[完結]裏切りの学園 〜親友・恋人・教師に葬られた学園マドンナの復讐
青空一夏
第1話 復讐の幕開け
聖桜学園での高校時代、
学業では常にトップの成績を維持し、運動面ではバスケットボール部のエースとして活躍。俊敏な動きと的確な判断力で試合を支配し、チームを全国大会へ導いた実績を持つ。また、陸上競技では短距離走の選手として県大会で優勝し、その実力を広く知られていた。彼女は単なる優等生ではなく、学園内で誰もが憧れる存在だった。
整った顔立ちに加え、長身でスタイルも良く、気品ある佇まいが彼女の自信を象徴していた。凛は副生徒会長でもあり、生徒会長の
この二人は学内でも理想のカップルとして知られ、互いの家を行き来するほど親密な関係だった。まるで将来を約束されたような仲だと噂されていた。
だが、その理想的な人生は、ある日を境に崩れ去る。
親友、
一方、七瀬凛は違った。彼女は男女問わず尊敬され、後輩からは憧れの的だった。特に女子生徒たちは彼女に強い憧れを抱き、「こんな風になりたい」と口にする者も多かった。
その現実が、美優には耐えがたかった。凛は美貌だけでなく知性と品格を兼ね備え、誰からも尊敬されている。教師や生徒からの信頼も厚く、彼女がいる場所には自然と人が集まり、和やかな空気が広がる。美優はそんな凛の輝きを間近で見続けるうちに、次第にその羨望が嫉妬へと変わり、やがて抑えきれない憎悪へと形を変えていった。
ーーなんで凛ばっかり褒められるのよ! 私だって、そこまで優秀じゃないけど、成績も運動も人並み以上にはできるし、見た目だって結構可愛いのに!
翔に近づいたのも、凛に勝ちたいという競争心と、見栄えのよい翔を恋人にすれば自慢できるという軽い気持ちからだった。
美優は生徒会の会計を務めており、翔と接点を持ちやすかった。
彼女は巧妙に翔のプライドを刺激しながら、少しずつ距離を縮めていく。例えば、何気ない会話の中で、大げさなほどの賞賛を浴びせた。
「やっぱり翔くんって頼りになるね」
「こんなことまでできるなんて、すごいよ」
翔の家系は代々医師を輩出する名門で、幼い頃からできて当然と言われ続けてきた。翔の父は医療法人『藤堂総合医療センター』の理事長であり、藤堂一族には優秀な人間しかいない。
そのため、努力や成果を真正面から褒められることはほとんどなかった。
そんな彼にとって、美優の言葉は新鮮で心地よかった。
次第に彼女の言葉を求め、いつしか美優を優先するようになっていく。
藤堂翔——端正な顔立ちに、長身で引き締まった体つき。冷静沈着な雰囲気を纏い、知的で洗練された印象を与える。しかし、彼は美優の甘い誘惑に負け、次第に凛に冷たく接するようになった。
「俺たち、少し距離を置かないか? 勉強も忙しいしさ」
放課後、校舎の屋上に呼び出された凛は、翔の口から放たれた言葉に、息をのんだ。
美優と付き合いたいがための方便なのだと、凛にはわかっていた。けれど、一度好きになったら簡単には諦められない。
「カケちゃん……私の何がいけなかったの? 悪いところがあるなら直すから、ちゃんと言ってよ。カケちゃんの望む女性になれるように頑張るから。医学部を目指したのも、ずっと一緒にいたいからなのよ」
翔はうんざりしたように息を吐く。
「やめてくれよ、凛はもともと法律が学びたいと言っていたじゃないか。俺のために進路を変えるなんて、重すぎるんだよ。正直、迷惑なんだ」
「そんな……」
凛の声は、夕暮れの風にかき消される。
ーー私の何がいけなかったの? 翔に釣り合うように、お洒落も勉強も頑張ってきた。こんなにも想っているのに、それでも足りなかったの?
