ONE
第1話
「元気にしてっかな、聡太と真紀は」
俺は高校2年の夏、祖父母の家に居たが二人が老衰で亡くなったことにより実家のあるこの街に帰ってきた。
何故、祖父母の家に居たかというと親父達がもう年齢的に一緒に住みたいと言ったが爺ちゃんと婆ちゃんは住んでる家を離れたくないと言い、仕方ない俺が行ってこい。と、親父に命令された訳だ。
あの時はこのクソ親父何言ってんだ?と思いもしたが、別に爺ちゃんと婆ちゃんは嫌いじゃないから別に良い。
だが、今考えてもあれはおかしいと思うがな!仕方ないって何だよ。
小学生のガキに何言ってんだよ。おまけに頭カチ割る発言からの拳骨。DVで訴えるぞ!
久しぶりの我が家を目の前に何とも腹立たしい思い出を振り返る。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
葬式の時に家族全員会ったのでそこまで久しぶり感はない。
「もう荷物届いたか?」
「ええ、あんたの部屋にダンボールのまま置いてるわよ」
お袋はそういうと、やけにニコニコしていた。
俺が訝しげにしているのに気づいたのかお袋は笑った。
「あんたがこの家に居るのはかなり久しぶりでしょう?向こうに行ってから1度も帰ってこないんだもの」
久しぶりに家族全員揃うのね。と嬉しそうにお袋は笑った。
お昼に帰ってきた俺は、二階の俺の部屋にある荷物の整理を終わらせ下に行くと夕飯の準備をしていたお袋が隣に挨拶をしてこいと言う。
「真紀ちゃん可愛くなってるわよ」
「へぇ、取り敢えず挨拶しに行ってくる」
真紀かぁ。泣いてる記憶しかないな。俺の一つ下の弟、聡太も今じゃ考えられないくらい泣き虫だったが。
隣に行くと、真紀の母ちゃんが出た。
「あら、どちら様?」
「お久しぶりです。聡太の兄の昴です。こちらに戻ってきたので、挨拶をしにきました」
「まぁ!カッコ良くなっちゃって。大きくなったわねぇ、昔はこんなちっちゃかったのに」
挨拶をそこそこに終わらせ、家に帰るとなんと親父が帰ってきていた。
「お前がこの家にいるとはなんともいえんな」
「お帰りの前にその発言とは、流石クソ親父だ」
ゴッ
「イッテェ!」
「誰がクソだ。お前は成長せん奴だな」
ここを出た時とまるで同じだ。とクソ親父が言う。
そう、この男。俺がこの家を出る前の俺に対してこの拳骨をかましたのだ。
それも小学生の頭にだ。なんと恐ろしい男だろうか。
「もう、二人は相変わらずね。」
「これは笑い事じゃないぞ。こんな暴力男、早めに離婚した方がいい」
俺はまた降ってきた拳骨に頭を抱えていると、親父は風呂に行ったようだ。
「ふふっ、昴が帰ってきて嬉しいのよあの人も。愛情表現ね」
「なんて過激な愛情表現だ」
親父のツンデレは需要なんてないぞ。
「あの人がお風呂から上がったらご飯にしましょう」
「聡太は?」
「あの子いつも帰りが遅いのよ。ご飯は遅くに食べてるみたい」
「まぁ、あいつも高校生だしな。そんなもんなだろうよ」
俺はその夜疲れてた事もあり早く寝た。
新しい学校に、治安の悪いこの街。
どうなることやら。
俺は窓から見える夜空に心が躍った。
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