万能薬の龍の血は富、名声、力をくれるが危険が危ない

@baibaisan

第1話 西の村へ

「ふー」

息を整える。

何度も見てきた扉だが実際にここに入るのは初めてだった。

本当にこの選択は正しかったのだろうか。

扉に手をかける前に自身に問いかける。

リユメス王国の中でも宗教色が強く、国内で唯一教団が統治する都市

に生まれた。

世界を旅する冒険者に憧れる子供もいたのだろうがこの街では

聖騎士が憧れの的だった。

他の子供と同じように聖騎士に憧れ、修行とは呼べるものではないが

少しずつ鍛錬をしてきた。

15歳で成人の儀の際、洗礼を受け晴れて聖騎士見習いとなった。

思い描いていたカッコよく凛々しい聖騎士とはかけ離れ地味な仕事や雑用ばかりだったが誰かの役に立てていること影で人々の生活を支えているという充実感が不満をなくしていた。

一年たち見習いとしてある程度仕事をこなせるようになってきた頃

訓練の一環として都市西部にある村への行軍が決まった。

話では税の徴収に反対した村人が武器を手に取り徴税人を殺害したそうだ。

言うなれば小規模な反乱でありこれを鎮圧するというのが今回の仕事であり

聖騎士の補佐を見習いとして行う。

その時はひどい人間もいるんだなと思った。

確かに税収は苦しいと聞いているし大変なんだろうと思うが

それにしても殺すのはやりすぎた。

徴税人も村人を苦しめたくて税金を集めているわけではない。

仕事でやっているのだ。

それに税金によって街の舗装や村への聖騎士によってモンスターや盗賊の脅威から人々を守ることができるのだ。

村へと向かう隊長を含めた聖騎士四人と見習い五人が選ばれた。

今回はあくまで徴税人殺害首謀者の捕縛と追加徴税だ。

聖騎士は司教を守るという仕事が主だがモンスター退治や野党退治を行うこともある。野党退治は悪人ではあるが相手は人間。人を守護するという志の高いものが多いので初めて人と戦闘になった際罪悪感によってうまく行動できなくなることが多いそうだ。実際に仕事をするのは聖騎士とはいえ仕事の流れを見て学ぶことで見習いに人との戦いの練習とする。訓練としても比較的楽だと隊長は話していた。

街を出て目的の村へと向かう。

初めて街を出たので興奮して周りの見習いたちと一緒に話していたが、

照りつける太陽や長距離移動の疲労から1日目をすぎたあたりから

皆喋らなくなった。

4日目なかなか治る気配を見せない筋肉痛を抱えた足と底が見え軽くなってきた水筒を引きずりながら前を進む聖騎士たちになんとかついていった。

荒れている。

西の方面はかなり暑いと聞いていたが想像以上だった。

進めば進むほど気温が上がっていっているように感じる。

背の高い植物はなく水気はない。モンスターが身を隠せる場所は

なさそうなので勝手に安心して進んでいたがここら辺のモンスターは穴を掘って地面の下に隠れて移動するものや岩の影に隠れているものがいるらしい。

冒険者ほどではないにしろある程度知見を持っている聖騎士たちは

隙なく周囲を見渡しいつでも戦えるように備えていた。

しかし強靭な肉体を持つモンスターたちですら照りつける太陽から逃げるように生活しているのに人間が生きていくのは無理なのではないか。

本当にこの先に村があるのだろうか。

そう思いながら進むこと7日目。

目的の村が見えてきた。


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