第20話

拍子抜けしたような顔をして、ぽかんと薄く開いた口に唇を重ねると。


一瞬驚いて固まったくせに、すぐに舌を捻じ込まれて、さっきよりもしつこく追い回された。







「ね、続きも教えてよ」


「…続き?」



呼吸を整えてから強請ねだってみれば、悠聖はいぶかしげに眉を顰める。


もう、察しが悪いなあ。




「キスだけでこんなに気持ちいいなら、それ以上したらどうなっちゃうのかなって思ったんだけど」


「なっ…!お前、自分が何言ってるか分かってんの?」


「分かってるよ」


「…ほんとに、それでいいわけ」


「うん。ここまできたら、全部知りたい」




私の返事に顔を引き攣らせた悠聖は、嘘だろ、と小さく洩らして、頭を抱えて。


けれど顔を上げた時には、瞳の奥をギラリと光らせて、雄の顔をしていた。




「後悔しても知らないから」




直後、覆いかぶさって来た悠聖にかぷりと耳を噛まれて、呆気なく形勢は逆転した。



あっという間に身ぐるみを全部剥がれて、恥ずかしくて死にそうなのに、素肌が触れ合う気持ち良さを初めて知った。


ぐずぐずに溶けるまで甘やかされるということを、初めて経験した。


思考が快楽に支配されるという意味を、生まれて初めて理解した。





















「どう?想像通りだった?」


「ううん、それ以上だった」


「それは良かった」


「ねえ、明日も明後日も、うちで宿題やろっか」




切れ長の目が一瞬丸く見開かれたあと、三日月のように垂れ下がる。


挑発するように唇を重ねれてみれば、仕返しだと言わんばかりに、死ぬほど優しく意地悪された。

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