凛は翔に急接近した美優がそれほど悪いとは思っていない。親友の優美を恨むよりも、あっさりと優美になびいた翔の凛への愛の薄さに、ただただ悲しさがこみ上げる。
ーー私は翔をこれほど想っていたのに、翔にとっての私は、それほどの存在ではなかったのね……2年半も付き合ってきたのに……
翔は美優と登下校を共にするようになり、学園内では美優が凛から翔を奪ったという噂が広がった。
生徒たちの間では美優に対する批判的な声が目立ち、特に女生徒たちの間では親友の恋人を奪う性悪な女だと陰口を叩かれることもあった。
それも、凛の方が女生徒たちから支持されていたからこそだった。
そんな噂が広まる中、生徒会室で突如騒ぎが起こった。生徒会の金庫が荒らされ、中の金がすべて消えていたのだ。それは文化祭運営の資金だった。生徒会長の藤堂翔はもちろん、副会長の凛や他の生徒会員たちも、事態を確認しようと慌てて集まる。
「誰かが金庫を開けた形跡がある……鍵を管理しているのは限られた人間のはずなのに……」
騒然とする生徒会室。やがて、凛たちの担任であり学年主任でもある早瀬が、厳しい表情で言い放った。
「ここにいる全員、持ち物検査を行う」
早瀬隆一は進路指導主任も兼任し、校長からの信頼も厚い教師だった。学園内では、次期教頭の最有力候補と噂されている。そんな彼の指示に、生徒たちは逆らえなかった。
そして――その早瀬の手が、凛の鞄の中から信じがたいものを取り出した。
文化祭運営の金、これから行われる期末試験の数学の出題問題と模範解答、さらには美優の財布。
「七瀬君……これはどういうことだ?」
早瀬の声が大きく生徒会室に響く。凛は真っ青になり、力なく首を振った。だが、周囲の視線はすでに冷ややかで、多くの生徒達が集まりだしていた。
「違います……私はこんなこと、していません!」
必死に否定する凛を、誰も擁護しようとはしなかった。
「凛、ひどいわ……親友だと思ってたのに……。お金に困っていたなら、言ってくれれば助けてあげたのに。……もしかして、私が翔くんを取ったから? それで、こんな嫌がらせを……?」
美優は唇を震わせ、悲しげに目を伏せた。
そして、静まり返る生徒会室で、わざとらしく肩を震わせながらすすり泣く。
涙を手の甲でぬぐい、痛ましげに凛を見上げるその仕草は、まるで悲劇のヒロインそのものだった。
ーーなぜ、美優は私が盗ったと決めつけるの? そんなことするはずがないじゃない?
「なんでこんなことをしたんだ? 七瀬の家は裕福なはずだろう? そうか、勉強のストレスからだな? 数学の成績も前回下がっていたしな。……俺の引き出しから盗んだのか?」
早瀬が溜息混じりに言う。呆れたような声音に、凛の身体が震えた。
「まさか、それを持ち出すとはなぁ」
早瀬は完全に凛を疑っていた。教師として、長年指導してきたはずの生徒を――。
ーー早瀬先生、私がそんなことをするはずがないと、どうして言ってくれないのですか?
視界が滲む。頭が真っ白になった。そのとき、さらに冷たく突き放すような声が響いた。
「俺への恨みで美優の財布を盗るとか……凛、お前終わってるな。あ、文化祭の運営費用を盗んだのも俺と美優を困らせるためか? 金庫の金がなくなれば、生徒会長の俺と会計の美優が疑われる。鍵を管理しているのは、俺たちだからな」
翔だった。その目にあったのは、侮蔑と軽蔑。あんなにも大切に想っていた人が、迷いもなく自分を疑っている。その場の空気は完全に凛を犯罪者扱いしていた。
「校長先生にも報告するぞ。これは重大な犯罪だから、警察にも連絡を……」
早瀬がそう言った瞬間、ざわめきが広がる。
警察――?
