第5話…… 《闇を焼く者──三合会〈李振峰〉一派との開戦》
前書き
1935年3月7日、ブエノス・アイレス——
街の空気が湿った夜の帳に包まれる頃、ルドラ・バッシャールはエル・バホの裏通りを静かに歩いていた。三合会「
本文
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登場人物(1935年1月1日時点)
ルドラ・バッシャール24歳。企業からの収益金3,500万米ドル。3,840米ドルの普通預金(アドリアナと交換したもの)。金塊127トン(運用利息月利3,810万米ドル、日歩127万米ドル)。純度99.9%の粉末コカイン6トン。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー(資本金6千万アルゼンチン・ペソ)。ルドラ金融㈱会長兼CEO
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カルメン・バッシャール36歳。ルドラの妻。エミリオ・ロドリゲス(死亡)の元妻。
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https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622173391039290
筆者がpythonで作成したSVG画像をスクショしたものです。今回も主要登場人物に絞り、関係を整理しました。
https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622170468425439
南アメリカ
帝国書院「地歴高等地図」P75,76
https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622170605847554
アンデス越え
帝国書院「新詳高等地図」P82
https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622171763522997
中米及び西インド諸島
筑摩書房(大航海時代)ボイス・ペンローズ著。荒尾克己訳。巻末地図。
https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622171763616309
南米
筑摩書房(大航海時代)ボイス・ペンローズ著・荒尾克己訳、巻末の図。
https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/16818622171763700991
アメリカ三大文明
中公新書(古代アステカ王国)増田義郎著。P2。
☆
☆三合会:
★1935年3月7日 午前6時
朝霧がほんのりと漂う四合院の中庭。湿った空気の中に、香ばしい醤油の香りと甘酸っぱい酢の匂いが混じり合い、柔らかな湯気と共に朝の静けさを破る。石畳の上を軽やかに歩く
料理を丁寧に皿に盛りつけながら、まだ微かに火照った肌を指先で撫でる。昨夜、20年ぶりに味わった若い男の情熱。肌を這う手の感触、体を包み込む温もり——それらが未だに鮮明に残っていた。全身を貫くような快楽の余韻に、思わず頬が熱くなる。
しかし、そんな幸せな気分とは裏腹に、心の奥では不安がくすぶっていた。
「……
その話を聞いたときの不安が、また蘇ってくる。彼らはこれまで、エル・バホの裏通りを縄張りにしていたはずだった。だが最近、彼らは表通りにまで足を踏み入れてきている。一昨日には、「オリエンタル・ディバイン」にちんぴらが押しかけ、若い女の子に本番を強要したと聞いた。
幸いなことに、その日は普段は店に顔を出さない
彼女はすぐに「オリエンタル・ディバイン」の雇われ経営者である
このことは、ぜひルドラに相談しておかなければならない。
——「ルドラさんなら、きっと何か策を講じてくれる」
料理の準備が整うと、
今朝の食卓では、昨夜の甘い余韻とともに、これからの動きを話し合わなければならない——。
★ルドラと
ルドラ:
ルドラは、昨日の女性「ルシア」が
ルドラ:そうだな。エロティックマッサージ店とかストリップクラブとか風俗店が彼らの狙い目だろう。警察に負い目があるから、通報されにくいと思ったんだろう。良し。俺が今日から見張ってやろう。
ルドラ:
ルドラ:そう言うお店ならまだ大丈夫だと思うよ。
★エロティックマッサージ店「オリエンタル・ディバイン」 内部—— ルシアの証言
1935年3月7日 午前9時
朝の陽がエル・バホの街を静かに照らし始めた頃、ルドラは「オリエンタル・ディバイン」の扉を押し開けた。店内にはまだ客の姿はなく、昨夜の名残のようにほのかに香る香水とオイルの匂いが漂っている。
「……あら、昨夜の良い男じゃない!」
店の奥から現れたのは、昨晩ルドラの相手をした「ルシア」こと
「早速、私を口説きに来たの?」
彼女は冗談めかして言ったが、ルドラは微笑みながら、直球で切り出した。
「昨夜は気持ちよくしてくれてありがとう。ルシア——いや、
「やっぱり分かっていたのね。……中華料理店で会っていましたよね、ルドラ検事」
