃなきゃダメなんだ! てなったってこと?」





だって1カ月も続かなかったんだよね?と首を傾げた私に、お前さあ、と呆れた声を上げる。





「まあ、、そういうことだけど」


「ふうん、そっか」





そんなに愛されてたのか、私。


それなのに彼氏欲しいとか、イケメンから逆チョコもらいたいだとか、色々言って悪かったな。



照れを隠すように唇を噛む直人に、胸が ぎゅ、と温かくなる。


だけどやっぱり、気になるものは気になるんだから仕方ない。





「いつから私のこと好きだったの?」





さっきからずっと疑問だったことを口にすれば、直人の顔がみるみる引きつっていった。



わあ、そんなに嫌なの?


思わずそう洩らしてしまうくらいには、言いたくない、と全身で物語っていた。





「…教えない」


「なんでよ、私だって言ったじゃん」


「絶対言わねえ!もう帰る!」





一筋縄じゃいかないだろうとは思ってたけど、逃げ出すほど?



本当に帰ろうと立ち上がった直人の腕をガシッと掴む。


そこまで嫌がられると逆にもっと知りたくなるってことを、直人は分かってない。





「じゃあせめて初恋が誰かだけ!」


「うるせえなもう!ちょっと黙れ!」


「それが好きな子にする態度!?」


「あー、もう!」





あっち向け、と言われ、その勢いに乗せられ反射的に反対を向く。


あれ、まさか私を置いて逃げたりしないよね?



不安になって掴んだままの腕に きゅ、と力を込めれば、頭上で小さく溜め息を吐く音が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る