誰かがクスクスと笑う声が聞こえた。
「優等生の化けの皮が剥がれたねぇ。ほんとはやばい奴だったんだ」
「名門校の生徒会副会長が窃盗犯とか、笑えない?」
「しかも嫉妬に狂っての犯行なんて。ださっ」
「せっかく憧れてたのに、裏切られた気分だぜ」
それからすぐに、校長と教頭が生徒会室に現れ、早瀬を交えて事態の確認を進めた。
「早瀬先生、状況を説明してください」
「生徒会の金庫が荒らされ、中身が盗まれました。そして、七瀬凛さんの鞄の中から、文化祭運営費用と期末試験の数学の問題用紙、佐伯美優さんの財布が発見されています」
早瀬の冷静な声が、生徒会室内の重苦しい空気をさらに沈ませた。凛は何度も否定の言葉を口にしたが、誰も彼女の言葉に耳を傾けようとはしなかった。
そんな中、廊下から硬い靴音が近づいてくる。
「警察の方が到着されました」
教務員の声が響いた次の瞬間、生徒会室の扉が開く。制服姿の警察官が姿を現し、厳しい表情で言った。
「七瀬凛さん、事情を伺いたいので警察署までご同行願えますか?」
凛の肩に手がかかる。まるで、すでに罪を犯したと決めつけられているかのようだった。
「待ってください! 何かの間違いです! 私は……!」
しかし、その訴えが誰かの心に届くことはなかった。
その後の取り調べで、彼女はなぜか少年院送りとなった。通常なら保護観察あたりが妥当なはずなのに、メディアが一斉に報じたことで事態は一気にエスカレートした。
名門・聖桜学園で起きたスキャンダル。都内有数の進学校であり、生徒たちは品行方正と評判だった。だが、その中でも生徒会副会長を務める優等生が、学校の金庫から金を盗み、さらには期末試験の問題まで持ち出していたという衝撃的な事件。
「エリート学園の優等生の闇」
「天使の仮面を被った悪魔」
「名門校を揺るがした不祥事」
週刊誌はこぞって刺激的な見出しを掲げ、大々的に報道を展開。ニュース番組でもワイドショーでも連日この話題が取り上げられた。SNSでは即座に拡散され、#七瀬凛 #聖桜学園スキャンダル などのタグがトレンド入り。動画投稿サイトでは、「生徒会副会長、美少女の裏の顔」や「聖桜学園マドンナの深い闇」などと題した憶測まみれの動画が溢れかえった。
「彼女はずっと完璧すぎたから、裏では何かやってると思ったんだよね」
「試験問題まで盗むとか、もう終わってるでしょ」
「実はもっと色々やってたんじゃない?」
根拠のない噂が次々と拡散され、誰もがまるで真実であるかのように語り始めた。
こうなってしまえば、もはや彼女が何を言おうと無駄だった。世間の目は、すでに彼女を「名門校の面汚し」「学園の恥」として決めつけていたのだから。
学校側も、「これ以上のイメージダウンは避けたい」と、凛を見捨てる形でより重い罰を要求。結果、凛は少年院送りとなった。聖桜学園3年の秋、文化祭の少し前のことだった。
こうして、凛の人生は一変した——。
少年院に送られた当初は何もかも信じられず、無気力に日々を過ごしていた。無実を訴えても誰も聞く耳を持たず、同世代の受刑者たちには『お嬢様崩れ』と揶揄され、理不尽な扱いを受けた。
次第に彼女は荒れ始め、言い争いや小競り合いに巻き込まれることが増えていった。規律違反を繰り返した結果、処遇が厳格化され、成人刑務所への移送が決定する。
移送の日が近づくにつれ、凛の心にはある疑問が浮かび続けていた。
――両親は、今どうしているのだろう?
最初の頃は面会に来てくれていたが、いつしかぱったりと来なくなった。連絡手段のない状況では、それが何を意味するのか確かめることもできない。ただの忙しさからなのか、それとも……。
そして、移送の日が訪れた。看守に連れられて歩く間も、凛の頭の中は両親のことばかりだった。とうとう耐えきれず、彼女は看守に尋ねた。
「私の両親には、私が成人刑務所に移ることを知らせたんですか?」
看守はちらりと彼女を見たが、答えは返ってこない。代わりに、冷たく突き放すような言葉が響いた。
「お前の両親、亡くなったそうだぞ」
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