「そうだよ。だが、今回は違う話だ。……
★ルシア(
「……あれは、一昨日の夜のことよ。店はちょうど暇になりかけていて、女の子たちも裏で休憩していた。そこに……あいつらが入ってきたのよ」
ルシアは苦々しい表情を浮かべた。
「
「どんな連中だった?」
ルドラが尋ねると、ルシアは淡々と語り続けた。
「奴らは三人組だったわ。
「やつらは、酒に酔ったふりをして入ってきて、最初は普通の客みたいに振る舞ってたの。でも、いざマッサージが始まったら急に態度を変えて、『本番をやらせろ』って女の子に強要したのよ」
ルシアの目が険しくなった。
「女の子はもちろん拒否したわ。うちはエロティックマッサージ店だけど、本番行為は絶対にさせないって決まっているのよ。でも、奴らは無理やりやろうとした。
「それで、お前が警察を呼んだのか?」
ルドラの問いに、ルシアは冷ややかな笑みを浮かべた。
「ええ。でも、普通なら警察を呼んだりしないわよ。あいつらもそれを知ってるから、エロティックマッサージ店とか風俗店を狙うの。警察に負い目がある店は、通報しにくいと思ってるのよ。でも、私は違う。たまたま店にいたから、即座に警察を呼んだの」
「なるほどな」
「奴らは警察が来る前に逃げたけど……きっと、また来るわ」
ルシアは腕を組み、ルドラをまっすぐ見つめた。
「正直、私はもうこの店のことなんかどうでもいいの。でも、このままにしておいたら、エル・バホの風俗店は全部、あいつらの支配下に置かれるわ。それはまずいんじゃない?」
ルドラは頷いた。
「確かにな……。奴らの拠点は?」
ルシアは、鋭い目でルドラを見つめると、静かに言った。
「
「エル・バホの裏通りの奥にある中国茶館——でも、それは表の顔。裏では、賭博場、薬の取引、売春宿をやってる。地下に隠し部屋があって、そこが覚醒剤の精製所になってるって話よ」
「なるほど、確かにそこを抑えれば、奴らを壊滅させることができそうだな」
ルシアは静かに微笑んだ。
「あなたなら、どうするの?」
ルドラは少し考えた後、にやりと笑った。
「簡単な話さ。まずは奴らの違法行為の証拠を掴む。そして、警察に通報させてやる。その後……俺の部下が「
「ふふ……あなた、容赦ないのね」
ルシアはクスリと笑い、椅子の背もたれに身を預けた。
「でも、私はそういう男、嫌いじゃないわ」
ルドラは立ち上がり、コートの襟を正した。
「これ以上、奴らが好き勝手できる状況を放ってはおけない。エル・バホの秩序は、俺が守る」
「……そうね、じゃあ、私もできる限り協力するわ」
ルシアは立ち上がり、ルドラに近づくと、小さな声で囁いた。
「気をつけてね、良い男」
ルドラは微笑みながら、店を後にした。「
★
1935年3月7日 午後8時——エル・バホ地区
ブエノス・アイレスの夜の帳が降りる頃、ルドラの部下たちは静かに「
★ 潜入調査:
午後8時30分
潜入を命じられたのは、ルドラの側近の一人であるタリオと、司法府検察官のルシエンヌだ。
タリオは粗野な港湾労働者を装い、ルシエンヌは富裕層の娼婦を抱えた仲介人になりすまして「
店内は一見すると普通の中国茶館だったが、店の奥に進むと様相が一変した。
隠し扉の奥には、地下へと続く階段があり、その先では違法賭博や薬物取引が行われていた。
- 地階の状況
- 賭場には大小さまざまなテーブルが並び、賭博師たちが麻雀やカードゲームに興じていた。
- 一角には覚醒剤(メタンフェタミン)の取引が行われており、タリオは密かに写真を撮影した。
- さらに、奥の部屋には数名の女性が閉じ込められ、借金のカタに売春を強要されていた。
ルシエンヌは巧みに話を引き出し、
★ 摘発作戦:
午後10時30分
タリオとルシエンヌからの報告を受けたルドラは、すぐさま「
彼の部下たち、そして買収済みの警察官たちが一斉に動き出す。
「突入だ! 奴らを逃がすな!」
掛け声と共に、銃を構えた部隊が「
内部では客や関係者が混乱し、叫び声が飛び交う。賭博場のテーブルが倒され、チップが散乱する中、逃げようとする者を次々と取り押さえていった。
しかし、肝心の三合会幹部たちは、事前に察知していたのか、既に姿を消していた。
「……やられたな」
ルドラは悔しそうに唇を噛むが、すぐに次の行動を指示する。
★ 家宅捜索で得た証拠
「
1. 覚醒剤(メタンフェタミン)の大量の小袋(売買用とみられる)
2. 取引記録帳簿(三合会と麻薬ルートの関係を示す証拠)
3. 借金の担保として監禁されていた女性たちの名簿
4. 賭博の収益記録(違法賭博の証拠)
「これだけの証拠があれば、やつらを追い詰めるのは時間の問題だな」
ルドラは満足げに書類をめくる。
★ 逃げた三合会幹部を追う
「
しかし、ルドラはすぐに彼らの行き先を推測する。
「奴らはきっと、自分たちの資金源が潰されたことに焦っている。次に狙うのは……」
彼の頭の中には、すでに次の手が浮かび上がっていた。
エル・バホの裏社会における最後の決戦が、刻一刻と迫っていた。
今回は此処までにいたしましょう。次回をお楽しみに。
後書き
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